第18話 ハプニング

🔸

『はぁー朝からなんでこんなに疲れてるんだろう俺』

『……やはりご迷惑でしたでしょうか?』

俺の疲れている原因はほぼ母さんなのだが、そんなことを知らない椎奈は自分のせいで俺に迷惑がかかったと勘違いしてしまう

『いやいや違うよ、母さんが連絡もせず来たのが悪いんだ』

『私も連絡していません……』

確かに連絡をしていないという点では同じだが

『違うぞ?椎奈は時間は言わなかったがちゃんとくるのは知っていた、でも母さんは来るなんて一言も言ってないんだ、だから椎奈と母さんは違うよ』

『そ、そうですか?』

『そうさ、それに椎奈ならいつでも来ていいぞ?』

『ほ、ほんとですか?!』

『お、おお別に構わないがてか来ると言ったのは椎奈じゃないか』

(道場がない日に来ると言ってたのは椎奈だったはずなのだが…)

『それ以外の日も…遊びに来ていいですか?』

『それ以外の日?ご飯を作ってくれる以外の日か?だが道場の日は少し遅くなってしまうぞ?』

『はい、家に帰ってもやることがないのでそれに…仁くんといるのは楽しいし落ち着きますから』

そう言ってにっこり笑っているが言ってるのは俺の心臓に大ダメージを与える

『そ、そ、そうかそこまで言ってくれるならいつでも来てくれ‥』

『ありがとうございます!嬉しいです!』

『まぁ、この話は終わってそろそろ朝ごはんにしよう 』

『はい!簡単なものですがすぐに作りますね♪』

(椎奈のあの落ち着くという一言はどんな意味なのだろう…)


🔸

『さぁ!できました食べましょう!』

『おお、今日のもうまそうだ、っ!やった、卵焼きがある』

『はい、卵の数がちょうどよかったで卵焼きにしましたそれに先ほど疲れたとおっしゃってたので少しでも元気になってもらえればと』

(なんてことだ)

今日は朝から良くないことが起こったがこれが食べられるなら来てくれてありがとうとさえ思う

『じゃいただくよ』

『はい、それじゃあ』

『『いただきま…』』

ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン

『おいおいおい!うるさいぞせっかく今から椎奈の料理を楽しむところだったのに!』

ガチャ!

『誰だ!うるさいぞ!』

扉を開けてみれば利寿と愛華が同じような面食らった顔で立っていた

『お、す、すまんそこまで怒られるとは思わんかった』

『ね、目つき鋭すぎて正直少しビビったわ…怖すぎる』

変な顔で立っていた思ったらすぐに失 失礼なことを言ってくる

『……それで?なんでこんな早くに?』

『なんでそんなにキレてんだよ〜ピンポン連打は悪かったって〜てか、なんかうまそうないい匂いがするんだが?』

『あ、わかるすっごいいい匂い、もしかしてシイちゃんが朝ごはん作りにきてる?…なるほどね〜二人きりの朝を邪魔されて拗ねてるんだな〜?』

俺が料理をしないのを知っている二人なら俺の家で料理をする人間なんて限られるのだろう、てか相変わらず愛華のニヤケ顔は少しむかつく

『違う椎奈が料理を作ってくれたのその通りだが俺が怒ってるのはこれから飯を食おうという時にピンポン連打されたことだ』

『悪かったって、ほら飲み物と卵やるから』

ビニール袋を掲げ俺に見せてくる

『…なんで卵?』

『俺カレーに卵入れる派なんだ、だから場所の提供代だと思ってくれ』

『利寿のことは大好きだけどその食べ方はちょっとって思っちゃうよね〜』

『俺もわからん』

『ええ?やってみろって、マジで美味いからさ!』

『仁くん?お二人でしたか?』

玄関先でいつまでもだべっていたら待ちかねた椎奈がやってきた

『ああ、二人だったよ…そうだお前らなんでこんな早くに来てんの?なんで今日は朝早くから来客が来るんだ』

『楽しみすぎて早起きしました!』

『同じく!』

『もういい、とりあえず入れ昨日の部屋で続きやっててくれ、食べたら行くから』

子供のような理由に少し呆れながらも、朝食が済むまで外で待たせるわけにもいかないため中に入れて勉強させておく


🔸

『『ごちそうさまでした』』

『同じ言葉ばかりで悪いがとても美味しかったよ、椎奈の出来立ての卵焼きは特に最高だった』

前に食べたのは弁当の時の卵焼きだったため出来立ては格別の美味しさだった

『感謝の言葉が聞けて嬉しいですからいいですよ?それに、喜んでくれているのは良く分かりますから』

嬉しそうに食器を洗いながら話しているがその言葉に全く覚えがない

『どこでそんなふうに思ったんだ?』

『え?だって仁くん食べてる時よく分かりますよ?補助食品の時とピザの時、私のお料理の時で進み具合も表情も違いますから』

『そんなに違うか?』

『ええ、特に今日は卵焼きのおかげかとっても美味しそうでした、ふふふ本当に卵焼きが好きなのですね、仁くんかわいいです♪』

まさかそこまで見られて分析されていたとは、少し、いやかなり恥ずかしい

『……椎奈は俺のことをよく見てるんだな』

恥ずかしい思いをされたほぼ八つ当たり気味に揶揄ってしまった

『え!?いえ!ち、違いますよ?!わ、私はあの〜そのですね?』

想像以上に慌て出してしまう、焦っているのか顔を真っ赤に目を回し詰め寄って説明しようとしている

『わ、わかってるわかってるから!椎奈落ち着けまたやってるぞ!』

『ああ、私ったらまた……キャ!!』

俺から離れようと後ろに飛び退くように下がった先にはさっきまで皿を拭いていた

布巾が落ちていて滑ってしまう

『危ない!!』

ガン!!

『いっつつ、大丈夫か?椎奈どこか打たなかった‥か?』

椎奈を引き寄せ後ろに倒れ込んでしまう、そして椎奈を守るために胸に抱きながら倒れてしまい椎奈を抱きしめる形になってしまった

『は、はい…大丈夫です。』

『そ、そうか』

椎奈を抱きしめているせいか何がとは言わないがダイレクトにアレの感触が伝わってきて気が気ではない

『し、椎奈、大丈夫そうならそろそろ起きれるか?ゆっくりでもいいから…』

『あの、もう少しこのままでも、いいですか?』

『椎奈?どこか痛いのか?』

『い、いえそういうわけではないのですが少しこのままでいさせてください』

少し泣いているような声で俺の胸に顔を埋めている

『…本当に大丈夫か?』

『……今、急に倒れて怖かったのと仁くんに助けられた嬉しさがぶつかっていて、この状態は少し落ち着くのです。ですから申し訳ないのですがもう少しこのままで』

『…わかったよ少しだけな』

今の格好は少し危ういのだが椎奈が落ち着くのならこのままでも……

バン!!

『大丈夫!?なんか今すんごい音した‥け…ど?あ〜らあらあらあらあら失礼しました〜ごゆっくりー』

『……ちょっと待てー!誤解だー!!』


🔸

『あっはははは!で?なんでそんな状況になるんだよ?』

『…ただの事故だ』

『事故です…』

落ち着いた椎奈を連れて部屋に行きさっきの出来事の説明を始める

『うっそだ〜あーんなに大事そうにシイちゃんのこと抱きしめていたくせにシイちゃんどうだった?』

『えっ、えっと怖かったです。』

この発言にはショックだ確かに急に倒れて男に抱き抱えられるなんてかわかっただろう

『仁くん!違いますよ!怖かったのは倒れたことですよ』

『そうなのか、ならよかったよ‥』

(よかった、椎奈に嫌われていたら立ち直れないかもしれん)

『まぁ無事ならよかったさ経緯については詳しく聞かんでもいいだろ、さ!そろそろ始めようぜてか俺たちはもう始めてるんだぜ?解説頼むよ』

『ああ、わかったよ』

『シイちゃんもやろ?今度詳しく教えてね?』

『お手柔らかにお願いします。』

『あ、そうだ』

勉強を始めようとした腰を折られてしまう

『なんだよ勉強するんだろ?』

『まままま、するけどさ俺たちが朝来た時にさお前朝早くから来客って言ってたけど俺ら以外にも誰か来てたのか?』

『細かいことを覚えてるな、母さんが来たんだ』

『とってもお綺麗でした、それに仁くんのことをお願いしますと言っていただいたのですよ』

母さんと会っていた時のことを思い出して楽しそうに話している

『へぇ親公認ねー』

『言い方を考えろ』

『でも意味は一緒だろ?』

『………』

確かにいみは意味は同じように感じてしまう

『聞きたいこと聞けたからもういいや、すまんな止めて今度こそ始めようぜ』


🔸

『おっ?そろそろ昼の時間じゃないか?』

相変わらずの腹時計でさっきまでの集中力が一気に切れて昼飯の話になったしかし、確かにそろそろいい時間だ

『そうだな、椎奈そろそろ始めよう』

『はい!』

『あ!ちょい待ち』

俺と椎奈で昼食の準備をすべく立つと利寿に止められる

『なんだ?』

『椎奈さん、今日は愛華に料理を教えてくれない?』

『え?』

『どうした?急に』

突然何を言っているのだろうか

『いやなー愛華もいい加減まともな飯を作れるようになって欲しいんだよ』

『利寿ひどい〜』

『…そんなにひどいのか?』

『いや、味は申し分ないんだがアレンジがすごくてな、ここらでノーマルな料理を作って欲しいんだよ』

確かに今年のバレンタインに貰ったクッキーは美味いは美味いのだが色が変だったり味が複雑すぎてなんの味かわからないものが多かったのだ

『そういうことでしたら、一緒にやりましょ?愛華さん』

『シイちゃんがいうならやる〜、いこ?利寿待ってなさいよ?度肝抜いてやるんだから!』

『普通のでいいんだぞー』

『仁くん台所お借りしますね。』

『ああ、頼むよ』

愛華を引き連れて部屋を出でく

『……それで?なんの話だ?』

『ん?』

『ごまかすなわざわざ二人を部屋から出して何が聞きたい?』

『さすがにわかるか…』

『あたりまえだ』

あそこまで露骨ならさすがに気づく、椎奈はよくわかっていないようだったが愛華は少し察していたようだ

『じゃあ単刀直入に効くぞ?…お前椎奈さんをどう思ってるんだ?』

友人から突きつけられるその言葉に対して俺は頭を真っ白にさせて口を開けたまま固まるのだった…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る