第29話 喫茶店で勉強
🔸
『おっはよー!』
『おはようございます。』
『おはー』
『おはよう』
いつものように全員が揃い登校が始まる、利寿と愛華の目の下にうっすらクマができていた
『お前ら、ちゃんとやったか?』
『もっちろん!でもそのせいかちょっと眠いや』
『俺もだなー、でもこれぐらいの眠気なら大丈夫だ!』
『頼むからテスト中に寝るんじゃないぞ?』
『『へーい』』
椎奈は、そんな俺たちの会話を聞きながら楽しそうにしている
『椎奈はあれからちゃんと休めたか?』
『はい、よく休めました。』
顔色も良さそうだし我慢しているふうでもないので安心した
『そうかよかった』
🔸
教室に入ればいつも静かなやつからバカうるさいような奴らまで、みんながみんな教科書や参考書読んでいた、俺も席につき一日目の教科の重要な部分を読みながら時間を潰していた
『よーし、お前ら始めるぞー!しまえー』
そんなこんなしているうちに開始時間になった、問題と答案用紙を受け取り開始する
(この分なら大丈夫そうだ)
〜40分後〜
解答と見直しを済ませペンを置き利寿の方を見れば利寿はこれから見直しに入るようだった
(大丈夫だろうか)
あそこまで誰かに勉強を教えたことはなかったので、できればいい点を取ってもらいたい
『よっし!そこまで!!解答後ろから集めてくれ!おい、そこ!終わりだぞ!』
(いるよな、最後の悪あがきするやつ)
🔸
順調に試験を終わらせて帰りの時間になった
『よっ!どうだったよ』
『いつも通りってとこだな見落としがなければ大丈夫だろう』
『さっすがだな〜』
『お前の方はどうだったんだ?』
今日の懸念材料の一つだ、ちなみに二つ目はこいつの彼女だったりする
『バッチリだぜ!満点!とまではいかないがそこそこいけたと思うぜ』
『ならよかったよ』
『よっしゃ、そんじゃー行こうぜ!』
『ああ』
この後は椎奈たちと合流してどこかの店で勉強会をする予定になっていた
🔸
『今日は俺たちが先だったようだな』
『そうだな、それより今日どこにいくんだ?』
勉強するにしてもテスト期間のこの時期は近くのファミレスや集まって勉強できるような店は大体他の生徒がいる。そんな中、椎奈や風花達と一緒にいたらほぼ間違いなく余計な奴らが寄ってくる
『それなんだがな?』
『おつー!お待たせー』
利寿が何かを言いかけたタイミングで椎奈と愛華、風花がやってきた
『おつー、愛華どうだったよ、テストは?』
『ふふふ!今回は自信あるよ?もしかしたら利寿なんか余裕で越してるかもね!』
『なによー?俺だってバッチリさ』
『ふふふ、お二人ともちゃんとできたようで安心しました。仁くんはどうでした?』
『ああ、俺も大丈夫だと思うよ。椎奈と風花はどうだった?』
『私も大丈夫でした。仁くんのノートのおかげですね!』
『私も大丈夫そうです。それより仁くんのノートとはなんですか?』
みんなの報告を聞いて安心していると、風花はノートの部分が引っかかったようだ
『仁くんが作ってくれた今回のテストの重要部分の解説や覚え方などを書いてくれたノートですよ。とってもすごいんですよ?参考書より参考になりました。』
『そう言ってもらえると作ってよかったって思うよ』
『ふふ、なんだか私が料理を作った時と逆の会話ですね』
『確かにそうだな、椎奈の気持ちが少しでもしれて嬉しいよ』
『仁くん…私も嬉しいです♪』
普段、椎奈に何か作ってもらうことがほとんどの俺が、椎奈の何かを作って感謝される気持ちがしれてよかった
『あの〜そろそろ行きませんか〜』
『せんか〜』
『本当に仲良しなのですね〜羨ましい限りです。』
『す、すまない』
『……ごめんなさい』
またしても周りが見えなくなってしまったようだ
🔸
『で?どこにいくの?この時期どこも人いっぱいじゃない?』
とりあえず再起動した俺と椎奈を見てどこにいくかの話に戻った
『自分で言い出したのに決めてなかったのか?』
『てへ!ごめん!』
『まったく。そう言えば、利寿、さっき何か言ってなかったか?』
どこにいくのかの話の時あてがあるような様子だったが
『おお!そうだ!実はな?ここから少しだけ歩くんだが俺の親戚がやってるカフェがあってな?そこ、どうかなって』
『大丈夫なのか?』
『おう!昨日確認したら大丈夫だってよ!お客もあんまり来ないし、来ても常連の人たちばっかりだから騒がしくしなければずっといていいってさ!』
確認までとっているとは用意周到な男だ。
『いいんじゃないか?』
『サンセー!』
『私も大丈夫ですよ?』
『私もです。』
満場一致の決定だった
『よっしゃ!じゃ行こうぜ!』
🔸
歩いて二十分しないくらいのところに利寿の言っていたカフェがあった
『おっ!ここだここ、どうだ?結構いい感じの店だろ?』
渋めの外観に真っ黒い看板に【akatuki】と白い字で書かれていた
カランカラン
『いらっしゃい』
『お久しぶりです。ひでさん昨日言ってた友人達です。』
ひでさんと呼ばれた店員、黒髪をオールバックで揃えて黒のコックシャツ、そして、灰色の腰エプロンをつけている。お世辞抜きにワイルドでかなりかっこよかった
『あなたたちが利寿くんが言っていた友人ですか、話は聞いていますよ。よく来てくれました、利寿くんの親戚の
ニコニコととても素敵な笑顔を見せてくれるひでさん、自己紹介した方が良さそうだ
『初めまして、戸条 仁と言います。今日はありがとうございます。』
俺を皮切りに全員が挨拶をしていく
『うんうん、みなさん利寿くんと仲良くしてくれてありがとうございます。さっ、席に案内しますよ』
そう言って店の奥に行き一つの部屋に通してくれた
『ひでさん、こんなとこあったんですか?初耳なんですけど?』
入った部屋には広めのアンティーク調の机や置物、西洋の貴族の部屋といっても通じてしまいそうな光景が広がっていた
『普段は予約した人しか入れないんですが、今日は予約もないですし個室の方がみなさん落ち着いて勉強できるかと』
『ありがとうございます。』
『いいえ。みなさん昼はまだ済んでないでしょう?メニューは机の上に置いてあります。決まったらそこのベルを鳴らして呼んでください。それではごゆっくり』
一度礼をしてから静かに部屋から出ていく
『すごいな、何もかも綺麗でマッチしてる』
『ええ、本当に素敵です。』
女の子だからか椎奈も愛華も風花も部屋の風景を見てうっとりしている
『さっ!席についてお昼にしようぜ!ひでさんの料理は絶品なんだぜ?』
利寿に促されてそれぞれ席に座りメニューを開く
『仁くんなににします?』
まだ決め切れないのか椎奈が聞いてくる、俺は決まっていた
『このたまごサンド、それと鶏ハムとトマトのサンドイッチ、それに紅茶にしようかな』
『あ、その二個目のサンドイッチ気になってたんです。でも入り切るか……』
『椎奈が嫌じゃなければ俺の分少し食べるか?』
提案してすぐ後悔し始めていたが
『いいのですか?』
思ったよりも乗り気のようだった
『椎奈が嫌じゃなければな』
『嫌じゃないです!ではお願いします。』
『ああ、三人は決まったか?』
『決まったぜ』
『同じく!』
『私もです。』
『じゃあ、お願いしようか』
🔸
チリンチリン
ガチャ
『決まりましたか?では、お伺いします』
『俺は、このクリームパスタとオレンジジュースを』
『私は、和風パスタと同じくオレンジジュースで!』
『私は、ブリトーとコーヒーを』
『コーヒーはどれにいたしますか?』
『おすすめはなんですか?』
『本日はたまたまブルーマウンテンのいいのが入っています。少々お値段が張ってしまいますが…』
『そうなですか?では、それをください』
『かしこまりました』
『は〜……』
風花とひでさんのやりとりを見て圧倒されてしまう
『?どうかなさいましたか?』
『いや、風花とひでさんのやりとりを見て本物のお嬢様と執事さんみたいでな』
『おっ!鋭いな、仁』
風花とひでさんを見ての感想を言ったら利寿が食いついた
『なにがだ?』
『お前のさっきの発言さ、風花さんが本物のお嬢様なのは知ってるだろ?』
『そりゃぁな』
小学生の時の付き合いなどもありそのことはよく知っている
『ひでさんもなんだよ、ひでさんは昔執事の修行をしてたんだぜ?』
『そうなんですか?』
『ええまぁ。高校卒業後、家の方針で執事の修行を五年ほど。しかし、母方の祖父が亡くなりその祖父がやっていたこの店を私がついだのです。』
『そうだったんですか』
それならさっきの対応も納得のものだ
『あの、失礼ですがひでさんはあの榊家の方なのですか?』
『あの?』
『おや、よく知っておりますな、鬼城のお嬢さんは博識のようですね』
『やっぱりそうなのですね』
椎奈も知っている風だった
『椎奈、あのって?』
『話ても?』
『構いませんよ』
『榊家というのはその筋の人なら世界中で有名な執事やメイドなどを輩出してきた名家なんです。』
(そんなすごい家の人だったのか)
『まぁ、私は三男だったのでこうしてここを継げたのですよ。たまに実家の手伝いなどもしますが』
『あの榊本家の修行を五年もしている人のコーヒーを飲めるだなんて…』
『ははは、そんなにいいものではありませんよ。さっ、お二人はどうなさいますか?』
『椎奈、先でいいよ』
『ありがとうございます。私は、ツナマヨサンドと紅茶を。紅茶は、アールグレイでお願いします。』
『俺は、たまごサンドと鶏ハムとトマトのサンドイッチ、飲み物は椎奈と一緒で』
『かしこまりました』
全員のメニューを記入して退室する。すごい家の人が作る食事に心どらせながら勉強にかかるのだった
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