第一章 座敷わらし 17(和歌子)


 後ろについていた和歌子はぎょっとする。

 まさか、ばれました? 今は見えないはずなんだけど――。

 結人はそのまま二秒ほど和歌子がいるほうを見つめた。

 視線は――外れている。

 結人が見ているのはレジのようだった。

 和歌子は視線につられて振り向く。

 レジでは、つややかな黒髪をしたショートヘアーの女の子が本を袋に詰めていた。

 あれは、同じ高校の女の子?

 もしかしてあの方が、松野さん?

 一瞬顔をあげた松野と思わしき女子生徒。彼女の視線は結人を向いているように見えた。

 思い出した。彼女の下の名前は、瑞夏だった。

 彼らの目が合ったその時、結人から発せられる幸運のチカラの密度が急激に高まった。

 目が合ったことに気づいた女子生徒は、奥から出てきた男の人とレジを交代すると、結人のほうに歩いてきた。

 結人を見ると、予想外の行動だったのかかなり驚いている。

 松野はそのまま立ち止まり、モジモジと何か言おうとする。何やら大事な話があるようだ。

――お、これはもしや!?

 和歌子は今までに放課後の校舎で何度も、飽きるほど見てきたシーンを思い出して二人の前に身を乗り出した。

 愛の告白というやつですか!?

 現場に居合わせること自体は珍しいわけじゃないけど、学校以外で見るのは初めてです!

 ひとり盛り上がる和歌子を置いて、結人のチカラは見る見る間に高まっていく。

 和歌子にだけ見えるまぶしい光が結人の全身を包んだ。

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