5
階段を登りきり、ハッチを押し開けると、目の前に大きな出入口がある。シャッターがいつも通り三十センチ程を残して閉まっているが、開いている隙間からは、微かな光が入り込んでいた。
二人は出入口と反対にある長い螺旋階段を登り、地下室の上に建てられている家屋の屋上に辿り着いた。
高台に建てられているお陰で、三百六十度を一望出来る。見渡すといつもの荒廃した世界に、淀みきった空気。粉塵に遮られながらも、日光が少し届いていた。
「やっぱり、今日は視界がかなり悪いな」
手を強く握ったまま、
「居た。 だいぶ遠くなったな。 もうこっちまでは来ないだろうから部屋に戻ろう」
レイラも一通り見渡してみたが、見つけられない。
「どこ?」
「あっちの方にいるだろ。 わかるか?」
たまに吹き荒れる風が、運良く塵を散らしてくれると視界は多少ましにはなるのだが。根気強く覗いていると、双眼鏡を通した視界の隅に、小指先程度の大きさで、それは見えた。双眼鏡がないと本当に小さくしか見えないけれど、
「早く戻ろう。 視界が悪すぎて、長時間外にいるのは危険だ」
十八歳の二人の肩にかけられた、とても重たい対物ライフルのような銃。正式名称シアグルガン。この武器を二人に与えてくれた人は、破壊力は抜群だと、安心させるように言っていた。
十二年前にレイラの両親が死んで、
二人と同じ歳の頃の子供が居るらしく。故郷に置いてきたと、詳しくは話さずにいたが、たまに少年たちの名前を間違える時があった。多分、我が子の名前なのだろうと、二人は思っていた。すごく良くしてもらい、二人は実の父のように慕っていた。
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