君のためなら

@sitoketa

第1話 彼女との出会い

隣を歩き、ほほえむ君を見て俺は思い出す、君と出会ったあの運命の日を、そして君とのこれまでを……


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

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休日、家を出て日用品を買い『まだお昼まで時間あるな』なんて考え本屋に立ち寄った。漫画や小説などの新刊が発売されていないか確認し、別の面白い作品はないか探したりいつも通りの休日を過ごしていた。いつも通り、本当にいつも通りの日だった彼女を見つけるまでは。


『んぅ〜!んぅ〜!』


必死に高いところにある本を取ろうとする女性がいた、普段なら見ず知らずの人のこんな場面を見かけても気にも留めない俺。しかし、ほんの気まぐれ、ほんの僅かな正義感そして・・・取ろうとしている本が自分の大好きな本だということ、それが俺を動かした。


『‥どうぞ』


精一杯背伸びをして本を取ろうとする女性の横に行き、本棚からその本を取り出す。そして、無愛想に特に感情も見せずに本を渡した。


『……どうも』


怪訝そうな態度を隠そうともせず、不審者でも見るかのような目で見て本を受け取る彼女。


(礼は言うんだな…)


警戒心むき出しの彼女の態度を見てそう思うのは許してほしい


『では』


『…ぁの』


これ以上話しかけて何かよからぬことを考えていると思われるのも嫌だったので、すぐ踵を返し早歩きで遠ざかる、彼女の呼びかけに気づかずに。


🔸


(結局俺は何がしたかったんだろう)


そんなことを考えながら昼食を終え帰路につこうとしていた矢先。


『……さい!!』


『?……なんだ』


少し遠くの方から女性の叫び声のようなものがかすかに聞こえた


『…ください!!』


先ほどよりも大きくなる女性の声、、、気になり見てみると。


『やめてください!!』


さっきの彼女が男に片腕を掴まれ叫んでいた。


『やめてください!!先ほどから言っているようにあなたにはついていきません!!』


『え〜いい〜じゃん、絶対楽しいからさ!』


どうやら先ほどから言い寄られているようで、断っているようだが話が通じない相手のようだ。それに、周りにいる人たちは絡んでいる男が体格のいい、いわゆるヤンキーのような柄の悪い格好だからか目を背け知らないふりを続ける。


『…ほんと今日はどうしたのかな』


自分のよくわからない気持ちを振り払うように頭を振って余計な思考を飛ばし、彼女と男に近づいて言った。


『俺の連れに何かようですか?』


彼女と男の間に滑り込み掴んでいた手を離させる。そして俺が急に入ってきたことに驚きの顔をする二人、すぐに反応したのは男の方だった。


『何お前?どっから湧いてきたん?』


『彼女の連れだってたった今言いましたけど、日本語通じなかったですか?』


『あぁぁ!!?』


多少煽ったがすぐに顔を真っ赤にして怒りの態度を見せる男、俺の後ろではオロオロと不安げな顔で俺と男を見る彼女。

そんな彼女を尻目に激昂し始めた男の方に意識を向ける


『テメー‼︎バカにしてんのか‼︎』


『まさか、たった今言ったことを理解できていらっしゃらないようだったので確認したまでです。』


『それをバカにしてるって言ってんだよ‼︎‼︎』


『キャ!!』


俺の言葉に我慢しきれなくなったのか、大声をあげ拳を振り上げて殴りかかってる男、それを見て悲鳴をあげる彼女。


(‥こんなもんか)


殴りかかってくる男の手首を掴みその勢いのまま投げ飛ばす。

俺は幼少の頃からある道場で合気道を習っていた、ほぼ毎日実戦的な訓練を続けていた、そうな俺からしたらこの男の攻撃はは、本当に赤子の手をひねるようなものだった。だが、相手を投げ飛ばしてから気づいた


(しまった〜、道場以外の場所で人を投げ飛ばしてしまった。一応受け身が取れるように投げたけど‥警察とか来て、もしも、このことが道場の師匠のとこ行ったら……終わる‼︎)


師匠から言われていた言いつけを破ったことを思い出し、それがばれた時の地獄を考え、俺は血相を変えて彼女に話しかける


『とりあえず行こう‼︎』


『は、はい』


彼女も離れるべきなのはわかったのか後ろを必死に走ってついてくる


🔸


『はぁーはぁーはぁー』


『ここまで来れば大丈夫だろう。』


とりあえず先ほどの現場からは離れたところに逃げた。そして落ち着きを取り戻してゆく。余裕ができたため改めて彼女を見る、腰まで伸びた綺麗な黒髪、身長は俺と20cmぐらい離れていて結構小さめ、端正な顔立ちをしていてだいぶ人の目を引く大和撫子風の女の子といえばいいだろうか。そんなことを考えていると彼女の息が整ってきた


『ふぅ…先ほどは助けていただきありがとうございました、助かりました。』


さっき書店で会話と言っていいのかわからない会話をした時より少し軽い口調でお礼を言い綺麗にお辞儀をする。


『いえいえ気にしないでください、ではこれで』


どことなく居た堪れなくなってさっさと帰ろうと思い少しばかり早口になってしまった。ともあれ、それだけ言って立ち去ろうとする。そんな時、彼女が俺の服の袖を掴んだ。


『あの…』


緊張した顔で言ってくる彼女、何だろうか?


『お名前をお聞きしてもいいでしょうか?』


『…戸条仁とじょう じんです。』


『……戸条仁さん』


俺の名前を呟いて何やら考え込んでしまう彼女


(これは話しかけてもいいのだろうか?)


残念なことに女性とあまり会話をしない俺からしたら初対面の美少女と会話をするのはハードルがたかい。ひとまず声をかけてみる


『あの』


呼びかけると、はっ、として顔をして顔を上げる彼女


『失礼しました!私の名前は、如月椎奈きさらぎ しいなと申します。改めてありがとうございました。』


そう言ってさっきと同じように綺麗に深く頭を下げる彼女。


『いいんですよ、本当にただの気まぐれでしたから気にしないでください、では本当にこれで。』


『ま、待ってください!!何かお礼をしないと』


なぜか少しばかし頬を染めながらそんなことを言いはじめた。

ここで普通なら、まだ俺と一緒にいたいのかな?なんて考えるんだろうけど、残念ながら俺は捻くれた考えしかできないため『変な借りがあると困りますか?』なんて返をしてしまう。そしたら彼女は少しおどろい顔をして、そしてすぐ真っ直ぐ俺の目を見て『はい』と答えた。


『私の勝手な決め事ですが、誰かに借りを作ったままにするとゆうのは……ですからこの後少しだけで構わないので付き合っていただけないでしょうか。』


なぜだかわからないが、結構深刻そうな顔で行ってくる如月さん


『わかりました、では、そこの喫茶店で飲み物でも奢ってください。それで十分ですから。』


『わかりました、…ありがとうございます。』


奢ってもらうのは自分なのに感謝されるというよくわからないことになってしまった。


🔸


『いらっしゃいませ〜、あら!椎奈ちゃん!いらっしゃい‼︎久しぶりね〜』


『ご無沙汰しています、間さん』


お店に入ってそうそう、店員さんと会話を始める如月さん、適当に入った喫茶店だったがまさか如月さんの知り合いの店だとは。


(どんな偶然だよ……)


『ほんっとに久しぶりね〜、それに…』


『『…?』』


俺と如月さんを交互に見て満足したのかニヤニヤしながら


『うふふ‥少し見ないうちに椎奈ちゃんが男の人を連れてくるだなんて〜びっくり!』


なんて言ってくる


(これ完全に誤解してるよな??)


『いっ、いえ、そをいうのではなくてですね!?』


店員さんに言われた言葉をやっと処理し終わったのか、再起動し始めた如月さんが一気に顔を赤らめて捲し立てる


『あら、恥ずかしがらなくてもいいのよ?』


『本当に違うんです‼︎』


『うふふ、そをいうことにしときましょ♡さぁさぁ入ってください。』


話を聞いているようで聞いてない様子で店内を案内してくれる店員さん。


🔸


とりあえず案内された席に座って紅茶を注文した、少しして店員さんが注文の品を持ってきてくれる。


『戸条さん、ご紹介します。この方はこのお店のオーナーの、間未奈はざま みなさんです。』


ひと段落ついたところで仕切り直すように店員さん、間さんを紹介してくれる


『ご紹介にあがりました、間です。それにしても今日はどうしたの?久しぶりに来てくれてとっても嬉しいけど、もしかして彼氏を紹介したかったとか?』


やはり話を聞いていなかったのか、聞いていてからかっているのか、そう言ってニヤニヤしながら聞いてくる


『あの、本当に違うんです…実は先ほどこちらの戸条 仁さんに変な男の人に絡まれているところを助けていただいてそのお礼なんです。』


『あら‥そうだったの』


如月さんの言葉を聞き本当のことだと理解して心配した顔をして如月さんを見る店員さん、そして俺の方を向いた、どうしたのだろうか?


『戸条さん椎奈ちゃんを助けていただきありがとうございます。』


そう言って頭を深く下げる間さん


『間さん‼︎』


『頭を上げてください‼︎大したことはしてませんから‼︎』


『いいえ、椎奈ちゃんは私にとって娘のような存在なんです。本当に感謝しかありません。』


『間さん…』


『わかりました感謝を受け入れます、ですから顔を上げてください』


顔を上げた店員さんは曇った顔を見せず、さっきのニコニコしたような顔をしていた


『‥本当にありがとうね、それにしてもいい男ねーそうだ!椎奈ちゃんを助けてくれたお礼にサービスするわ‼︎』


『いえ‥、ですから私からのお礼なのですが』


『あら、そうだったわね、じゃこのお礼はまた今度ね?』


人差し指を口にあていたずらっぽく言い店の奥へ行ってしまう。


『良い人ですね』


『はい、とっても‥…』


はにかんだような顔で嬉しそうにけどどこか寂しそうに言うのだった。


🔸

『それでは間さん、また』


紅茶も飲み終わり会計を済ませて店を出る前に間さんに挨拶をしていた


『えぇえぇ、またいつでもいらしてくださいね?もちろん彼氏さんと一緒にね?』


『ですから‼︎先ほども説明したとうりですね?』


『はいはいわかったわよ〜、戸条さんも是非ね?』


如月さんの必死の弁解もヒラヒラと躱し、俺の方にも声をかけてくる


『は、はぁ』


突然のことで曖昧な答えしかだせなかったが、それでも嬉しそうにしている店員さんを見て、まぁいいかと思ってしまった。


🔸


『あの、戸条さん』


お店を出て少しした場所で如月さんが話し始めた


『はい?』


『今日はありがとうございました、本を取って、その時に失礼な態度を取ったにも関わらず、私のことを助けていただいたり、私のわがままに付き合っていただいたり』


『気にしないでください、初対面の男を警戒するのは当然のことですし。それに…正直に言ってしまえば助けたのは気まぐれでしたのでそんな褒められたものじゃないですよ…』


本音をこぼした途端、如月さんは首を振って否定した


『いいえ、気まぐれだろうと何だろうと動くことに意味があるんです、助けてもらった身で言うのも何ですが』


『…そう言ってもらって良かったです。では、俺はこれで』


『はい、時間を取らせてしまって申し訳ありませんでした、助けていただきありがとうございました。』


最後に、これまでで一番輝いて見える笑顔でお礼を言う彼女に一瞬目を奪われたのだった。


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読んでいただきありがとうございました

作って自分で読んで改めて幼稚な文章だなとしみじみ思いました。しかしこれは趣味としてたまに続けていければなと思います。

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