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 けれどその彼も三年前に死んだ。彼の仲間の軍人が二人に知らせに来たのだ。その彼も、よく二人の面倒を見てくれていた。部屋まで知らせに来てくれたが、とても辛そうに言い出しずらそうに、少しの間躊躇っていた。


 レイラの良心と同じ死因だった。この世界ではもう逃れられない不治の病。


 龍鱗皮化症りゅうりんひかしょう


 手帳には都市伝説のように書かれていたが、実際に存在し、更には世界の死因の半数以上が、龍鱗皮化症りゅうりんひかしょうによるものになるまでに、そう時間はかからなかった。


 手帳に書いてあったように、全身がうろこに包まれて退化する。ただ赤ん坊になるまで生きてる人は居ないだろう。殆どがその途中、初期から中期の症状で死亡する。


 龍鱗皮化症りゅうりんひかしょうが噂じゃなくなった頃、天災のように元凶の生き物はやっと全容を現した。龍と呼ばれる伝説上の生き物だ。なぜ龍鱗皮化症りゅうりんひかしょうになるのか解明はされてはいないが、龍の鱗に触れたら龍鱗皮化症りゅうりんひかしょうになると噂されている。天災、人災、そして龍災りゅうさいが文明崩壊に繋がった。


 龍は複数体いるのか、殺せるのか、何も解明はされていない。ただ、近づけさせない事や、一時的に追い払う事はできる為、自衛の為にと軍でも使われているこのシアグルガンを二人に与えたのだ。


 二人を育ててくれた彼の仲間の軍人は彼が亡くなったのを知らせると、自分達軍隊もこの街から撤退するから、キャンプ地にある保存食や物資を好きに使ってくれと、全ては持って移動できないからと言い残して去っていった。


「どうしたんだ? 難しい顔して」


 絢翔あやとの手がふわりとレイラの頬を包んだ。部屋へ戻ってきてから、再び父の手帳を開いてはいたが、内容は入ってこず上の空だった。


「リアムの事を思い出してたんだ。 彼は厳しい時もあったけれどぼくたちの良い養父ちちおやだった」


 レイラの目頭は熱くなり、涙が溢れそうになる。壁にはリア厶がくれたポラロイドカメラで撮った、三人の写真もある。そこには長めの赤毛に無精髭、擦り切れて破れた迷彩の、戦闘服に笑顔が良く似合う、二人の師であり養父ちちおやが写っている。

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