第26話 椎奈の涙

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『お二人は昨日はどうでしたか?』

『急な試合だったがいい経験になったてとても有意義だったよ』

『おう!俺もいい運動になったし仁のかっこいいところも見れたしな〜』

椎奈に聞かせるようにわざとらしく言っている上にすごいニヤケ顔だ

『ええ〜何それー私も見てみたいなぁ〜、ね?シイちゃん?』

愛華もそれに乗っかるように椎奈も巻き込んでからかってくるが、椎奈は……

『ええ!いやあのその〜……はい、みてみたかったです』

顔を真っ赤にしながらも俺を見上げながら見つめてくる

『……かっこいいかはわからないが、師匠から許可は得たから今度一緒に行こう』

『はい!また楽しみが増えました♪絶対に連れていってくださいね?約束ですよ』

『ああ、必ず』

だがいに小指を絡めて約束をする

『にしても仁の師匠って本当美人だったなーあんな人に訓練してもらってるなんてな〜しかもかなり強いらしいしかっこいい人だった!』

和やかな雰囲気に亀裂が入った

『……仁くん?どう言うことですか?まさか、その美人さんに会うために道場へ?』

いつもの怒った時に見せる目の笑っていない笑顔ではなく真顔で少しだけ睨んだような顔で問い詰めてきた

『いや…椎奈、話をだな?』

『なんです?美人で強い女の人に会いにいっていると言う話をですか?仁くんは年上の人が好きなのですか?強くてかっこいい女性が好きなのですか?小さい私ではダメですか…?』

『そんなことはない!俺は椎奈の方が可愛いし綺麗だと思っている』

『へぇ!?』

(ん?俺今なんて言った?)

椎奈がいつも以上に怒っていて焦ってしまい自分が咄嗟に何を言ったのかわからなくなってしまいフリーズしてしまう

『じ、仁くんそう言ってもらえるのは嬉しいのですが…流石に少し恥ずかしいです…』

『椎奈…俺は…!』

『あのぉ〜!お二人さん?いいですか?ここ人通りだしそろそろ行かないと遅刻しますよ?』

『ですよ?』

急かしている割には面白いものを見物するかのような顔で話しかけてくる

『……すまない』

『……ごめんなさい』


🔸

『……じゃぁまた後で』

『はい、また後で』

教室前で椎奈、愛華と別れ教室に入りいつも通りの日常に入りいつも通り利寿と話

ながら先生が来るのを待っていた

『にっしても椎奈さんがあんなに突っかかってくるとはな!最初はちょー怖かったけど後半はすごく面白かった!』

『あのな…俺がどれだけ焦ったと思ったんだよ』

『悪かったって、でも真面目な話、仁の女関係であんなに取り乱すとはな』

確かにあそこまで怒られるとはかなり意外だった

『なぁ仁…あれでもありえないって言うのか?』

『…流石にわかるさ、そこまで鈍感ではないさ』

『だったら』

利寿はその後の言葉を飲み込み俺の言葉を待っている

『……わかってる、でも確証が持てないんだ椎奈が俺を良く思ってくれているのはわかる、でもそれがイコール恋愛感情とは限らないだろ?』

『…………』

『今の椎奈との関係は一般的に見ればそう言うものだって言うのもわかってるだがそれでも情けないことに俺は勘違いで関係が崩れるのが怖いんだ』

『…了解だ、でもお前の気持ちはどうなんだ?椎奈さんのことをどう思っている?』

『好きだし大切だ、だからこそ怖いんだよ』

『なるほどな、まぁ俺は応援するぜ!頑張れよ親友!!』

俺の情けない話を聞いても馬鹿にするでもなく背中を押してくれる本当に利寿には助けてもらってばっかりだ


🔸

午前中の授業を終え待望の昼休みになった

『行くか!やっとこの時間になったぜ〜腹ぺこぺこだ』

『お前はいっつも腹減ってるな』

『そりぁそうさ!嫌いではないが勉強するんだぜ?疲れて腹も減るってもんさ』

『ふぅーんそお言うもんか、とりあえず行くか椎奈たちは早めに終わったからも行ってるそうだ』

授業が終わりスマホを確認すれば椎奈から連絡が来ていた

『了解だ!よっしゃ!行くか』


🔸

『…さん、好きです!付き合ってください!!』

いつもの場所に行こうとしたらどうやら告白現場に遭遇してしまったらしい

『ごめんなさいあなたのお気持ちにはお答えできません』

『ん?』

『今の声って…』

利寿とアイコンタクトをし、ギリギリ顔を覗かせてみると予想通り椎奈が告白されていた

〔さすが椎奈さんだまた告白されてるぞ〕

〔みたことあるのか?〕

〔前にちょっとなそれにその手の話はよく聞くし、てか前にも言っただろ?〕

〔そういえばそうだったな〕

確かに椎奈がよく告白されると言うことは聞いていた、しかし断られたのになぜ告白したやつは食い下がっているのだろうか?なんだが椎奈もいつもと違い無表情の中に怒気が感じられ始めた

〔なんか椎奈おこり始めてないか?〕

〔そりゃそうだろ断ってるのにずっと食い下がられたら〕

そんな会話をしていたら男の方が詰め寄り椎奈の腕を掴み掛かったそれをみて考えるよりも先に椎奈の前に出ていた

『な!なんだよ、お前』

『じ、仁くん?』

『椎奈大丈夫か?』

『はい、仁くんが助けてくれましたから』

『そっか』

椎奈に微笑みかけ掴まれた腕をちらっと見ると少し赤くなってしまっていたそれをみて俺の中の怒りがだんだんとさらに湧いてくる

『おい!なんだって言ってるんだよお前!』

後ろにいた男の方に向き直りできるだけ無表情に務める

『……お前こそなんだ?告白して振られてムキになって女の子の腕を掴み上げて』

『なんだと!お前には関係ないだろ!』

『あるさ彼女は俺の大切な人だ』

『そ、そんな仁くん大切だなんて…』

ちらっと椎奈の方を見れば顔を赤くしながらあたふたしている

『お、お前…それは』

また男の方を見ればプルプルしながらえれを指さしてくる

『わ、わかったぞお前だな!最近如月さんに付き纏ってる男ってのは!ぼ、僕にはわかるんだ!き、如月さんに近づくな!』

『は?意味がわからない、なぜそんな話になるんだ?』

『うるさい!うるさい!いいから如月さんにこれ以上近づくな!彼女は僕といるべきなんだ!お前みたいな目つきの悪い取り柄もないようなやつと一緒にいるべきじゃないんだ!』

パァァン!!

流石の言い分に言い返そうと思った瞬間椎奈が俺の横を通り相手の男の頬に強烈なビンタをかましていた

『ふざけないでください!なぜ私たちがあなたにそんなことを言われなくてはいけないのですか!?』

『椎奈!』

『仁くんはとっても素敵な人です!あなたのようによく知りもしない相手を馬鹿にするような人じゃありません』

『椎奈!』

これ以上椎奈が泣き怒る姿は見ていられず抱きしめる

『…椎奈、大丈夫だから、だから泣き止んでくれ』

『仁くん……ですが!』

『いいんだよ、俺は誰になんと思われようが椎奈それに利寿、愛華に風花に俺のことを知ってもらえていればそのほかのやつなんて気にならない』

『……』

『…椎奈ありがとう、俺のために怒ってくれて嬉しかった』

俺の言葉を聞いて落ち着きを取り戻したようだがまだ俺から離れようてせずグッと抱き締めてくる

『嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ……』

椎奈に張り倒されて座り込みぶつぶつ何かを言い続けている

『おい』

『……!』

『あまりことを大きくしたくないからこのことは誰にも言わないでいるからそろそろ戻れ』

学校で有名な椎奈に対して告白し、振られ腕を掴み上げて打たれたなんて知られればどんな目で見られるのかを想像したのかみるみる顔が青ざめていく

『椎奈もそれでいいか?』

『…大丈夫です。』

『……くっ!!』

起き上がり本校舎の方へ走り去っていく

『…椎奈』

『……怖かったです。』

『……』

緊張の糸が解けたのか声を震わせながら声を漏らす

(こんな時なんて声をかければいいんだろうか…)

『仁くんもう少し、もう少しだけでいいんです。このまま抱きしめていてください…』

『ああ、いくらでも…』

そうして俺は離さないと言う気持ちを込めて椎奈を優しく強く抱きしめた

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