第24話 あの時の!

🔸

『っふ!っふ!…仁よ』

『っ!っ!なん‥だ?』

『っ!お前って‥なんで…柔術‥やってんの、っしゃあ〜!目標達成!』

道場の案内を終えトレーニングルームに入りベンチプレスをしていると、不意にそんな質問が利寿から投げかけられる

『っし!ふぅ〜、小学校の時にきっかけがあってなそこからずっとやってる』

『ある出来事って?』

『……そのうち話すさ』

『…そっか』

俺の気持ちを汲み取ってくれたようだ

『よっしゃいい時間だしそろそろ準備したらどうだ?』

『ん?ああ確かにそろそろ着替えないとまずいな』

もう少しで相手が来るようだ


『おお、道着着るとなんだかシャキッとするな!』

『普段してないみたいじゃないか』

『『してないだろ』』

全く同じ感じで声を合わせて同じツッコミをしてくる利寿と師匠

『師匠まで酷いじゃないですか』

『いやいや、お前は学校でもずっとシャキッとしてないじゃないか』

『道着を着るとこれから試合だという緊張感があって凛々しくなるのかもな〜、学校でも緊張感を持っていられるようになんか縛りつけたらどうだ?』

とんでもない迷惑な言葉を投げかけてくるが…本気じゃないよな

『おっ、いいっすね』

『だろ〜我ながら名案だぜ!で?どうする?どんな縛りをつける』

『あ!学校にいる間椎奈さんとずっと一緒にいるとか!』

『ふざけるな椎奈に迷惑かけるな』

『あっちは迷惑とは思わんかもよ?』

『椎奈って誰?』

そうだ師匠に聞くんだった

『俺の友人の女の子です』

『仁の通い妻ですよ』

『おい…利寿?』

『ひぃぃぃい、わ!悪かったから悪かったから落ち着け!怖えって』

確かに少し睨みはしたんだがそんなに怖がられるほどだろうか?流石に少し凹む

『仁はキレるとマジで怖いらあからな〜、利寿も気をつけろ、で?どんな関係なの?その女の子と』

『超美人で学校でも有名なぐらいです。で、仁と友人になってから仁の食生活を見かねて飯を作ってくれる仲になったんですよ』

『それは仁の家で?』

『ええ、まぁ』

『…通い妻じゃん』

『師匠?』

(この人まで何を言い出すのだろうかちょっと説教が必要だろうか)

『すまんすまん、でも今日々そんな女の子がいるなんてな!面白いぞ!』

『その女の子のことで師匠に相談が』

『おお?なんだ?結婚の保証人なら任せてくれ!』

『そろそろマジで帰りますよ?』

話が全く通じなくてげんなりし始めてしまう

『悪かったから、真面目に聞くよ』

『その女の子、椎奈が道場に来たいそうなんですけどいいですか?』

『……入門したいってことか?』

『いえ、あくまで見学をしたいようです』

『うーん』

あれ?これぐらいなら別り構わないと思ってたんだがなぜ渋っているんだろ?

『ダメですか?』

『ダメってわけじゃないんだが、帰りは二人きりだろ?』

『そうですね』

『若い男女が暗い仲二人っきりってのはな〜』

そんなこと考えてたのか

『俺がそんなことをするとでも?』

『しないだろうな、でも相手側はどうなんだ?』

『椎奈さんなら大丈夫ですよ、仁にちょー懐いてるんで』

『…………仁』

『わかってます。それも踏まえて大丈夫ですから』

『ならいい好きな時に来て好きに見学するがいいさ、ただし女の子の前ではカッコ悪いところは見せるなよ?まっ!私は今まで以上に厳しくするが』

これ以上キツくなったらほんとに怪我しそうだなんて考えながらも約束を果たせそうで安堵する


🔸

『ところで師匠今日来る人たちってどんな人たちなんですか?』

『ん?ああ言ってなかったな今日の相手は柔道の道場の連中だその中で一番強え奴とはちょっとした縁があってな』

『は?異種格闘だったんですか?俺一回もやったことないんですけど、てかそういう大切なことは前もってちゃんと知らせてくれといっつも言ってるじゃないですか』

他の柔術の道場となら少しやらせてもらったことはあるが別の競技のさらに大人となんて初めてなんだが

『大丈夫だ、いっつも私の相手をしているならそうそうやられんから。それに、その強えのとは私がやるから安心しろよ』

『はぁ、いいですか?俺は別に別の競技種目の人たちとやるのを怒ってるんじゃないんですよ?俺が言いたいのはですね…』

『こんばんは!』

『お、来たか!悪いがこの話はまた後で』

問答をしているうちに相手が着いてしまったようで師匠は説教から逃げる口実ができてそそくさと逃げていく

『お邪魔しますよ、天上さんご無沙汰してます』

『久しぶりだな如月!また負けに来たか!』

『はっははは!天上さんには敵いませんな!ですが今日は勝たせてもらいますよ、なんせ久しぶりに取れた時間ですからね楽しいものにしたいですから』

二人は既知の中らしく強い握手を交わしいいるようだ、てか如月って…

『ああそうだ今日土田のやつが怪我してな代わりのやつがいる、おい仁ちょっとこい!』

『仁?』

師匠に呼ばれて玄関の方に向かうと知った顔がいた

『こいつは戸条 仁と言って俺の…』

『『ああああああああ!』』

『うぉ!なんだお前ら急に』

予想通りというかなんというか、本当に世間は狭い


🔸

『あっははは!なんだお前ら知り合いだったのか?なんとも面白え偶然もあったもんだな〜にしてもどおいう経緯で?』

『私が財布とスマホを落とした時拾ってくれたのが彼でねその時に知り合ったんだよその節は助けられたよ、改めてありがとうね仁くん』

そうして頭を下げられてしまう、でも前にも感謝の言葉を聞いているため逆に申し訳なくなってくる

『いいんです。大丈夫ですから頭を上げてください』

『そうか、でも!あのことはいけないぞ?仁くん』

頭を上げて落ち着いたかと思ったら急に少し怒ったような顔になる

『な、何がでしょうか?』

『報酬だよ、ちゃんと名刺を渡したのだから連絡をくれたまえよ大体のものは揃えるぞ?』

『ん?仁、報酬を受け取ってないのか?それはいかんぞ?ちゃんと受け取れ!』

『そうですよね?』

二人して俺を追い込んでくる、普通に理由を言えばいいのか

『気まぐれでやったことですし届けられたのもただの偶然ですから報酬とかは』

『仁くん前にも言ったかもしれないが気まぐれであろうと私の大切なものを私の元まで返してくれた、そのことに感謝しているんだよだからお礼がしたいんだよ』

『しかし』

『ええい!ガキがうだうだ言ってんじゃねえよ!貰えるもんはちゃんともらっとけって』

大人二人にここまで言われてはおとなしく受け入れるべきだろう

『…分かりました考えておきます』

『うむ!じゃあ早速始めましょうか、そう言えば土田くんの代わりに仁くんが入るそうだけど大丈夫かい?』

『大丈夫大丈夫!こいつ普段から私の相手してるくらいだからさ!油断してっとお前やお前んとこの奴らも危ないぞ?』

なぜこの人は挑発するようなことを言うのだろうか、今の発言を聞いて後ろにいる人たちがムッとした表情になってしまったのだが

『ほー、天上さんの相手をするとはすごいな!』

『如月さん、ずるいですよ?俺も混ぜてください』

三人で話していると後ろの方から二十代後半ぐらいの見た目の人がやってきて俺の目の前にくる

『仁くん紹介するよ、この男は私の仕事の部下の一式淳平いっしき じゅんぺいだ、なかなか強いからぜひ相手してやってくれ』

『はぁ』

相手をしてくれって、この人の方が年上で強そうなんだが?

『一式 淳平だ柔道を始めたのは三年前ぐらいからだけど、そこそこやれると思っている、けど別種目とやるのは初めてなんだ今日はよろしくな』

『戸条 仁です。それなりに長くやっていますが俺も別種目とやるのは初めてなのでよろしくお願いします』

『それなりってどのくらい?』

『えぇっと、小三の冬ぐらいからだから。大体七年くらい?ですかね』

『すげー長いじゃん、やっべー年下には負けたくない…』

なんだがぶつぶつ言いながら顎を押さえているが大丈夫だろうか?

『じゃ!自己紹介も終わったことだし準備運動して早速始めるか!』

『わかった、おい!準備始めるぞ』

『『『『『おっす』』』』』

こうして異種格闘戦が始まるのだった

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