第5話

(状況を整理しよう、昨日ご飯を食べて寝てしまい起きたら隣で如月が寝ている…………うん、なんで?)

昨日、帰ると言うのを確かに聞いたはずだが、どうやら眠たくなってしまったのか机につっぷしたまま寝てしまったようだ。

(とりあえず起こすか)

そを思い如月に近づこうとした時

『ぅん、ぅぅん〜』

(なんだこれ、可愛すぎる!)

いつもの凛とした雰囲気の面影はなく、子供のようなあどけなさがある可愛らしい顔があった

(これを起こすと言うのはちょっとな〜)

そんな俺の葛藤を知らんと言わんばかりに爆睡する如月さん。しかし、休日とはいえ女の子を家に上げたままはよろしくない

(起こすか)

『おーい如月さん起きてくれ。』

反応がない、悪いとは思いつつ肩に触る

(ほっそ)

折れてしまうのではと思うくらいの細さだった

『如月さん起きて!起きてくれ』

『…んん、……あれ?なぜ戸条さんが?』

寝起き特有のゆるい顔をみるみる赤い顔に変えていく

『え?え!?ま、まさか私、私!』

どうやら如月さんも気づかずに寝てしまったらしくすごい慌てようだ

『とりあえず落ち着け如月さん、昨日俺が寝てから何があった?』

少し冷静さを取り戻した如月さんが顔は真っ赤のまま話し始めた

『昨夜、食器などの片付けを終えて帰ろうとしたのですが。戸条さんが暑そうになさっていたのでタオルをお借りして寝れタオルを作り額に乗せたのです。そして少しゆっくりしていて戸条さんの寝顔を見ていたらいつの間にか…』

(寝顔?なんで?)

そんな疑問が浮かんだが今は関係なかった

『とりあえず親御さんに連絡してくれ』

『そうでした!ちょっと失礼します』

電話を始める如月さんだいぶ焦っている様子だ

『もしもしお母さん?はい…はい…………ごめんなさい今帰ります』

どうやらだいぶ怒られてしまったようでしゅんとした顔をしている、この顔を見ると罪悪感がありありと湧いてくる

『如月さん、俺も家に連れて行ってもらってもいい?』

『へ?』

『俺のせいでこんなことになってしまったからな、説明のために俺も連れてってくれ』

『い、いえ悪いのは私ですから』

『いや、俺もちゃんと謝りたいんだ。だから、お願いします』

これは俺のけじめであり精一杯の感謝なだ、だからここは譲れない

『わかりました、でも病み上がりなのですから無理は''め!''ですよ?』

なんとも可愛らしい子供に言い聞かせるような注意をする如月さん

『わかったよ如月……あ!いやーあー如月さん』

つい呼び捨てで読んでしまい焦ってしまった

『すまない、嫌だったよな』

そんなに交流のない男からいきなり呼び捨てにされてさぞ嫌だっただろう

『なぜそうなるのですか。戸条さんなら、別にいいです。その代わり私も    戸条‘くん’と呼びます!』

『あ、ああ別に構わないよ』

俺が承諾の旨お言うと笑顔を綻ばせる如月

『き、如月』

『は、、はい。戸条くん』

『……』

『……』

『そ、そろそろ行くか!?』

『そそそ、そうですね!』

2人とも居た堪れなくなり話を逸らしてしまう

『着替えてくるからここでゆっくりしていてくれ』

『はい、わかりました』

パタン

(は〜〜、やっちまった。風邪をひいて意図的ではないとはいえ如月を家に止めるとは)

とてつもない後悔が押し寄せ、自分を嫌悪してしまいその場に座り込む

(…覚悟を決めよう、しっかりと謝るんだ!)


『すまない待たせた』

『いえ大丈夫です。では、行きましょう』

玄関を開けて歩き出す。

『ここからどれくらいなんだ?』

『だいたい、歩いて5分ぐらいですね』

意外と近かったようだ

『『…あの』』

かぶってしまった

『どうぞ』

『戸条くんは一人暮らしなどですか?』

『今はな』

『今は?』

(結構ぐいぐいくるな‥まぁ、これぐらいならいいか)

『前まで両親と妹と住んでいたんだ』

『…………すみません』

?どうやら不幸があったと取ってしまったようでとても落ち込んだ顔をしてしまう

『勘違いさせてしまったな、両親と妹は今は他県にいるんだと言うより俺がこっちに越してきたんだ』

『そうだったのですか、何故こちらへ?』

越してきたといえば間違いなくこの話になるとは思っていたが、どう返したものか悩んでいると

『大丈夫ですよ!無理に教えて頂かなくて!』

『すまない…』

『いえ、私が悪いのですから』

二人とも沈黙してしまう

『戸条くんのお話はなんだったのですか?』

『いや、服装大丈夫かなと思って』

『大丈夫ですよ。‥か、かっこいいです』

『あ、ありがとう』

急にそんなことを言われ顔に熱が集まるのがわかる、横を見れば如月も真っ赤に染めていた。


『ここです』

『‥すごいな』

『そうですか?』

如月の家はマジですごかった、和風の様式に綺麗な庭、池、丁寧に手入れされた木など、純和風のしきたりのありそうなしかし古臭さは感じさせないそんな家だった

ガラガラガラ

『ただいま帰りました』

如月がそを言うと人が出てきた

『お帰りなさいませ、お嬢…さ‥ま』

如月の姿を見ると急に固まる人、お嬢様と呼んでいるしお母さんではないようだ

『ただいま、葉月さんこちら私の…友人でいいんでしょうか?』

俺を紹介しようとして質問してくる

(まぁここまで関わってしまったし…如月なら大丈夫だと思いたい)

『如月がいいなら友人でいいよ』

返事を返すと花が咲いたように笑顔を見せる如月

『友人の戸条 仁くんです!』

上機嫌に俺を友人と紹介する、しかしまだ固まったままの葉月さん

『葉月さん?どうしました?』

如月に声をかけられハッとする葉月さんそして

『奥様!奥様!!』

叫ぶ葉月さんそして一人の女性が出てきた、凛とした眼差し綺麗な黒髪をだんごにして纏めている、如月が大人になればこうなると思えるような人だった

(綺麗な人だ、てか若っか!姉と言われても信じるぞ!)

『どうしたの?大声を出して椎奈が帰ってきたのでしょ…う。……………』

葉月さんと同じようにこちらを見て固まる

『ただいま帰りましたお母さん、こちら私の友人の戸条 仁くんです』

『どうも初めまして、戸条 仁です。如月さんにはお世話になりました』

『お母さんこの方が話した‥お母さん?』

こちらを見ているのに遠くを見ているような顔になりぼー、としているお母さんの後ろでニヤニヤしている葉月さんよくわからない

(どうなってるんだ)


『粗茶ですが』

『いえお構いなく』

『それでこれはどを言うことなのかしら?』

ニコニコと笑ってはいるが目が全く笑っていないお母さん

『お母さん、それより自己紹介』

問い詰められていた俺に助け舟を出してくれる如月

『…そうね、私は如月 和世です。』

『改めて俺、私は戸条 仁です。今回のことを説明します』

『戸条?まさか‥』

『あの?』

『ああ、なんでもないわ続けて』

『はぁ』

俺は経緯を話した。傘を貸したこと、そして風邪をひいたこと、その看病に如月が来てくれたこと。無意識に寝てしまったこと

『なるほど、理解しました。…戸条さん娘が迷惑をかけました』

そを言って頭を下げる和世さん

『頭を上げてください!今回のことはお、私が悪いんですから!』

『いいえ、傘を借りたのは娘でそのお礼をするのはいいとして、眠りこけてしまったのは娘です。それをあなたが謝罪するのは違います。』

『いや、しかし』

『そうですよ』

『如月』

俺と和世さんの会話に割り込んできた如月その顔は真剣そのものだった

『悪いのは私なんです。ですから戸条くんが気に止むことはないのです。わかりましたか?』

『でも…』

『わかりましたね?』

有無を言わさない鋭い目と口調に逆らえなかった

『‥はい』

『よろしいです♪』

(なんか最近の俺ものすごい女の人に負けてる気がする。しかし)

『ありがとう如月』

俺のためにここまでしてくれたことに感謝したかった。

『さぁ?なんのことです?』

笑って答える楽しそうな如月、また俺の目はその笑顔に釘付けだった

『あらあら、フフフ』

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