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「どうしたんだ?」


 絢翔あやとの言葉を遮るように、突如、唸り声のような地鳴りと共に部屋が大きく揺れ、レイラは恐怖で体は硬直した。


「来たか、こっちに来い。 とりあえず深呼吸して呼吸を整えろ」


 絢翔あやとの大きな声にレイラはびくりとして我に返った。呼吸は乱れて冷や汗が吹き出している。


 絢翔あやとに引っ張られてベッドに倒れ込み、引きよせられた胸の鼓動に合わせて、ゆっくりと呼吸を整える。


「それじゃあ、ちょっと行ってくるから。 ゆっくりしとけよ」


「ま、待って。 置いていかないでよ!」


「無理しなくていい。 様子を見てくるだけだから」


 絢翔あやとは子供を宥めるように言うと、おでこに口付けて、レイラから離れた。ベッドの下から大きく頑丈そうな、長方形のケースを取り出した。レイラも慌ててケースを取り出し、まだ血の巡り切らない震えた手で開けた。


「待って絢翔あやと、ぼくも行くから」


「見てくるだけだ。 心配しなくてもすぐ戻ってくる」


 絢翔あやとは慣れた手つきでケースから部品を取り出し組み立てる。大きく重量のあるライフルのような銃。組みあがったライフルのような銃を持って、一人で部屋から出ようとした絢翔あやとをレイラは引き止め、まだ震える手で同じ銃を組み、絢翔あやとに駆け寄った。


 耳障りな不快音を立てて、鉄の錆び付いた扉が開いた。部屋から出ると、目の前には四メートル四方ほどの空間があり、その先にコンクリートの階段がある。階段の上のハッチは少し歪んでいて外の明かりが入り込んでいる。


 地鳴りはまだ響いていて、時々建物かなにかが倒壊している音がする。二ヶ月に一度あるかないか程度の事だが、二人とも恐怖と緊張で手が汗ばんでいる。


「ゴーグルとマスクつけて」


 絢翔あやとが的確に、指示を出す。


 二人とも首から下げていたゴーグルと防塵マスクを装着した。

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