第2話 なぜ彼女が!?

『今日はありがとうございました』

そう言って髪を風になびかせ笑う彼女、その光景に俺は‥


🔸


ピピピピ‥ピピピピ‥ピピ‥ガシャ!!


機械的な音で無慈悲にも俺を起こそうとする時計を叩きつけて睨みつけるように時間を見る


『もぉー朝か、くぁ‥』


いつも通りの時間に起きて着替えをし、身だしなみを整え軽い朝飯を食べる、といっても一瞬でエネルギーチャージができる飲料だが。


本当にいつも通りの朝だった‥昨日のことなど何もなかったかのように


(それにしても俺が誰かの夢を見るとは、今日は雪か何かか?)


なんて自分でもくだらいと思いながら支度をすませ家を出る。


🔸


さっき考えていたくだらない考えがまだ残っていたのか空を見上げて今日はだいぶ天気がいいな、などと考えていた矢先後ろから気配を感じ勢いよく振り向くと


『うぉ!!』


そこにはケラケラと頭の後ろで手を組みながら笑っている、俺の数少ない友人の風間利寿かざま としひさがいた


『いやー今日もダメだったか〜』


『利寿‥何度も何度も言うが、俺に飛びつこうとするな迎撃しそうになるだろうが』


『わりーわりー、許して?』


まったく悪びれもせず言ってくるこの男、明るめの茶髪で、サッカーをしているからか細マッチョ体型、明るい性格で俺なんかとも関わってくれる変人


『?…今失礼なこと考えなかったか?』


『いや?』


こいつは変なところで勘がいいから気をつけなければならない、なぜバレるんだろうか?俺ってそんなにわかりやすいのだろうか?


『…ふぅ〜ん、ま、いいや‼︎それより休日はどうだった?』


『なんら変わらないいつも通りの休日だったよ』


『かっぁー!枯れてるな〜高校生だろ?女の子と遊びたいとかないのか?』


女の子と言われ、一番最近あった女の子の彼女…如月さんが一瞬頭に浮かんだ


『…お前本当は女性関係でなんかあったろ、この休日中』


本当に無駄なところで勘のいい奴だな 


(まぁ、別に隠すことでもないか)


『………女の子を助けた』


しばらくしても返事が帰ってこず隣を見ると利寿がいなくなっていた、後ろを見ると愕然とした表情で固まっている利寿がいた


『どうした?大丈夫か?』


顔の前で手を振っても返事がない、ただの◯のようだと、くだらないことを考えていたら不意に俺の両肩を掴んで必死な形相で言ってきた


『大丈夫か?熱があるんじゃないか?!今日はもう帰れ俺が先生に言っといてやるから‼︎』


『ど、どうしたんだ!いきなり!』


『だって!だってですよ!?』


『おっはよ〜!』


暴れる利寿を宥めながら会話を試みようとした時に元気はつらつ、そんな声が後ろから聞こえた


『何してんの?二人して道の真ん中で?』


こいつは俺の友人であり利寿の彼女でもある柊愛華ひいらぎ あいかボーイッシュな髪型で天真爛漫、元気いっぱいと言ったような明るい性格をしている


『愛華!聞いてくれ‼︎仁が!あの仁が女の子を助けたって言ってるんだ‼︎』


『えぇ‼︎?ジン大丈夫??風邪はかかってすぐに対処しないといけないんだよ?』


『お前ら失礼だな!言いたい放題言いやがって!俺が他人を助けることがそんなに不思議か!』


『『当たり前だろ』』


『……』


まぁ、そうか教室では本を読んでいるか寝てるかの二択、友人といっても利寿か愛華以外誰とも関わらない俺が他人と関わった、それに助けたなんて行ったら異常を心配されるか…

普段の行いを思い返してぐうの音も出なかった


『熱はない、俺も自分で驚いているんだ』


『そ、そうか。まっ、お前が人と関わりを待とうとするのはいいことだな!うん!』


『そうだね、これを機に友達ができるかもよ?やったね!』


『俺は別に友達が欲しいわけじゃないんだが‥それに、お前ら二人がいれば十分だろう』


これは俺の本音だった、この二人意外に関わりを待とうとは今のところほとんど考えていない。


『…デレた』『…デレたね』


『デレとらんは!』


こいつらは〜〜‼︎


〔ジンってこをいうこと平然と言うよね〜〕


〔ね〜、普段はぶっきらぼうで、何考えてるかわからなくせにね〜〕


後ろでこそこそ話し始める二人


『もう知らん‼︎先に行ってるぞ』


『まぁ〜まてよ〜』


🔸


『じゃーまったね〜』


『あぁ』


『また後でな〜』


愛華とは教室が違うため別れる、ちなみに俺と利寿は、2年1組で愛華は2年4組だ


ガラガラ


教室のドアを開けて中へ入る、席まで歩いていると


『おはよう‼︎』『おっはー』『おはようさん!』


挨拶をしてくる、


『おはよう!風間くん』


もちろん俺にではなく利寿にだが…


『おっす‼︎おはよう』


ガタガタ


椅子を引き席に座って早速読みかけだった本の続きを読み始める、しっかし利寿は大人気だな‥俺には絶対に無理だな……


ガラガラ!


少しして勢いよく扉を開けて担任のか教師が入ってきた


『よっす!おはよう、みなのもの!いい天気だな‼︎元気かー?』


この馬鹿みたいに元気な教師は天真京子てんしん きょうこレベル30、婚活中、黙っていればとても綺麗な教師ではあるんだがいかんせん黙ってられない残念な教師


『戸条仁…お前今失礼なこと考えたろ?この後教務室に来い!説教だ!』


『えぇ…』


そんな会話を聞いて一人利寿だけはクスクス笑っていた


🔸


『先生俺は無罪です。ですから解放してください』


『ほう?じゃー何考えてた?無実というなら答えられるな?言ってみろ』


『……レベル30なのによくあんな元気に日々過ごせるなーと』


『ふん‼︎‼︎』


『うっ』


『次言ったらマジビンタな?』


『了解です…すみませんでした。』


頭が吹っ飛ぶかと思うぐらいのデコピンをされてしまった、女性の年齢のことは思うだけでもよくない、いい教訓になったな〜


『お前…またくだらないことを考えてるな?懲りないようだな』


『……めっそうもありません、全く微塵も考えてません』


俺の数少ない知り合い達はなぜこうも鋭いやつばかりなのだろうか?全員エスパーなのだろうか?


『まぁーいいだろう、さて本題だが』


『…?本題があったんですか?』


『話の腰を折るな、黙って聞け』


『わかりました』


ただ単純に疑問に思ったことを言っただけなのにとてつもなくドスのきいた声で言われてしまった。……こっわ


(うーんこの迫力、うちの師匠並だな逆らわないでおこう)


俺の中の心の逆らっちゃいけない人ノートに京子先生が改めて記載される


『もう一年もたつが同学年の奴らとはうまくやれているか?風間や柊と仲良くしているのはよく見るんだが。それ以外のやつとつるんでるのを見たことがないが?だいぶ心配なんだよな〜お前』


この質問は単純に驚いた、この先生に俺を心配する心があるとはだいぶ意外だ


『‥お前今意外だ〜なんて考えたろ?』


そう言って手を構える先生


『ちょっ、ちょっと待ってください‼︎確かに思いましたが意味が違います!俺のことを心配する人がいるとはっていう意味です!』


自分から人と関わらない俺のことを心配するような人は基本いない、利寿や愛華のようなイレギュラーを除けば先生くらいのものだ


『は〜お前なぁ、私のことをどう思っているのか知らんがこれでも一応教師だぞ?生徒の心配ぐらいする。』


『…そうですか、大丈夫です友達は二人もいますから』


『二人は"も"なのかはよくわからんが大丈夫ならいい、何かあればちゃんと相談しろ。』


『ありがとうございます。』


こんなふうに心配してくれるとは、結構いい先生なのかもしれない


『うむ!ところで好きなやつはできたか?』


(前言撤回、本当にいい先生なのか?)


ニヤニヤして聞いてくる先生を尻目にそう思ってしまうのは仕方ないだろう


『はぁ〜〜〜、いませんよ、俺にできるわけないでしょ?』


『なぁんだつまらん、面白くない!』


その言い分に少しむかっとしてしまいつい


『人の恋路より自分の恋路を心配した方がいいんじゃないんですかね?確か、もう少しでレベルアップするんじゃありませんでしたっけ?』


苦手な会話上位の内容を言われ不貞腐れて禁句を口走ってしまった、その瞬間顔面に強い衝撃が襲ってきた


『次はぐぅだ、覚悟しとけよ』


『すみませんでした………』


🔸

『失礼しました』


『おう!なんかあればまたこい』


ガラガラ


『よっ!』


戸を出てすぐ利寿が待っていた、わざわざ待っていたのか?暇なのか?


『何だ〜その顔は?せっかくこの俺が移動教室の教科書を持ってきてやったというのに』


ニカッと笑いながら俺の分の教科書とノート、文房具を持ち上げる利寿


(流石に悪かったな)


『すまんかった、道具サンキューな』


『いいってことよ!行こうぜ‼︎』


『ああ』


特別棟の教室まで行き、他愛のない会話をしながら歩いているとふと、目の端である見覚えのある人影を見つけた、そこにいた人物を見て驚愕した。ここ最近見たばかりの人影だったから


『何で‼︎あの人がここに‼︎?』


『どした〜?どした〜?』


驚愕して窓の方を凝視する俺の横で利寿も普通棟の方を見るとそこには昨日助けた彼女、如月椎奈の姿があった。


『お〜、【鉄壁の撫子】じゃん、何?お前も彼女のこと狙ってんの?意外だね〜』


『【鉄壁の撫子】?なんだ、その恥ずかしい二つ名みたいなのは』


『え?お前まさか……彼女のこと知らないの?マジ?え、マジで?』


信じられないものを見たような顔で俺のことを見つめる利寿。


『知らん』


『マジか〜、え?まじか?流石のお前でも彼女のことぐらい知ってると思ってたんだがな〜』


『有名なのか?』


『有名も有名、ちょー有名人さ!学年トップクラスの成績にあの大和撫子風な容姿、さらにお淑やかで器量よしときたもんだ、そりゃーモテてなぁー、告ったやつは年上年下同年代問わず数知れず!そのことごとくを完全拒否、そのとりつくしまもない様子から着いた渾名が【鉄壁の撫子】』


『へぇー』


彼女にそんな渾名があったとは、昨日の彼女からはあまり想像できないな


『ん?でも何で彼女のこと知らないのに、知った感じの反応したん?俺のことからかってる?』


『あぁ〜いや〜そのだな……』


俺が言い淀む姿を見てここぞとばかりに追い討ちをかけにくる


『悲しいぜ悲しいぜ!俺に隠し事だなんて、ぐすん』


見事なまでの嘘泣きをしてくる利寿、嘘泣きだとわかってても流石に少し良心が痛む…


『はぁ〜、わかったよ特に隠すことでもないしな。……彼女なんだよ昨日助けた女の子って』

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