第36話 行ってみたい場所

『いらっしゃい…………ませ〜!』


お店に入った瞬間猫耳カチューシャをつけた店員さんが椎名を見て一瞬固まってしまったが、そんなことはなかったと言わんばかりにすぐに再起動し始めた。まぁ、椎奈を見て驚くのはわかるが結構間が長かったな


『かか、可愛いです♡』


今俺たちがきているのは椎奈の希望通り猫カフェにやってきていた、ここにくる前からずっとソワソワしていて店に入った時から奥にいる猫たちにメロメロだった


『では、ごゆっくりしてください!』


『〜〜〜〜〜!!』


店員に案内され奥に行くといろいろな猫たちが出迎えてくれた、椎奈は声にならないような声をあげて興奮している


『そんなに猫が好きなのか?』


『はい!!とっても可愛くて大好きなんです!本当に可愛い子達ばっかりです♪』


『そんなに好きなら家で飼わないのか?あの広さなら余裕だろ』


『……私の家では猫を飼うというのは禁句なんです』


『……なんでだ?』


飼えないというならわかるが禁句ってどういうことなんだろうか、如月家では猫の話題を出すのも良くないのだろうか?


『私の家では二つの派閥に分かれてるんです。犬か猫かで』


…………全然軽い話だった


『私と葉月さんが猫派でお父さんとお母さんが犬派なんです。それでどちらお飼うかとしばらくの間論争があったほどなんです。そのことがあってから何かを買うという話は禁句になったんです。喧嘩になるからって』


『両方飼えばいいんじゃないのか?』


椎奈の家なら広いし庭もあるから両方飼うとしても全然余裕だし、そこまでこまりもしなさそうなんだがとも思ったのだが首を振っている


『どっちを飼うにしてもお世話はもちろん私たちでしますが、それでもお手伝いの葉月さんに負担がかかってしまいますから飼うならどっちかという結論になっていたんですよ』


『それで決着がつかずに流れたって感じか』


『はい、そうなんですよ……でも、こうやって猫カフェに来れるのですからいいのです!ほらおいでおいで〜』


少しばかし悲しそうな顔になったがすぐに猫たちを呼んでいる……ところで、なんでこんなに猫たちが俺の方に寄ってくるんだろうか?

さっきから椎奈と話をしている時から店のほとんどの猫たちが俺のところに寄ってくる


『椎奈……助けてくれ』


『ずるいです……仁くんまたたびか何か体につけてます?』


『そんなわけないだろ、でも不思議だな』


『何がです?』


俺に猫たちが群がっているのが羨ましいのかどこか拗ねたように言ってくる


『いやな?こんなにいるのに膝の上に乗ってくるのがこの黒猫だけなんだよ』


俺が胡座をかいて座った瞬間からその隙間を寝床に一匹の黒猫がやってきて寝始めてしまったのだ、そして他の猫たちは俺の周りにいたり背中をよじ登ろうとしたりしている……服が心配だからなるべくやめて欲しいんだが


(あれ?この猫……)


『もしかしたらこの黒猫ちゃんがここの親分さんなのかもしれませんね?撫でてもいいでしょうか?』


『……いいか?』


『なぁ〜う』


片目を少しだけ開けて椎奈の方を見て、勝手にしろと言っているようにまた眠りにつき始めた


『いいってさ』


『…では!』


なでなでなでなで


『はあぁぁ、癒されます〜』


頭を撫でたり背中を撫でたり顎の下をこしょこしょしたり忙しそうだ、そんな幸せな時間を過ごしているうちに店員がやってきた


『はーいごはんさタイムでーす!ぜひあげてみてくださーい』


他のお客に猫用の餌を配り最後に俺たちの方を見て何故か驚愕したような感になる


『驚きました、ノックスが人に懐くなんて……びっくりです』


『この子ノックスって言うんですか?』


『ええ、ラテン語でよるっていう意味なんです』


確かにこの綺麗で深い黒は夜と言ってしっくりくる


『そんなにこの子人に懐かないのですか?とてもそうとは思えないんですが』


『いえいえ、全然なつきませんよ?ご飯の時でも人が近くにいるだけで全く食べませんし、私たち従業員にも全くと言っていいほど近づけさせないんですよ近づいてきても自分でできないことがあった時くらいですから。それに他の猫たちともあまり交流しませんし』


『そうですか……』


(なんだが、俺に似てる)


積極的に他のものとは関わらず必要なこと以外では話しかけすらしない


『それにしてもお兄さん!ノックス以外に猫にモテモテですね!ここまでモテてる人は珍しいです。何かつけてます?』


『いえ?これと言って特には……ところで、このノックスってここから脱走したことあります?』


『え、ええ、よく分かりましたね?この間いつのまにかいなくなっていて全員で大捜索していたんですよ。でも、店に戻ったらいつもの寝床で寝ていてびっくりしたもんです』


『……やっぱり』


『まぁ、それっきりですが、さっ!猫たちにご飯をお願いしますね〜』


そう言って俺と椎奈にご飯が手渡され、椎奈がご飯を持った瞬間数匹の猫が椎奈の方へと言ってしまった


『わわわ、待ってください今あげますから』


急に猫たちからご飯をねだられ困惑して取られないように必死になりながらも一生懸命に猫たちにご飯をあげている


『なぁ〜』


椎奈の可愛い姿を眺めていたらいつのまにか起きていたノックスにぽんぽんと叩かれた


『ああ、すまん……ほらお食べ』


カリカリカリ


『可愛いな……おまえ』


『みゃあ〜〜』


🔸

『はぁぁ、可愛かったです!』


ご飯タイムを終えしばらくしたのちに時間が来てしまい猫たちとバイバイすることになった、あのノックスは最後まで俺から離れようとせずベッタリだった。結局何故あそこまで懐いていたのかは分からずじまいだった


『仁くん、何故ノックスちゃんが脱走したのがわかったのですか?』


『この間浅羽さんのところに行ったろ?その時に窓際にいたんだよノックスとそっくりの猫が、あの綺麗な真っ黒な毛並みと青い瞳は印象深かったからな』


『そうなのですか』


『……さて、次はどこに行きたいんだ?』


『えっと次は』

 

じゃら!!じゃら!!じゃら!!じゃら!!


俺たちがやってきたのはゲームセンターだった、かなり意外だった。


『ふぁー、おっきい音です』


『意外だな?椎奈がこんなとこ来たがるなんて』


『今まで来たことがなかったので一度来てみたかったんですよ』


やはりというべきか一回も来たことがなかったらしく珍しいのかいろいろなとこれを見渡してソワソワしている


『仁くん!何からやればいいんでしょうか?』


『うーん、俺もたまにしか来ないからなー。とりあえずみて回ろうか、気になったのがあったらやってみよう。やり方は教えるから』


『はい!じゃああれからやってみたいです!欲しいです。』


そう言って指差した先にはさっきのノックスそっくりのでっかいぬいぐるみのUFOキャッチャーがあったが……初心者にあれは難しいんじゃないか?まぁ、最悪……


『じゃあやってみようか』


チャリン!


今回のUFOキャッチャーは矢印の方向に向かう型ではなくスティック型の自由に動かせるタイプの機種だ


『まずはこれを動かして掴むんだが‥大丈夫か?』


『は、はい!やってみます。』


少しだけ動かしそして椎奈と交代する。緊張した趣で少しずつ微調整を済ませて動かなくなってしまった


『椎奈?』


『……仁くん、どうすればこのアーム、降りてくるのですか?』


『……このボタンを押せばいいんだ』


カチ


『………取れませんでした』


『どんまい』


『もう一回です!!』


やけになったのか意気揚々とお金を入れてやっていた


🔸

『取れません……』


四回ほどやったが取れる様子がなくちょっと泣きそうになりながら猫のぬいぐるりを見つめている


『変わろうか?』


『‥…お願いします』


ぽろ


椎奈が少しとりやすい格好にしてくれていたおかげで結構簡単に取れた、俺はこういうクレーンゲームだったりのゲームは親父に仕込まれていて得意な分野だったりする。


『ほい、ゲット』


『すごいです。どうやったのですか?!私にも取り方を教えて欲しいです!』


『いいよ、ほら椎奈』


とりあえず今取れたぬいぐるみを椎奈に渡す、俺が持っていても意味がないし男の一人部屋に可愛らしいぬいぐるみがあっても……


『え?いいのですか?これは仁くんが取った…』


『構わないさ、俺は椎奈が持っていてくれた方が嬉しいな』


『……分かりました、もらいます。』


よっぽど嬉しかったのかぬいぐるみを抱きしめて顔を埋めている

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