トラブル編2

 テスト返却され昼休みになっていた。

「失礼する!」

 一組のクラスに入ってきたのは三年主席の可児先輩だった。


「可児先輩?」

 アキラが首を傾げると、スタスタと歩き寄ってきた。


「竹中!ちょっとツラかせ!」

 可児先輩が怖い顔で竹中を呼び出した。


「……いいですよ?」

 昴は可児先輩をジッと見て席を立つ。


「えっ、おい!」「ちょっと!」「……」

 あきら、あかりが止めに入ろうとする。

 恵美香ともう一人、可児智樹が無言で見つめていた。


 昴と可児先輩が教室から出て行った。

「え、え、えーっと!とりあえず、熊先生に、!」

 あかりがオロオロと周りをキョロキョロする。

 あかりはへこんでいたがそれどころではなくなっていた。


「俺は追いかけるから、あかりちゃんと恵美香ちゃんは熊先生に伝えてきて!」

 二人に伝え、あきらは昴を追いかけて行った。


「あ、あの、美濃さん」

 声をかけてきたのは可児智樹だった。


「あかりちゃん!とにかく急ごう!」

 恵美香があかりの手を引き教室を出ようとする。


「まって!話が!」

 智樹はあかりの手を捕まえる。


「智樹君何!」

 恵美香が智樹を睨む。


「俺は美濃さんに用があるんだ!」

 智樹は恵美香には用がないと吐き捨てる。


「今の見てたよね?!」

 恵美香は今の状況知ってるよね?と強く言う。

「あなたのお兄さんが昴君を呼び出したの分かるよね?」

 恵美香はさらに続け邪魔しないでと圧をかける。


「……恵美香ちゃん先に行って!」

 あかりは恵美香に先に熊先生に伝えてと言う。


「えっ!」「パン」

恵美香が驚き手を離すと、あかりが離れた手で自身の頬を叩いた。


「ちょ!」「大丈夫だから!」

 恵美香がさらに驚くとあかりが笑い、へこんでいられないし、あのことは諦めていないから、と含み大丈夫だからと言う。


「わかった!」

 恵美香は理解して教室を飛び出した。

 他のクラスメイトはあかりと智樹に注目する。


「場所変えましょ」

 あかりは真剣な顔になり智樹に言う。

「……」

 智樹も頷く。

 あかりと智樹が教室から出て行く。


 昴と可児先輩は、中庭に居た。

「どういうズルをした!」

 可児先輩が昴に唐突に言う。


「ズル?」

 昴は首を傾げる。


「とぼけるな!」

 可児先輩が怒鳴る。


「とぼけるもなにも?」

 昴は首を傾げる。


「き、貴様ー!」

 可児先輩がさらに激昂する。


「ね、あれやばくない?」「先生呼ぶ?」

 中庭はあまり生徒は居なかったが、流石に激昂が聞こえ中庭に居た生徒が気づく。


「測ったな!」

 可児先輩が周りの反応を見て昴に怒鳴る。


「なんのことですか?」

 昴は首を振る。


「クッ!」

 可児先輩が昴との距離を取る。


「先輩、いいんですか?」

 可児先輩が戦闘態勢に入ったのを感じ、昴が聞く。

「今なら口論ですみますよ!」

 昴はこれ以上の事があるとタダでは済まないと警告する。


「そう言うところが気に食わないんだよ!」

 可児先輩がさらに怒鳴る。


「弟さん悲しみますよ!?」

 昴は智樹が悲しむと声をかける。


「クッ!お、お前さえ居なければ!」

 可児先輩は涙を流しながら睨んでくる。


「お、お前達!何をしている!!」

 男性の先生が走ってこっちにやって来る。


「チッ!もう来たか!」

 可児先輩は舌打ちし先生の方に振り向く。

 

「お前達可児に竹中だな!」「池田先生、何か用ですか?」

 池田先生が昴と可児先輩に言い、可児先輩が何事も無かったかの用に話す。


「何かだと!お前達が言い合っていると聞いたぞ!?」

 池田先生がギロっとし言う。


「いえ、竹中君の成績が凄いので、何かしていないかと聞いただけですよ!」

 可児先輩が弁明する。


「そうなのか?」

 池田先生が昴に聞く。


「あー、うん」

 昴は顎に手を置き考える。


「やっと見つけた!」「居た!ハーハー」

 熊田先生と恵美香がやってきた。

「熊田先生!実は……」

 池田先生が説明する。


「あれ?あきら君は?」

 熊田先生と池田先生が話していると、恵美香があきらは?と聞いてきた。


「あきら?来てないけど?」

 昴が首を傾げる。


「可児君は職員室に着いてきなさい!説明してあげるから!竹中君いいわね?」

 熊田先生が可児先輩からの疑いを晴らす為、隠している事伝えていいかと聞いてくる。


「……わかりました。あまり口外しないようにお願いします」

 昴は了承する。熊田先生から今の実力を口外すると、各国から狙われると聞き、口外しない事に話し合っていたが、今回は仕方ないと判断した。


「い、いえ私は、」

 可児先輩はたじろぐ。


「なに?竹中君が不正したと思っているんでしょ?説明するって言ってるんだけど?!」

 熊田先生は可児先輩を凝視する。


「可児君、何か問題があるのかね?!」

 池田先生はギロっと可児先輩を見つめる。


「……い、いえ、お願いします」

 可児先輩は二人の先生から見つめられて首を振りついて行くと言う。


「竹中君と美濃さんは教室に戻っていなさい!」

 熊田先生が二人に伝え歩いて行く。可児先輩と池田先生も着いて行った。


「……僕は良かったんかな?」

 昴が首を傾げる。


「熊先生と走っている時に軽く話したから!」

 恵美香が前もって呼び出された事などを説明していたと話す。


「だから息切らしていたんだね!」

 昴はそういえば来た時息切らしていたなと思うのだった。

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