第3話 雨のち風邪
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『彼女なんだよ昨日助けた女の子って』
『マジ?え?マジで?』
『本気と書いてマジと読む、てかそんな嘘ついて何になるって言うんだよ』
『マジなのか〜、それにしてもよくあの如月さんに拒否されなかったな〜、すげーな‼︎』
『……‥そんなんじゃないよ、助けに入るような変人が俺ぐらいしかいなかっただけのことだよ、必要に駆られてってだけだ』
そう、男嫌いらしい彼女が俺と少しでも一緒にいたのは必要に駆られて、つまり、仕方がなくというだけなのだろう。そうでなければ意味がわからない
『わかんねーぜ?お前のその優しさに気づいたのかもしれないぜ?やったな!これで仁にも春が来るな!』
『それこそありえんさ、俺なんかを恋人としてすいてくれるやつなんていないさ』
(何でそんなに自分のこと卑下するんだよ)
如月さんが学校の有名人という事実に驚いていて後ろにいる利寿の顔は見えなかった。
🔸
『如月さんね〜、いい子だよ?男子には結構きつい態度だけど先生には結構普通だし、事務的なことだったら普通に話してるし』
『ふぅーん、普段あんまって言うかほぼ関わらないからよく知らないんだよなー』
昼休み、何故か俺の机の周りによって弁当を広げている利寿と愛華。話題は俺が偶然助けた如月椎奈の話だった
『とゆうか、お前らなぜに俺の机で飯を食ってるんだ?』
普段二人で飯を食ってるはずの二人が俺の席に急に来て弁当を広げて食べ始めた、そして如月さんの話をし始めた。
『なんでってあんな面白そうな話し聞かされて黙ってるわけないでしょ?』
『そうだぞ?如月さんにそこらへんの男が近づいたってならあまり気にしないけど、お前が他人に、しかも女の子に関わるなんて、今日か明日は雪か?』
朝の俺みたいなバカな事言ってる、それにしても、昨日助けた女の子がまさか同じ学校のそれも、かなりの有名人だったとは流石に驚きだ
『でも如月さんのことを知らないなんて流石、人間嫌いの仁だね。ほんとブレないよね〜』
『人間嫌いなんじゃない、人と関わることに慎重になってしまうだけだ』
『何でそんなに慎重になっちゃってるの?何故に教えてくれないの?ねぇねえー』
『愛華』
それ以上は踏み込むなという気持ちを込めて少し強めの声色と目線語りかける。悪いとは思うが睨みつけることで黙ってもらう
『ご、ごめん、踏み込み過ぎた』
少し暗い空気になってしまったが、流石にこれ以上は踏み込んで欲しくない…
『……まぁまぁ、いいじゃんいいじゃん、それよりあっちはどうなんだろな?お前のこと気づいてるのかな?』
空気を変えようと利寿が気を引いてくれる、正直言って助かった
『…どうなんだろうな、きっと覚えていないさ』
『聞いてみようか?同じ教室だから』
どうやら愛華と如月さんは同じクラスのようだ、確かに妙に如月さんのこと詳しかったが。
『いいよ、どうせ俺もあっちも覚えていても覚えていなくても生活は全く変わらないさ』
変わらない、俺が覚えていようがいまいが、彼女が覚えていようがいまいが俺たちの関係は変わらない
🔸
き〜んこ〜んか〜んこ〜ん
『はい、今日はここまで気をつけて帰れよ〜部活のやつはがんばりな!じゃあ、解散!』
ガタガタ
『今日はどうする?道場あるのか?』
学校が終わり俺のそばに利寿がやって来た一年以上の付き合いなので多少は勝手知ったる中だがしっかりと確認する
『いや今日は道場はないが、家のことしなくちゃならなくてもう帰らないといけない』
『そうか、じゃまた明日な‼︎』
そう言って愛華と合流して行く利寿、その時ぽつぽつと雨が降ってきたそれは次第に強まってかなり強めの雨になってきた
(朝くだらないことを考えていたお陰で傘を持ってきてたから濡れずに帰れそうだ)
玄関について靴を履き替え帰ろうとした時だった
『…どうしよう』
隣から消えいりそうな微かな声が聞こえた、そこを見るととてつもなく困っていると言うふうな顔をした【鉄壁の撫子】こと如月椎奈がいた
(どうしようか…あまり関わりすぎるのもよくないんだがな、まぁ昨日も助けちゃったしな)
わずかな葛藤ともう今更だという開き直りにより話しかけることが決定した。
『昨日ぶりだな』
他人に、それも女の子に話しかけるなどないに等しいため緊張してちょっと敵視したような物言いになってしまった。声をかけてすぐ後悔
『昨日の…』
ちょっと驚いたような顔をしてすぐ困ったような顔になる
『何かようですか?用がないなら話しかけないでください』
と思ったら急に不機嫌そうな顔つきになり、怖いくらい拒絶されてしまった。どうやらこの対応が【鉄壁の撫子】と呼ばれる要因のようだ。
『傘ないんだろ?これ使え』
そう言って自分の鞄から折り畳み傘を取り出して差し出す。しかし
『結構です、別に困ってませんから』
バッサリと切られてしまった。
『そうか、本当に困ってないんだな?』
『…‥…』
図星を疲れたような顔をして俺を睨みつける彼女、そんな顔されると自分が悪いみたいな感じで罪悪感がはんぱない
『本当に困っていないならいいが、困っていて好意を受け取らないのはただ意地だ、それにこれ以上悪いことになったらどうするつもりだ?』
『…でも』
ここまで言って何を躊躇するのだろうか?
(‥‥そう言えば)
昨日の会話を思い出し、彼女がなぜここまで渋るかを理解した。
『借りを作るのが嫌なら、明日傘返してもらう代わりに適当に自販機でコーヒーでも買ってくれ。それでチャラにする。約束だ。これでどうだ?』
『……わかりました、今回はご厚意に甘えます。ありがとうございます明日、明日必ず返します‼︎』
何故そこまで意地になるなかよくわからんが、受け取ってくれるようでよかった
『わかった明日な』
『はい、では明日、ありがとうございます。』
そうしてぱちゃぱちゃと音をたてて帰っていく彼女
(さて、どうやって帰ろうか…やっぱ濡れて帰るしかないのか)
目の前で降る土砂降りの雨を確認し、とりあえず教科書などを持っていたいたビニールに入れ、覚悟を決め薄暗い寒い雨の中を走り出した
🔸
『ごほっごほっ』
翌日見事に風邪を引いた。とりあえずこれ以上悪化する前にやることをやらねばと思いスマホを手に取る
『もしもじ先生?』
『おー!どうした?戸条ひっどい声だぞ?風邪か?大丈夫か?』
声を聞いて風と判断したのだろう、話が早くて助かる
『はい、ということで今日は休ませてください』
『おー了解、病院はどうする?お前一人暮らしだろ?先生が連れてこうか?』
好意なんだろうけど流石に思春期的に現役女教師に病院に付き添いさせるのは‥
『いえ結構ですよ、薬もありますし熱もそこまで高くないので、それに拗らせた人に襲われても嫌なので』
『……』
自分の考えを悟られたくなくて冗談を言った途端先生が黙ってしまった、そして言った内容に朧げな頭で理解して血の気が引くのを理解した
『先生今のは頭が朧げでして本心では全くなくてですね?…』
『戸条‥』
『はい』
『今日は風邪を引いているようだから許すが……次、同じことを言ってみろ?お前の存在はこの世から消えるからな…』
"本気で次はない"と言うような声色で脅してくる先生、マジで怖すぎる
『肝に命じます』
『よし、とりあえず今日は休め、ひどくなるようだったらまた連絡しろ病院に連れてってやる』
『分かりました、失礼します』
ポチッ
プルルルル、プルルルル、
先生との会話を終え電源を切りスマホを投げようとした瞬間にまた新たに電話がかかってきた熟練のボッチの俺に連絡をするやつは限られる。その中でこの時間にかけてくるやつは必然的に絞られる
ピッ
『利寿か?どうした?』
『おー出た出た、どうした?酷い声だが、風邪か?どうりで時間になってもこないわけだ』
どうやら俺が時間通りに学校へ行かなかったから余計な心配をかけてしまったようで、律儀にも電話をよこして確認してくれているらしい
『あぁ、ちょっとな、別に心配するほどのものでじゃないから気にしないでくれ』
『そうか?キツそうならすぐ電話しろよ?真っ先に駆けつけるからさ‼︎』
『ふっ、休むきっかけが欲しいだけだろ?』
心配されたことが照れ臭くてついそんなことを言ってしまう
『ははは、そんなことを言えるんだったら大丈夫そうだな!愛華も心配してるからよ![ちょっと‼︎]じゃぁ、しっかりと休めよ!また明日な!』
電話の向こうから愛華の声もしていた本当に心配してくれているようだ
『あぁ、また明日』
電話を切ってすぐベットに倒れ込むように横になり目を閉じる
(明日には治ってるといいなぁ)
🔸
ピンポーン、ピンポーン
玄関の呼び出し音が鳴り、目を覚ます
(今何時だ?)
スマホを確認したら17時半ごろだった
(もうこんな時間か)
ピンポーン
そういえば人が訪ねてきてたんだった、気怠げな身体を起こし玄関へ向かう。その途中、足取りがかなり悪く転びそうになりながらも動く
(これは、朝よりひどくなってるかもな)
ピンポーン
『はいはい、今出ますよ』
ガチャ
『は?』
扉を開いて来客を確認したら以外すぎる人物がいてすっとんきょうな声を出してしまった、そこには一昨日、昨日と助けた如月 椎奈が立っていた
『昨日の借りを返しに来ました』
『なっ!なんでここに‼︎?てかどうやってここが?』
本当に何でここに来たのだろうか不思議で仕方がない、というかどうやって家の住所を知ったのだろうか、‥何だかレベル30の人が高笑いしている場面が目に浮かぶようなんだが?…気のせいだと思いたい
『それについてはとりあえず中に入れてもらえませんか?詳しくはあなたが休んでからです』
(え?マジで中に入るのか?俺の家に?マジで?)
『いゃ〜でもなぁ、一人暮らしの男の家に女の子をあげるっていうのは』
『入りますね』
『ちょっおい』
(どうしてこうなった?)
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