第17話 突然の訪問
🔸
『『ご馳走様』』
『とてもおいしかったよ椎奈久しぶりにちゃんとした夕食だったよ』
『はい、お粗末さまです。ですが美味しいと言っでもらえるのはいいですがちゃんと食べてくださいね?』
美味しい夕食をたいらげ感謝の言葉を言ったのだが普段のことで怒られてしまった
『す、すまない気をつけるよ』
『よろしいです。ですが安心してくださいね?私がちゃんと作って差し上げますから』
自分の胸に手を当てドヤ顔を披露する
『…ありがとう、さてじゃあ片付けるか食器洗いぐらいならできるから手伝うよ』
『はい、やっちゃいましょう』
食器をまとめてシンクへ持っていくがこんなに洗い物をするのは初めてだ
『仁くん私が洗いますので水気を拭いてくれますか?』
『ああ、わかったよ』
椎奈が食器を洗いそれを受け取り水気を拭き取り食器カゴの中に入れていくなんて事のないことなのにとても落ち着く
(前まで、こんなこと考えもしなかった)
『あの、仁くん』
物思いに耽っていたら椎奈にはなしかけられ少しビクッとなってしまう
『どうした?』
『そのですね今週の土曜日って道場だったり予定ってありますか?』
『特にないがどうしたんだ?』
『…一緒にお買い物に行きたいなって思いまして』
『別にいいが何を買いに行くんだ?』
『食器だったり日用品だったりいろいろ買いに行きたいのです。仁くんの家には一人分の食器しかないのでちゃんと二人分のものが欲しいのです。』
確かに今日も食器が足りず困ってしまった
(別にあって困るものでもないか)
『いいよ、じゃあ金曜に行こうか少し遠くなるが大型のショッピングモールに行くか?』
『はい、行きましょう!私一から食器を買うの初めてです。』
楽しそうにどんなものを買おうか話している椎奈を見ると嬉しくなるのだが当日のことを考えてしまう
(俺、椎奈の隣を大勢の前で歩くのか…‥)
当日はかなりのおめかしをしなくてはいけないようだ
🔸
『よし、終わったことだし送っていくよ』
『はい!ありがとうございます。ではお願いします』
玄関を出てすっかり暗くなってしまった夜道を歩いていく
『もうすっかり夜だな』
『そうですね、夜はまだ冷えます。仁くんもまた風邪をひかないようにきおつけてくださいね?』
『わかっているよ、もう椎奈の手を煩わせたりしないさ』
『違いますよ、煩わせるとかではなく心配するのです。そこのところちゃんとわかってくださいね』
ツンツン俺の脇腹をつっつきながら抗議してくる
『わかったよ、しかし椎名も気をつけろよ?』
『当然です。でも引いたら看病してくれますか?』
いたずらをする子供のように楽しそうにしている
『当然だ、椎奈が望むならつきっきりで看病しよう』
『え!?いや、その、えっと………考えさせてください』
(冗談のつもりだったんだが‥)
椎奈は顔を真っ赤にしぶつぶつ話しながら歩き俺も自分の言ったことに後悔をし暗くなって帰ると言うよくわからなくなってしまった
そんなこんなで椎奈の家についた
『今日はありがとうな美味しかったし楽しかったよ』
『いえ、私も初めて宅配ピザを食べられて嬉しかったですよ、それより今日も寄って行きます?』
視線で自分の家を指している椎奈だが、さすがに今日は…
『いや今日は遠慮するよ今日は少し疲れたからなまたの機会にするよ』
『そうですか?明日の朝は残ったものでいいですか?それとも作りに行きましょうか?』
『いやそこまでしてもらうのは悪いさインスタントの汁物とご飯ぐらいは炊けるからそれを食べるから大丈夫だ』
『そうですか?ではまた明日ですね、おやすみなさい仁くん』
『ああ、おやすみ椎奈また明日な』
椎名と別れ自分の家に暗がりを通って帰るしかし…
(静かだ…)
二人で歩いていた道を歩いているからなのか静寂が包んでくる……
🔸
ピンポーンピンポーンピンポーン
『んん?なんだこんな朝早くから一体誰だ?』
寝起きの不機嫌さも残しながらインターホンに向かい朝っぱらから訪ねてくる来客を対応する
『は?…』
画面にうつ出ている人物を見て固まってしまう
『母さん?は?なんで?来るなんて一言も……』
ピッ
『やっと出てきたわね早く開けてくれる?まだ朝は冷えるのよ』
ガチャ
『くるって言ってたか?てか連絡ぐらい入れてくれよ』
『あら、お言葉だけど息子に会いにくるのになぜ許可が必要なのかしら』
『許可じゃなくて連絡だ社会人なんだから報連相しろよ』
『ふーん、言うようになったわねいいじゃない困るものでもないでしょ?』
得意顔になりながら家の中を見て回る母さん、戸条 雅美(とじょう まさみ)自分の母ながら和世さん並みに若作りであり凛とした態度のできる女というふうな感じだ
『俺にも予定があるんだかな』
『へぇ〜どんな予定があるのよ?』
『………友人が勉強に来るんだ』
『…ふーんほんとのようね、何時くらいに来るの?』
何をもって本当としているのかよくわからないが信じてもらえるならいい、あと帰ってもらえるならなおいい
『今日は昼前の十時過ぎぐらいだそうだ』
ピンポーン
『あら、言ってる側から来たんじゃない?』
(今日は朝早くから来客が多いな…一体誰だ?)
愛華はこんな早起きはできないし利寿は愛華と一緒に来ると言っていたし…まさか
ピッ
『あ、仁くんおはようございます。やっぱり心配になったので朝早くから申し訳ないのですが入ってもいいですか?』
(まじか)
『お友達だった?外は寒いから早く入れてあげなさい』
『はい…』
ガチャ
『おはよう椎奈いらっしゃい』
『おはようございます仁くん……女の人が、いらしているのですね?』
(なんだか、睨まれてるような)
『仁どうしたの?早く上がってきなさ‥い』
玄関に寄ってきて椎奈を見た途端固まって二の句を言わなくなってしまった
『とりあえず上がってくれ中で話そう』
『は、はい』
🔸
『初めまして私、仁くんの友人の如月 椎奈といいます。』
『初めまして…まさか仁にこんな綺麗な彼女ができるなんてね〜……それも如月だなんてね』
『最後の方は聞こえなかったが椎奈は彼女ではないぞ、友人だと言ってるだろ』
母さんの勘違いを正そうと思い強めに言ってしまってたのだが全く響いていない様子だ
『そんな細かいこと気にしないの、それで彼女さんはどこで仁と知り合ったの?』
『えっと、私が男の人に迫られているところを助けていただいて、その後もいろいろとお世話になりまして』
(なぜだか頬を少し染めているような、気のせいか?)
『ふぅーんやるわね仁よくやったわ、でもお世話になったなんて今は仁の方がお世話になっているようだけどね』
台所の方に視線を動かして俺を問い詰めてくるなぜわかったのだろう
『なんでわかった?』
『わかるわよ、あんたは料理なんてしないのに食器が洗ってあるそれにさっき冷蔵庫覗いたらなんだか食材が多いし昨日の残りらしきものもあったしね』
『それだけか?それなら俺が偶然料理しただけかもしれないだろ?』
『決め手はあれよ』
母さんの指さす場所を見ればあるものが……
(エプロン?‥ああそう言うことか)
『そうよ、あなたの性格上あんな可愛らしいエプロンはしないしなのに使った形跡があるのだもの、で?なぜ椎奈ちゃんがお料理してくれているの?』
ジト目になりながら俺に詰め寄ってくる
『…俺の食生活を見かねた椎奈が昼の弁当と道場がない日の夕食を作ってくれることになったんだ』
聞いている途中からよくわからない顔をし始める
『はぁーまさかそんなにお世話になっているとは、向こうのご両親は?』
『ちゃんと許可をもらっている』
『そ、ならいいわでも甘えすぎないようにね椎奈ちゃん本当に大丈夫?』
『はい大丈夫ですよ好きでやっているのですから、それに……お昼を補助食品で済ませたり夜はインスタントで済ませたりしているのはちょっと』
椎奈の話を聞きながら頭を抱え始める母さん
『…あんた体壊す前に椎奈ちゃんに会えてよかったわね〜、椎奈ちゃん愚息のことよろしくお願いします』
『は、はい任されました?』
『ふふ、今度いいもの見せたげるからね』
『おい、何を見せる気だ?』
『何ってあんたの昔の写真とか、録画ビデオとかいろいろよ』
『ふざけるな!そんなん見せられるか』
『………見せてくれないのですか?』
見せないと言った途端意気消沈してしまう椎奈を見てニヤニヤした顔で見てくる
『みたいわよねー椎奈ちゃん』
『はい、でも仁くんがダメというなら‥残念ですが諦めます。』
諦めると言いながらチラチラ見てくる
『……わかったよもう好きにしてくれ』
『よかったわね!今度見せたげるからね』
『はい!楽しみにしています』
🔸
『じゃあ邪魔になるだろうから私はもう帰るわねじゃあね椎奈ちゃん仁のことお願いね』
『はい、頑張ります!』
母さんに頼まれたからなのか、とても気合が入ったように返事をしている
『うん!お願いね、あんたも椎奈ちゃんに甘えすぎないで自分のことは自分でちゃとしなさいよ』
『わかってるよ、それに条件は満たしてるだろ?』
『そうだけど、まぁわかってるならいいわ二人ともまたね』
『ああ』
『さようなら』
楽しそうに歩いて帰っている母さんを見送る
『いいお母さんですね仁くんとても楽しそうでした』
『そうか?』
『そうです』
『そうか、自分ではわからないのだがな』
椎奈が言うのなら不本意ながら本当なのだろう
『そうですよ、しかし先ほどおっしゃっていた条件とはなんですか?』
『ああ一人暮らしするにあたっての条件だよ、成績向上と維持、年に数回でもいいから実家に帰ること連絡することだ』
『なるほどです。しかしちゃんとした体調管理も大事ですよ?』
『わかってるよ』
『であればいいのです。さ!朝ごはんにしましょ』
そう言って家の中に入っていくそしてまたいたずらをするような顔になる
『おかえりない、仁くん』
その新婚のような態度に俺の胸は跳ね上がる
『………ああ、ただいま』
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