幸運集めのフォークローバー 20
「ああ。たぶん、その和歌子のことだと思う。で、肝心の噂の内容なんだけどさ」
「うん」
「よく分かんないんだよ」
「え?」
「だから、分かんないんだ。うちは旧制中学だった時から数えて、創立百年以上。そんな歌高に代々伝わってる話のはずなんだけど、色んな人に聞いてもあやふや」
「……噂の内容にまとまりが無いってこと?」
「その通りだ。ただ、共通点もあってな」
孝慈は人差し指を立てて説明する。
「それは、一人の先輩から、歌高を受験する一人の中学生、つまり次の年の新入生に伝えられること」
「つまり、代々歌高生に伝わってくわけか」
「そう。で、他の共通点は、条件を満たせば願いが叶うっていう、典型的なおまじないだということ。それから、伝えられた先輩以外の誰かに話したら、願い事の効力は失われるっていう縛り」
孝慈は最後にため息をつく。
「そして、何かしらの条件を満たせば、旧校舎に住む座敷わらしが願いを叶えてくれる。……これって、どう考えても和歌子のことだよな」
「……だね」
「でも、肝心の内容がバラバラでさ。小学生向け雑誌に載ってそうな恋のおまじないモドキを教えられた人もいるし、どこかで聞いたようなつまらない怪談話をされた人もいる」
「それって絶対、話が伝わる途中で、面白がった誰かが後付けで足してるよね」
僕はため息をついた。孝慈も肩をすくめて続ける。
「何をすればおまじないが成就するとか、全然分かってない。伝えた先輩本人も知らないみたいなんだ。本当のやり方を知ってる卒業生は既に一人もいないって話もある」
そんな話をしていると、
「ただいま戻りました」
ちょうど和歌子が帰ってきた。彼女は首を横に振る。
「先生の反応を追いかけてみたんですが、ダメでした。稲田先生、市外に住んでらっしゃるようで。わたしの行動範囲の限界です」
「そっか。じゃあ先生が立ち寄った場所はある? 何かわかるかも」
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