第11話 服屋へGO

🔸

『あの仁くん』


昼食を食べ終わり教室に向かっている途中に椎名に話しかけられた


『あの突然で申し訳ないのですが私お友達と遊ぶための服がないのです。』


これは意外な言葉が出てきて面食らってしまう


『?でも俺と会った時ちゃんとした服着てたじゃないか』


『あれぐらいしかないのです』


発言をミスってしまった、そうだ持っているのならこんなことは言わないはずだ


『そうかすまん、それで?』


『はい服が欲しいのですが…今日の放課後、一緒についてきて欲しいのです!』


『え?俺がか?俺より愛佳の方がいいと思うんだが』


実際に俺よりも愛佳の方が女性者の服にしてもいろいろ知っているだろう、てか俺が知っていたらそれはそれで気持ち悪い


『いえ…この間のことで一人で出かけることに抵抗が、それに愛佳さんと一緒でも少し怖くて、それに仁くんがいいのです。』


そんな言い方をされてしまえば断ることができない


『わかったよ、でも俺にファッションセンスを期待しないでくれよ?』


『大丈夫ですよ、仁くんを信じていますから』


その自信はどこからやってくるのだろうか


『なになに、なんの話?なんの話?』


前の方で利寿と話していた愛華が話に入ってきた、利寿はどうやら別の友人達につかまっているようだ、しかしタイミングよく愛華が来てくれた


『椎奈と放課後に服を買いに行くんだ』


『あ〜、さっき言ってたやつね。そうだ私いい店知ってるからそこに行くといいよ、店員さんのセンスが良くていい服ばっかりなのにお手頃価格なの!』


『そうなのですか?分かりました、そこに行ってみます!ありがとうございます。とっても楽しみです!』


『店員の女の人に私の紹介だって言ってみな?多分融通してくれるよ?』


『店員とどんな関係なんだ?』


愛佳の名前を出すだけで融通してくれる店とは


『私のお兄ぃの奥さんがやってる店なの、そのお姉さんがね……いい人なんだけどね、うん』


なるほどそう言う理由なのか、そして最後の反応はなんなんだ?


『分かった今日尋ねてみるよ』


🔸

『じゃあ行くか』


『はい!』


学校から愛華の紹介の店に向かう家とは反対方向なのだが暗くなる前に帰れば大丈夫だろう


『ふふ』


『どうした?』


『いえ!この間までこのようにお友達と一緒に放課後、どこかに行くなど考えてもいなかったなと思うと、人生何があるかわからないなぁーと考えたら面白くて』


『確かにな俺も…こんなに楽しいのは久しぶりだ』


『仁くん?』


『…!いやなんでもないよ、お!あれじゃないか?』


ちょうど服屋に着いた、シックな感じの外見に【asaba】と書かれた看板に窓際に猫が寝ている、置物かと思ったらちゃんと動いている真っ黒な毛並みと青っぽい瞳の不思議な猫だ


カランカラン


『いらっしゃい、あらこれまた初々しいカップルだこと』


『いえ俺たちはそをいう間柄では…』


『あらそうなの?お似合いなのに』


ニコニコとしているが俺たちを値踏みするような視線で全身を見てくる


『…あの、私たち柊 愛華さんの紹介でこのを店を知ってきたのですけど…』


『まぁ!愛ちゃんの!!それはそれはあなた達愛ちゃんのお友達?』


『『はい』』


さっきまでの営業スマイルからいっぺん急に親しい友人と接するようなラフな笑顔になる


『ふふじゃあ目一杯サービスしないとね!私の名前は浅羽律あさば りつっていうの、さぁいらっしゃい!今日はどんな服をお求めで?一通り揃っているから、なんでも言ってね!』


『今後友人と遊んだりする機会が増えるようなのでラフだけどしっかりした服が欲しいです。』


『なるほどねそれだったらこれとこれ、あとこれを合わせて…あとこれね!』


要望を言われた瞬間ぽんぽんと服が出てくる


『よくそんなに直ぐに出てきますね?どんなものがあるか把握してるんですか?こんなにあるのに』


『ええ、だいたいだけどね〜、それにあなた達見た時からコーデしてみたかったのよ。二人ともとってもいい素材してるからね、だから少し変な視線を送ってしまったのごめんなさいね?身内にも程々にってよく言われているのだけどこれが性分だからね〜』


素材云々はともかく俺たちを値踏みするようにみていたのではなく俺たちにきて欲しい服の想像をしていたらしい


『なんかすいません』


『いやね〜、謝らないでよ私が悪いんだし、うーん彼氏くん?ちょっときて、これとこれどっちが合いそう?』


『彼氏じゃないです。てか、椎名に聞くべきじゃ?』


浅羽さんが持っているのはベルト付きのワンピースにゆるい感じのセーター


『仁くんの意見も聞かせてください、参考までに』


『と言われてもな』


『なんでもいいんだよどっちが似合いそうでとか目的に合いそうだとかでもさ』


椎名にも言われてしまったし店員さんにもアドバイスをもらってしまったため言うしかなさそうだ


『そうだな…ワンピースの方は大人っぽくて清楚な感じが椎名によく似合っている、椎奈は小柄だがワンピースでも全然いけそうだ。しかし、今回の目的の勉強会にはどうだろうかと感じてしまう、セーターはまだ少し寒い時期だから大丈夫だし軽い感じだから勉強会にも椎奈の優しげな一面の雰囲気ともマッチしている柄だからいい感じだ、しかしワンピースも捨てがたい……』


『もっ!!もういいです!…………店員さん両方ください』


『……………まいどありー』


(やってしまった、つい母さんや妹に付き合わされる時に求められる感想と同じテンションで話してしまった。)


椎名の俯いたままの姿や浅羽さんからのなんとも言えない視線にとてつもない自己嫌悪の感情が襲ってくる


『あの…椎奈すまなかった男にこんなことを言われても嫌だったよな』


『もう、なぜそんなことを言うのですか、……い、嫌じゃありませんしかし次からは手加減してくれるとありがたいです。』


二の腕あたりをポカポカと小突かれながら椎奈の言葉を聞き安堵する


『ああ、気をつけるよ』


『あのぉそろそろ次行っていい?』


店員さんのことそっちのけで話してしまっていた、反省しなければとしみじみ思うのだった


🔸

『さてお嬢さんの分は終わりね!』


『はい!ありがとうございました』


結局あのあと椎名の服は俺抜きで決めることとなった、理由を聞いたら「またほめ殺しされたら時間足りなくなるから」だそうだ、げせぬ


『よし次少年の番だね』


『その少年ってやめてくれません?てか俺の分まで?』


彼氏くんの呼び方をやめてもらうのはいいのだが高校生にもなって少年は恥ずかしい


『君は注文の多い男だな。てか君、多分お嬢さんと一緒であんまり服持ってないでしょう』


『………』


『少年、沈黙は是なりだよ?休憩の時愛ちゃんに聞いたんだけど君友達少ないんだね』


慰めるような目で見られてしまう。どうやら少しの休憩時間に愛華と話したらしく俺のことがリークされていたらしい


(愛華のやつ勝手に…説教が必要のようだな)


『てことであんまり服持ってないでしょう?だからお姉さんが選んであげましょう!』


『お姉さん??』


『………何かな?少年、言いたいことがあるのならなんでもいいたまえ!ん?どうした?ほら遠慮なく話しなさい怒ったりしないから、さあ』


『いえ、服の選定よろしくお願いしますお姉さん』


『仁くん…』


(本当に俺は地雷を踏むのが得意のようだ、だからと言ってそんな怖い目で見ないでくれ二人とも)


🔸

『よっしゃ、こんなもんだろ』


『ありがとうございます』


俺の服の選ぶ時間は俺の決断の速さと店員さんのアドバイスでずくに終わり椎奈の四分の一以下の時間で終わってしまった


『構わんさ私も楽しかったしな!よし!会計はこんぐらいです』


『『え?』』


身内の紹介だとしても通常考えるよりかなり抑えられた値段を掲示されてしまう


『あのこれはさすがに』


『そうです!この値段は…』


『いいのいいの愛ちゃんのお友達ならしっかりとサービスしないとね!』


『あの愛華とはどう言った中で?愛華の兄の奥さんだとは聞いたのですが』


『私ね昔からすっっっごく妹が欲しかったのそして今の旦那と結婚して妹がいるのを知ってとっても嬉しくてね、今までの反動からか溺愛しすぎちゃったのかちょっと距離を置かれてるんだけどね〜』


(なるほど愛華のあの反応はそのためか)


どうやら愛華は猫可愛がりされるのが苦手のようだ、でもあの様子なら本当に嫌ってはないのだろう


『でもあの子のお友達なら私はサービスしたいのよそれにあの子、お友達にこの店を紹介するのは初めてなのよ?』


この発言には俺も椎奈もびっくりした軽い感じで教えられたものだったから、しかしこれは愛華が俺たちを信頼してくれている証拠だろう椎奈も同じことを思ったらしくとっても嬉しそうだ


『それでも二人がこの値段に気が引けるのならこれからももっとあの子と仲良くしてあげてそれだけで私は満足だから』


『『分かりました』』


『うんよろしくね!』


浅羽さんの気持ちに温かくなる俺たちだった


『しかし利寿のやついつも私服のセンス良かったがこんなところで買ってたなんてな』


利寿と遊ぶ時いつも私服がファッションモデル並みに良かったのはあいつもこの店で買っていたからなのだろう


『誰?利寿って』


『え?』


『え?』


『愛華の彼氏ですよ』


(え?まさか言っていないのか?)


『少年その話詳しく…………』


『じゃあ俺たちはこれで、今日はありがとうございました〜。行くぞ椎奈』


『待て!少年話はまだ終わってないぞ!』


『椎奈、行こう!』


『は!はい!』


鬼の形相で俺たちを追いかけてくる店員さん、あまりの恐怖に椎名の腕を掴み逃げてしまう


(なんかデジャブなんだが、そしてすまん二人とも)


心の中で愛華と利寿に謝罪して椎奈と急いで帰路につくのだった。

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