第一章 座敷わらし 10

「その光は――?」

 どこかから現れたオレンジ色の光が、夕陽のようにおぼろげな丸を形づくった。

 鈴のような音が一瞬鳴ったかと思えば、オレンジ色の光は和歌子の髪の上に集まってゆく。

 光が吸収されていくのは、幸運のクローバーのデザインをした、髪飾りの金具だ。

 オレンジ色の光が晴れると、和歌子の髪飾りには薄緑色の葉っぱが一枚ついていた。今までは無かったものだ。

 僕の視線に気づいたのか、和歌子は頭に軽く手をやって答える。

「この葉っぱを四枚集めることが、わたしの目的です」

 和歌子はそのままこちらに背を向けると、近くの喫茶店を指差した。

「詳しい話はそこでしましょう。このままだと日も暮れちゃいますし」

 そう言って和歌子は歩き出した。

 僕は松野と顔を見合わせる。

 先刻まで眠たげにしていた松野の表情は、今見た光景が信じられないというふうにはっきり見開かれていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る