第19話 椎奈の不安

🔸

『どうとは?』

『わかってるだろ?お前は変わってきているまだ少ししか付き合いのない俺だが、お前の変化には気づくお前は椎奈さんのことを意識している』

『……わかってはいるさ』

わかっている、今まで会ってきた人たちとは違って椎奈を気にしてしまっている、だが

『わかってはいるんだよでも、俺は椎名とどうなりたいのか俺にもまだわからないんだ』

『どう言うことだ?』

『詳細はいえないが、俺は今までそんなことを考えられる人に会えなかったんだだからよくわからないんだ』

『…そうか、話せないのならまだ詳しくは聞かない』

こいつは、本当に俺の気持ちを察してくれる

『それで?これからどうするんだ?』

『まだ、気持ちの整理がつかない…椎奈が友人だと言うなら友人として過ごす。それ以上でもそれ以下でもないさ』

『じゃあもし椎奈さんが友人以上を望んだらどうするんだ?』

『そんなことありえんさ』

そんなことはありえないだろう、俺のような奴とそんなこと望む人なんて

『じゃあ椎奈さんがお前のことを世話したり干渉したりするのはどう説明するんだ?あれは友人にすることじゃあないだろ』

『あれは初めてできた友人だから浮かれてるんだよ』

『ふぅーん?お前がそれでいいならいい、だがおせっかいかもしれんが進まないと得られるものは少ないぞ?』

『……わかってる』

『ならいい、何かあれば言え力になるとは言い切れないが相談くらいなら乗ってやるからさ』

こいつのこう言うところに救われる

『よっしゃ、聞きたいこと聞けたから俺は満足だぜ、しっかしあの仁がそこまで思える人が現れるなんてな〜』

『うるさい』

俺の反応に楽しそうにしているその反応に苛立ち半分嬉しさ半分の微妙な感じだった

『ところでさ今日お前の母親が来たんだろ?親父さんは?どんな人なんだ?』

『うーん、今日はどうせ仕事だろろうし仲が悪いわけじゃないがそこまで大好きってほどでもないな、見た目は結構いかつめだが根は優しい気配り上手って感じかな』

『なるほどな、面白そうな人たちだ今度合わせてくれよ』

(利寿なら大丈夫だろう、てかうちの両親と気が合いそうだだがまだ…)

『今度な』

『おっ!言ったな〜絶対に合わせてもらうぞ?』

こいつと両親が会えるのは俺の気持ちが固まった時だろうな


🔸

『おっまたせーできたよー』

料理が完成したのか呼びに来たようだ

『おお待ってたぜちょー腹減った』

『行くか』

リビングに行けばエプロン姿の椎奈が配膳をしながら待っていた

『椎奈ありがとうとても美味しそうだ愛華が邪魔しなかったか?』

一番の懸念材料だ

『仁それはどうゆうことかな〜?』

『全然大丈夫でしたよ?アレンジをしようとしたので止めはしましたが』

『やっぱりか…』

椎奈がいなかったら危なかったな、いやそもそも作らなかったか

『いいから食おうぜ〜腹減ったー』

『‥そうだないただこうか』

『どうぞ召し上がれ〜』

『どうぞ』

『『『『いただきます』』』』

愛華が一緒に作ったということで少しだけ警戒してしまったが食べてみればやっぱりとても美味しかった

『うっま!この間弁当少し食わしてもらったけど椎奈さんほんとに料理上手だね〜』

『ありがとうございます。喜んでもらえて何よりですよ』

『ちょっとー私も作ったんだけど?』

『わかってるって次は愛華が一人で作ってくれよ』

『……。』

『おい、目お逸らすな』

(愛華が一人でこの味を出すのは無理だろうな)

『仁ちゃ〜ん何か痛いことがあるのかな〜?』

『…………別に』

『今の間はなんだ!』

『気にしすぎだ、ほら早く食べないと冷めるぞ?』

和気藹々と食べる時間はどんどんとすぎていった

『『『『ごちそうさま』』』』

『いやぁ美味しかったー』

『だな、二人とも美味しかったよありがとう』

二人がいなければ家でカレーなんて食わなかっただろう

『えへへ、どういたしまして』

『感謝しなさぁーい』

愛華はともかく椎奈の料理の腕は本当にすごい、ここまですごい料理を作れるのは葉月さんと和世さんは本当にすごいんだな

『そういえば葉月さんってこの間言った時って仕込みぐらいしかしてなかったけどいつものことなのか?』

『いえ、実はお母さんはお父さんのお仕事のお手伝いをしていていない時があるので料理好きのお母さんのために残してるんです。』

『なるほどなじゃあ主に料理を習ったのは葉月さん?』

『そうですね、昔はお母さんも忙しくて家にいないことが多かったので葉月さんによく習いました』

なるほど椎奈が小さい頃からプロの家政婦の葉月さんに習っていたのなら料理が上手いのも納得だ

『……葉月さんって誰?』

不意に愛華が聞いてくる

『そうか二人は知らないのか、椎奈の家にいる家政婦さんだよ』

『なんで人家知ってるんだ?』

『椎奈の家に行ったと話しただろうが、忘れたのか?』

『ああ、思い出した勉強詰め込みすぎて忘れてたぜ!』

『たく…』

そこまでつめんだつもりはないのになぜ忘れる

『でも、さすが如月財閥のお嬢様の家だね家政婦さんがいるなんて』

愛華が話を振った途端なんだが少し暗い顔になってしまう

『…如月財閥って?椎奈ってお嬢様だったのか?』

『『は?』』

『なんだよ』

『え?仁知らないの?シイちゃんといっしょにいて?』

『知らん、どうした?椎奈』

俺の反応を聞いた時からパッと顔を上げて驚いた顔をしているがなんなのだろう

『周りの連中から聞かなかったのか?』

『俺に近づく奴はいない』

『それでも少しぐらいは聞くだろ?最近お前のとこに男連中が群がってたろ?』

『知らんお前と話す時以外はノイキャンのイヤホンをつけてガン無視してる』

『マジかー、お前あんだけ滝路が喋ってんのに聞いてないのか?』

(滝路?あああのナルシストか)

『聞いてないし興味なかったからな』

『で、では仁くんは私のことを知らないで一緒に過ごしていたのですか?』

なんだが焦って真っ青になった顔になり

『ああ、それより大丈夫か?顔が真っ青だぞ?』

『…………大丈夫です。』

大丈夫と言っているが手は震えずっと下を向いている

(……なるほどそういうことか)

『安心しろよ椎奈俺はお前がお嬢様でも態度は変えないから』

『!ほ、ほんとうですか?このことを知って急によそよしくなったり避けたりしないですか?』

『そんなことはしない俺は友人と決めた奴とはどんなことがあろうと裏切らない』

『本当ですか、本当に…』

不安になっていたのか安心し切れていないのか何度も聞いてくる

『もちろんだ、それとも俺がそんなことをするように見えるか?』

『いえ‥いいえ!私は仁くんを信じたいです』

少し目尻に涙を溜めながらも笑顔になり元気に返事をしてくれる

『私たちもだよ!シイちゃん!』

『おうともよ!俺たちはずっと友達だぜ!』

『ありがとう…ございます』


🔸

『じゃあなまた明日な』

『じゃあねーまた学校で会おう!!』

椎奈が落ち着いた後片付けを済ませて勉強を再開し今日は区切りもいいし少し明るいぐらいに解散の流れとなった

『……』

『……』

(気まずいな)

本当の予定ではこの後夕食の予定だったがなぜか二人してソファーに座ってしまい沈黙が流れてしまう、何分経ったのだろうか

『『あの』』

『椎奈からどうぞ』

『いえ、仁くんからで』

話してくれという強い気持ちが伝わってきたので俺から話すことにする

『わかった…椎奈は昔何かあったのか?』

俺の聞きたいことがわかっていたのか驚いたりせず少し苦笑い気味に下を向いている

『俺の昔のことを覚悟もなく話せもしない俺から聞かれるのは不快かもしれない、だから椎奈も言いたくなければ言わなくていい』

『いえ、大丈夫ですよ…なんでことはないのです。私の家系は如月財閥と言う世間的にみれば大企業という部類の歴代の社長を務める家系なのです』

『椎奈が社長令嬢というのは知らなかったが如月財閥の名前はよく知っている……色々な』

『?』

『ああいや気にしないでくれ、続けて』

今は椎奈の話なのだから自分のことはいいのだ

『私は会社のことも両親のことも尊敬しています。私はそんな家や二人のように如月に相応しい人間になろうと努力してきました。ですが結果友人がなかなかできず寄ってくる人も私ではなく如月の名前が私お繋ぎとした男の人目当てで…』

椎奈が必要以上に人と関わらないという話はそういう経緯があったようだ

『男の人もよく知りもしないのに友人だとか恋人だとか言ってきた人もいます』

『それは……』

『いえ大丈夫ですよそういう人はちゃんとお話ししましたから』

相変わらずにっこりしているのに目が笑っていない、話し合いだけで済んだのだろうか

『あと恩を着せて近づこうとしてくる人もあとをたたず』

『なるほどな椎奈が極端に俺に借りを作るのを嫌がったのはそのためか?』

『そうですね』

だとしたら俺は椎奈にとって悪い印象だったのだろうか

『…そんな顔をしないでください確かに最初は他の人と同じだと思いましたが仁くんはそんな人ではないとちゃんとわかっていますから』

『いつそう思うようになったんだ?』

『仁くん私を助けたあと私にしつこく関わってこなかったでしょ?』

確かに関わらなかった、しかしそれは椎奈のことを知らなかったというのが本音だったりする

『それが今までなかったことだったので少し新鮮だったのです。その後の経緯は知っての通りです。』

『なるほどな』

『ですから仁くんがさっき言ってくれたこと私がお嬢様でも態度を変えないその言葉が嬉しかったのですよ?』

『そうか』

『そうです!ですから改めてこれからもお願いしますね?』

『ああ、こちらこそよろしく願いするよ』

二人してソファーの上で正座でお辞儀をしあうそして笑い合う

『さて、そろそろ夕ご飯の支度をしましょうか!』

『ああ、手伝うよ』

『はい!!』

二人で台所に立ち料理するとても楽しい時間がまた始まった

(椎奈が話してくれたんだ、俺もそろそろ覚悟を決めるべきだろう…でも葉月さんから聞いた中学校の事件はまだ聞けてない…一体何が)

椎奈の話に勇気をもらい前を向く自信が少しだが沸き起こりそしてまた新たな疑問も増えるのだった

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