トラブル編3

 あかりと智樹は屋上に居た。

「ここならいいかな?」

 あかりが足を止め後ろを振り返る。


「……返事を聞かして!」

 智樹が口を開く。


「……」

 あかりはなぜこのタイミングかを考える。


「俺が五位以内に入ったら考えてくれるって言ったよね!美濃さんは今回も一位取れなかったよね?もう竹中には勝てないよ!だってどうせズルしてるんだから!!」

 智樹がさらに話す。


「智樹君、可児さんの真剣さはわかったわ。でも私は、五位以内に入るくらい真剣なの?と聞いただけで、考えるとは言っていないわよ!」

 あかりは智樹から告白されて、真剣なのかと聞いただけと話す。智樹の好感度も下げる。


「クッ、じゃー今考えて!」

 智樹が、ならと言う。


「そのために呼んだの?そしてお兄さんを使って昴を呼び出したの?!」

 あかりは確信を持ったかのように問いただす。


「な、お兄は関係ない!」

 智樹は一歩後ろに下がり関係ないと言う。

 側から見ても図星と分かるほどに動揺していた。


「……わかったわ。考えてあげる。でも、私は昴が好きだよ、これは変わらない!あと、昴はズルなんかしていない!昴の何も知らないくせに…」

 あかりは可児さんの頑張りも考えて、男子に初めて昴が好きだと言う。しかし先程の言動で怒りが込み上げてくる。

 告白の時、確かに断った。でも引き下がらなかった智樹に対し、学年で五位以内に入るくらい真剣なの?と言い、一位を目指しているからと理由は隠して説明した。

 

「え、一位取る為じゃなく……」

 智樹が固まる。


「そうよ!可児さんも目標を持っていたから!わかるわよね?どんな気持ちなのか、わからないとは言わせないわよ!」

 あかりは昴と成績が並んだら告白すると、頑張って学力を上げているんだから、分かるよねと聞く。あかりなりにも智樹の真剣度は理解していた。だから本心で話した。でも譲れないこともあった。


「…………可児さん」

 智樹はよくやく、あかりが智樹君から可児さんに降格しているのに気づき、小さくつぶやく。


「当たり前でしょ!好きな人を馬鹿にされたから!」

 あかりは聞き漏らさず、ギロっと睨む。


「…………」

 智樹は何も言えなかった。


「ガタン」「う、うわーん」

 智樹が膝から崩れ落ちて泣き出した。


「もういいかしら?」

 あかりは可児から扉に視線を向ける。


「えっ!なっ!えっ、いつから!」

 そこにはあきらが居て驚きたじろう。


「あ、うん、ごめん。昴見失って教室戻ってきたら、あかりちゃんと智樹が出てくところが見えて、大丈夫かな?と思って、」

 あきらが場が悪そうに言う。


「ヒッ!」

 あかりが全部聞かれたー!と怒りより恥ずかしさが込み上げてくる。


「俺から言わせてもらうと、もう少し気を使ってもらえると、男としては智樹に同情する。傷口をさらに抉られた感じだろ?」

 あきらは智樹を見つめる。


「キッ、きゃーー!」

 とうとうあかりの限界を超えて、顔を真っ赤にして悲鳴する。

 あきらの横を通り過ぎ階段に駆け込む。


「あ、あきら君、この事は内緒よ!もし言いふらしたら、恵美香ちゃん好きな事言うから、あとタダじゃおかないから!」「バン」

 あかりは階段降りる前に一度止まり、振り返り、あきらに脅しをかけ、扉を閉める。


「エッ!」

 あきらは驚き呆然する。な、なぜバレたと懇願する。


「あー、智樹、あかりちゃんは諦めた方がいいぞ!俺が思うに両想いだと思うしな!」

 あきらは智樹に言い、あきらも屋上から降りて行った。


「う、」

 智樹はしばらく座り込んでいるのだった。

 

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