第二章 幸運集めのフォークローバー 2

 稲田先生にたしなめられ、孝慈が三列目の窓際の、松野の席に行く。

 孝慈は僕たちに向かって言った。

「じゃ、さっさと決めちゃいますか」

 松野は、「どうしよう?」とでも言いたげに僕に目配せした。

 僕たち三人の組み合わせが意外だったのか、痛いほどの視線を他のクラスメイトからちらほらと感じた。僕は席を移動しながら答える。

「そうは言ったけど、僕も和歌子ちゃんに協力することにしたから、このグループに異論はないよ。松野は?」

 松野に訊ねると、座ったままコクリと頷いた。

「よしっ、じゃあ決まりだな」

 孝慈は納得したような面持ちで言うと、稲田先生の方を向いて手を上げた。

「すんませーん、無事決まりました」

「ふむ、他の班と違って三人だけど、構わないな?」

 稲田先生は確認して黒板に僕たちの名前を記した。それから、クラス全員に言う。

「そうそう、各班にはグループ名を決めてもらうんだ。メンバーが決まったらそれもよろしく」

 稲田先生は黒板に『・班の名前』と書き足した。

「グループ名? どうしよう?」

 僕が黒板から孝慈に視線を移すと、孝慈は肩をすくめて弱々しく言った。

「お、俺、そういうネーミングはちょっと自信ないや……加澤は何か良い名前ある?」

「ない」

「ううむ……松野は何かある? 班の名前」

 孝慈に訊かれて、松野はポツリと答える。

「うん……いま思いついたのは、幸運集めの――あっ」

「ほう、幸運集めの……なんだって?」

 さらに訊かれ、松野は口ごもったあと、なぜか仕方ないか、といったふうに再び答えた。

「……班の名前は、その、『幸運集めのフォークローバー』なんていうのはどうかな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る