第7話 最強師匠、翌朝に騒ぎ
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夕方、今日は道場に行く日だったので家に帰り軽くシャワーを浴びて30分ほどの距離を走り道場に向かう
『こんばんわ』
『おお!きたか!仁、今日こそ俺からいっぽんとって見せろ』
豪快な声を出して俺に話しかけてくるこの人は俺の師匠で
『おい、お前今俺のことバカにしたな?今日は起き上がれなくなるまで投げ飛ばしてやる』
『えぇぇ』
ドン!ドン!!バン!
(まじで起き上がれん)
『どうした?今日はなんだか上の空だったり急にやる気出したり』
『え?そうでした?』
自分では全く気づきもしなかったがどうやら気が散っていたらしい
『なんだ?気づいてなかったのか集中しろよ〜私は変に手加減できんのは知ってるだろ?ちゃんとやらんと怪我ですまんぞ』
『はい!』
結局いっぽんも取れず畳の上を転がり続けるのだった
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『はっはっはっ』
『お疲れさん、今日もダメだったな〜まぁ惜しいところは何回かあったがな』
涼しい顔をして飲み物を渡してくる師匠、相変わらずこの人の体力と技術は化け物級のようだほとんど汗をかいていない
『最初の方はどうかと思ったがちゃんと最後は集中できていたな、しっかしお前が集中できないなんて初めてじゃないか?…女でもできたか?』
小指を立ててそんなことを言う師匠、ニヤニヤ揶揄うように俺をみてくる
『そんなんじゃないですよ。ただ考えを改めさせてくれる出来事があっただけです。』
『そうか、その出来事がお前にいい影響になることを祈ってるよ』
ぐしゃぐしゃと俺の頭を撫でる、この豪快さと優しさに何度も助けられた
『ありがとうございます』
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『じゃ、お先に失礼します』
『おう!またな!ああ、 ちょっとまてお前ちゃんと飯食ってるか?前に投げた時より軽かったぞ?一人暮らしならしっかり自炊しろよ!』
痛いところをついてくる、俺は家事全般はできるが唯一料理だけが苦手だったりする。
『わ、わかってますよ』
『本当か?早く料理してくれる嫁捕まえろよ〜』
『そんなのまだまだ先の話ですよ。てか、俺より師匠が先でしょ?』
『私より強い奴がいればな!』
とってもいい笑顔で返してくるけどそんなの一生無理だろうと密かに思ったのだった
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翌朝体の痛みに耐えながら支度を済ませていつもの通学路を通る
(あんな休日を過ごしたのは初めてだったな)
『いよ〜〜〜っす』
ドン
一昨日のことを考えていたせいか昨日の訓練のせいのかおもっいっきり投げ飛ばしてしまった
『す、すまん!大丈夫か!利寿!』
『いっつつ、今日もダメでとうとう投げられちまったか〜だか!俺は諦めん』
痛そうにしててもとても元気そうな利寿、結構大丈夫そうだ
『だからやめろと言っただろうに、まぁ俺も悪いんだが』
『いや!俺はお前に抱きつくことを高校での目標にしているんだ!』
堂々とガッツポーズをして言ってくる、しかしその情熱はどこからくるのだろうか
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『それにしても俺に気づかないで投げ飛ばすなんて珍しいな!なんかあったか?例の女王様?』
『そんなんじゃない』
『ふぅ〜んしっかし全く連絡がなかったから心配したんだぜ?』
(確かにあの後利寿に連絡入れていなかったな)
『悪かったな連絡入れなくて』
『いいさ、治って何よりだよ』
(本当にいい奴だ)
二人してくだらないことを話したり利寿の休日の話を聞いたりしていたら学校の前に着いた
『今日は愛華来なかったな』
『ああ、愛華はさっき夢の国から帰ってきたばっかりだってさ』
『なるほどな』
どうやら先ほど起きたらしい二限目には間に合うといいのだが、そんなことを考えていたら校門で人垣ができていた
『なんだ?あれ』
『さぁ有名人でもいるんじゃ?』
『気になるから見に行こうぜ』
『俺はいいよ』
『行くぞ!』
『あっおい!』
俺の腕を引っ張り強制的に連行される、なんだが知らないがかなり嫌な予感がする
『おっありゃ』
『っ!』
そこには黒い黒髪をなびかせピッシリと毅然とした態度で立っている椎奈の姿があった
『女王じゃねえか誰か待ってんのか?でも彼女が誰かと一緒にいるの見たことないが』
そうなんだろうか、最近彼女のことを知った身としてはそうなんだ程度の感情しか
湧いてこないし優しいあいつがなぜ?とは思うがそうしていると椎奈がこっちを見て顔を綻ばせるさらにこっちに駆け寄ってくる
『仁くんおはようございます。一昨日ぶりですね!体は大丈夫ですか?あの後道場に向かわれたのですよね?病み上がりなのですから無茶をしてはいけませんよ?あっ!そうだ今日のを昼はご一緒しましょう!ね!』
『いや、あのだな』
元気いっぱいに俺に詰め寄って話す椎奈、話すのはいいのだが体制が悪いほぼゼロ距離で話しているそしてとてつもなく注目を集めている
『椎奈ちょっと落ち着け近い近いそれと周りを見ろ』
『…あぅぅ』
周囲を見渡して注目を集めているのを理解して真っ赤になる
『あの…それで今日のお昼は』
顔を赤くしながらも聞いてくる
『あぁえーと』
『私とご一緒するのは嫌なのですか?』
しょぼんとくらい顔に急転落する。そして俺の心に大ダメージを与える
『そんなことはない!ただ俺と一緒でいいのか?』
『私が一緒がいいと言っているのです。その、お友達ですから!』
『…わかったじゃお昼に』
『はい!』
了承の旨を伝えるとさっきまでの悲しい雰囲気が霧散し一気に明るい雰囲気になった
『ではお昼頃に伺いますね!楽しみにしています!』
『ああ、あとでな』
挨拶をして学校に入っていく椎奈なぜかこっちを見て手を振ってくるので振り返せば嬉しそうにしてくれる
(どうせ昼は一人だし大丈夫だろう…問題は)
『どどどどどお言うことだお前』
『なんで如月さんとあんな親しげに⁉︎?』
『まさか、付き合ってるのか?』
『許さん!!!許さんぞーーー!』
『神よぉぉぉぉぉぉ!!なぁぜー!!』
(朝から騒がしい連中だ)
『行くぞ利寿』
『おっ、おぉ』
🔸
『それで?』
教室に行き席に着いた途端和彦からの尋問が始まったとりあえず誤魔化しておく
『それでって?』
『ごまかすな、あんなに友人を作るのを慎重になっていたお前がこの短期間で友人を作る、何かあったと思うだろ』
そりぁそうだ、去年から俺を知っているこいつなら確かに疑問に思うだろう
『ちゃんと説明するがここだと人目につくから帰ったら電話でいいか?』
周りを見ると話に入ってこないだけでチラチラ俺らの話を盗み聞きしている連中がいると言うか全員だ
『わかった、ただししっかりと説明してもらうからな!』
『ああわかってるよ』
🔸
『えぇ!そんなことがあったの〜?!私も見たかった〜なんで今日に限って寝坊しちゃうんだろう〜』
『今日だけじゃないだろ』
『やぁ〜ん、仁しんらつ〜』
愛華は結局二限の終わり頃に来た休み時間にこっちに来ている
『それにしてもあの椎奈さんとそこまで親密になるなんてね〜やるじゃん!もう付き合ってるの?』
急に爆弾を投げてくる
『それは帰ってから電話で話す』
『えぇ〜今聞きたい〜』
『愛華、さすがにここでわ話せんよ仁の気持ちもくんでやれよ』
『ぶぅぅ』
『それより早くいけよせっかく来たのに三限も遅刻するつもりか?』
『やっば!じゃーまたね〜』
ダッシュで教室を出ていく、すぐに先生の怒号が聞こえたので叱られてしまったようだ、自業自得だが
ガラガラ
『おぅ!授業は始めるぞ!と、その前に戸条!お前朝騒ぎ起こしたらしいな放課後職員室にこい生徒指導の先生から私も怒られたんだぞ?』
笑顔ではあるが額に青筋を浮かべている先生、これを何も言わずにキャンセルしたらまじやられそうだ
『はい…………』
やっぱり俺と先生の会話で笑ってるのは利寿だけだった
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