校外研修編2

校外研修編二

 熊田先生に呼ばれ昴は校長室にやって来た。

「なんでお前らまで!」

 熊田先生は後から追いかけて来たあかりと恵美香を見る。


「被害者ですから」「目撃者ですから」

 あかりと恵美香は自分達も聞く権利があると答える。


「ぷっ」

 昴は思わず吹き出す。


「あー、まー座りなさい」

 校長は諦めて二人にも座るように話す。


「はーい」

 あかりと恵美香は昴が座って居るソファーの左右に座る。


「……」

 あかりは何が言いた気に恵美香を見つめる。


「オホン。まず初めに今回このような事になりすまなかった。これが新しい教科書だ」

 校長が改めて謝罪し新たに教科書を渡してくれた。


「ありがとうございます」

 昴は教科書を受け取り少し教科書を撫でる。


「…新しいね」

 あかりは重し気に呟く。昴は一年先の勉強をしていて一年の教科書は皆よりボロかった。

「あの、二年次も貰っていいですか?」

 昴は二年の教科書も欲しいと話す。


「あー、それはこっちだ」

 熊田先生が二年次の教科書を渡してくれる。

「履歴に残っていたから手続きが楽だった」

 購入履歴があって直ぐに渡せて良かったと話す。


「こっちはあまり変わりませんね!」

 昴は二年次の教科書は今年入って買ったからまだ新しいと答える。


「ふふふ。変わらないって一月でしょ買ったの!」

 あかりが笑いのツボに入る。


「え?」

 恵美香は何のことか分からず首を傾げるのだった。


「次に燃えてしまった保証についてだ」

 熊田先生が申請書類を机に出してくれる。

 服類三万、制服一式、教科書一式、文房具等五千……

 ズラズラと支払い限度額が書かれていた。


「服三万って!」

 あかりが少な過ぎると立ち上がる。


「美濃が言いたいのは分かるが、これが限界だ」

 熊田先生はもっと掛かるのは知ってるが消耗品は低く見積もられると話す。


「……分かりました。親に渡してください」

 昴は校長に書類を返す。


「分かった。それと…竹中先生達はダブルクラスで住むと申請があった」

 校長は高等部の教師をしている昴の両親は、火災で空きのファミリークラスに一度引っ越したら、直ぐにダブルクラスに引っ越すと話していると話す。


「知っています。朝連絡がありました」

 昴は頷く。


「……そうか」

 校長は頭を抱える。


「くれぐれも頼むよ」

 熊田先生は昴とあかりの肩を叩く。

 双方の親が承認している為学園の管轄ではないが、熊田先生は念を押した。


「うん?うん?」

 恵美香が昴、あかり、熊田先生を見て首を傾げるのだった。


 昴、あかり、恵美香は教科書を持って退室した。

「……一旦これどうしようか?」

 昴は教科書をどうしようと二人に聞く。流石に二年分の教科書を教室に、ましては帰りに持ち帰りたくないと思う。


「寮に行く?」

 あかりはこのまま寮に持って行く?と聞いてきた。学園から徒歩で五分のところに寮がある。昼休みはまだ充分残っていて問題は無い。


「いいの?」

 昴はあかりに恵美香に話す気と聞く。


「行くわよ」

 あかりは寮に戻るわよと肯定する。


 学園と寮の行き来は休み時間中は自由であった。

「ここ?」

 恵美香は昴の一室の前に着いた。


「うん」「ピッ」

 昴が頷き、あかりがカードで鍵を開ける。


「えっ!」

 恵美香はあかりが鍵を開けたのに驚く。


「ガヂャ」「適当に置いて大丈夫だから!」

 昴は玄関に教科書をドスっと置き二人に言う。


「うん」「う、うん」

 あかりと恵美香も教科書を置く。

 玄関には男物の靴と女物の靴と色違いのスリッパが置いてあった。


「…………」

 教科書を置いた恵美香は靴を見て固まった。


「ちゃんと説明するから上がって!」

 あかりは恵美香の手を引きリビングに入って行った。

 昴も無言で追いかけた。


「……」「……」「ガヂャ」「トクトクトク」

 あかりと恵美香はリビングの机に向かい合って座った。

 昴はキッチンの冷蔵庫を開け、お茶をコップに注ぎ、あかり達に持って行く。


「…ありがとう」

 昴が恵美香の前にコップを置き、恵美香が小声でお礼を言う。

 昴はあかりにもコップを渡し、少し離れたソファーの方に座った。


「恵美香ちゃん……私と昴はね……えーっと、…付き合う事になったの……それでね、…一緒に住むことになったの!」

 あかりは隠さずに話す。


「……」

 恵美香は少し離れた昴を見る。

 昴は恵美香の視線に気づき頷く。


「そう……いつから?」

 恵美香は小さく聞く。昴には聞こえなかった。


「住むのは昨日から!それと火事の時に一日だけ…」

 あかりは昴と一緒の空間で寝た事も話す。


「……そう。おめでとう」

 恵美香は小さな声で言う。顔は全然祝っていなかった。


「私は負けないからいつでもかかってきて!」

 あかりは昴に聞こえない声で恵美香に宣誓布告する。


「えっ!いいの?」

 恵美香はキョトンと驚く。


「いいも何も直ぐ諦めれるの?」

 あかりは苦々しく言う。


「ふふ、経験談?」

 恵美香はあかりに呟くのだった。


 あかりと恵美香が和んだ雰囲気を見て昴は、

「学校行こっか?」

 と声をかけた。


「誰のせいよ!」「そうだよ」

 あかりと恵美香はにこやかに答え学園に向かった。


「やっと帰ってきた!」

 あきらが昴、あかり、恵美香が教室に帰って来て喜ぶ。


「なんかあった?」

 昴は首を傾げる。


「無かったと思うんかよ!」

 あの状況で俺だけ残されたら色々聞かれるの分かるだろ!とあきらが訴える。


「あーごめん」「ごめんね」「そうだよね」

 昴、あかり、恵美香が察してあきらに謝るのだった。

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