第5話【社交界デビューの会場】
馬車に揺られながら話をしていたらいつの間にかお城に着いていた。
「……大きいですね。」
「リアは初めてか。
心配する事はないよ。
さぁおいで。」
「ありがとうございます、お父様。」
お父様の手を取って馬車を降りる。
お父様は慣れた手つきでお母様も馬車から降ろしていた。
入場する時はわたくしが前で後ろでお母様とお父様が着いてくる形になる。
緊張で足が震えてミスをおかしてしまいそう…。
「レオナルディ家の入場です!」
まさか家門の名前を呼ぶとは思わなかった…。
一瞬ビクッとなってしまったけどバレてないはずよ。
今はロザリアとして居るのだから、上手くやれるわ。
「レオナルディ家はお嬢さんか…。」
「それもそうでしょう。ご子息はもういらっしゃらないのだから。」
「家門が没落するのも時間の問題か。」
「引き継げるのが娘じゃぁねぇ……。」
ヒソヒソと煩わしい……。
お兄様が居なくなって跡を引き継げないと思っているのね…。
安心なさい。
期待を裏切って差し上げますわ。
2年後あなた方が震え上がるの楽しみにしてますわ。
「リア、周りの話は気にしなくていい。」
「えぇ。分かっております。」
「あまりいいものでもないわね。」
「わたくしにはお父様とお母様がいてくださるだけで充分ですわ。
それに顔を覚えましたから。」
「……。
あまり無茶をするなよ。」
「任せてください。
わたくしは上手く立ち回れますわ。」
「王家の皆さんの所に挨拶に伺おうか。」
「はい。」
「いつものようにって言うのでしょ?」
「お母様は慣れてらっしゃるのですね…。」
「旦那様が王家の陛下の側近騎士だもの。
慣れなきゃいけないわよ。」
「そういうものですか…。
わたくしにはまだよく分かっておりません…。」
「慣れてもいい事ばかりでは無いわ。
女の世界も、男性の世界もね。」
「そうだな。
言い回しの裏を読まなきゃいけないのはどちらも変わらないだろうからな…。」
「よく言いますわ。
男性の場合は政治的かも知れませんが女性の場合は情報と政治的の両面があるのですよ。
リアはは負担がかかりますわ。」
「まぁ……今ここで教えるべきでは無いかな。」
「ふふ…お父様もお母様には敵わないのですね。」
「それは……まぁ……そうだな。」
「まるでわたくしに口では負けるみたいではございませんか……。」
「いつもの事ではないか。」
「仲が良いという事じゃないですか。
わたくしはそんな両親を持ててとても幸せですよ。」
幸せな環境なのだ…。
ここにお兄様がいて欲しかったと思ってしまうくらいには…。
1番上のお兄様にわたくしはお会いしたことはない。
1番上のお兄様が10歳の時、2番目のお兄様が8歳の時にお2人ともいなくなってしまったから…。
わたくしが2歳の時に2番目のお兄様は8歳で今のわたくしと同じ年齢……。
お兄様の社交デビューを済ませたばかりの頃だったと……。
なんでわたくしのお兄様は居なくならなきゃいけなかったのか…。
大人とは卑怯なのか、両親を見ているとよく分からなくなる。
1番上のお兄様はわたくしにお会いした事はあるのだろうか。
お兄様達の話題は今はタブーになってるけどいつか聞かせてもらえるかしら…。
「陛下にご挨拶申し上げます。
私アルベルト・レオナルディと妻ソフィア・レオナルディと娘のロゼリア・レオナルディでございます。」
「よく来てくれた。
面をあげてくれて構わない。」
「はっ。」
「ありがとうございます。」
「あ、ありがとうございます。」
「今回はお前達一家を招待することになったがロゼリア嬢は社交デビューの日らしいな。」
「そうでございます。
寄り良い日に娘を紹介出来る事嬉しく思います。」
「しかし……いや……今はこの話はやめておこう。
今日を楽しんでってくれ。」
「ありがとうございます。
それでは私達はこれで失礼します。」
「レオナルディ公爵…。
お前の娘と少し話はできるか?」
「構いませんが……。
私達は離れた方が良いでしょう。
陛下、先に妻と失礼させていただきます。」
お父様とお母様は離れていった。
残されたわたくしは緊張で笑顔が作れているか不安になるのだけど……。
「初めまして。ロザリア・レオナルディでございます。」
練習のかいあって上手くカーテシーが出来た。
「面をあげていい。
今回は社交デビューおめでとう。」
「ありがとうございます。」
ゆっくりと元に戻る。
初めて見る陛下は凛々しく輝いて見えた。
「やはり似てるな……。
ロゼリア嬢に良い日になるといい。」
陛下にはお兄様達もお会いした事があるはず…。
あまり思い出せないお兄様達のお顔……。
わたくしが幼かったがゆえ仕方ないのだけど、とても優しかった。
「……?(似てる?)もったいなきお言葉でございます。
わたくしも1日でも早く成長出来るように精進していきますわ。」
「期待しているぞ。
それじゃ……行っていいぞ。」
「それでは失礼致します。」
少しだけ会話をしてその場を後にする。
少し離れた場所にいる両親と合流をした。
「とても緊張致しました…。」
「ご苦労さま。
場数を踏めば慣れるさ。」
「王家との挨拶など慣れたくないでしょう。
わたくしだってまだ緊張致しますのに……。」
「慣れるのはお父様だけだと思いますわ。」
「味方になってくれそうなのが居ないのは……な。」
「あなた……まだ思い出してしまいますわね……。」
「2人とも……忘れなくていいんじゃないかしら?
忘れてしまってはお兄様達が生きた証はどこにも残らなくなりますわ。
わたくしは……幼かったからあまり覚えておりませんが少ない思い出はとても大切です。」
「少しずつ受け入れようとはするが……今はまだ難しい。」
「そうねぇ……。」
「それでいいと思いますわ。
いつか……お兄様達について聞かせてくださいね。」
精一杯笑ってみせる。
わたくしまでお兄様達に会いたかったと寂しいのだとそんなことを言って苦しめたくは無いから。
今はまだ面影を追って思い出に浸り過ごしてもいいのだと……。
どんなに年月が経とうが消える事は出来ないのだから……。
受け止めれるようになるその時までは話題にしなくてもいい。
「リア……済まないが少しの間1人でも大丈夫か?」
「ここに居ますので行ってきて大丈夫ですわ。」
「この場所から離れないでくださいね?
リアを探し出す事になるのは……嫌ですよ?」
「お母様は心配しすぎです。
大事な話をしに行くのでしょ?
わたくしは大丈夫です。」
「すぐ戻ってくる。」
「早く戻ってきますからね。」
2人は離れていった。
心配症だなぁ……。
心配症になってしまったのかもしれない。
親より先に子供を亡くしてしまっていたら仕方ないのかしら……。
わたくしだって本当は甘えたかった…。
お兄様を失った悲しみはわたくしにもあったから出来なかったけど、それでも両親に寄り添うくらいはさせて欲しかった。
大切な両親には失う怖さを二度と味わないように…。
「初めましてお嬢さん。」
「はい?わたくしになにかご用ですか?」
「いきなり声をかける無礼をお許しください。
私は…あなたのお兄さんと仲良くしていた者です。」
「……お兄様のご親友の方ですか…。
わたくしになにか?」
「社交デビューおめでとうございます。
大きくなられましたね……。」
「えぇ……。
あれから4年経ってますから……。」
「彼も生きていれば…きっと喜んでいたでしょう。」
この人はなにか知ってるのかしら?
両親が離れたタイミングで来たのかしら……。
なにか裏があるの?
「きっとそうなったと思います。
わたくしが幼い頃が最後ですのであまり覚えてはおりません…。
それで……挨拶に伺うならば両親がいる時でも良かったのではなくて?」
「いや……個人的にあなたと話をしてみたかったのです。」
「そうですか……。
わたくしはこの場所を離れる事は出来ませんの。」
「……場所を移さなくても問題はない。
異性と2人きりになってしまう方のが問題になるからこのままで。」
「そうですか。
一応ちゃんとしてますのね。」
「君を妹のように思って居るからな……。」
「お兄様が居なくなってから会ってないと思うのだけど……。
それでも妹だと思っていただけてるのですね…。」
「彼が居なくても変わらないさ。
彼を守れなくてすまなかった……。」
「…………。
わたくしにはよく分かりません…。」
「君が真実を知らないままいて欲しいとすら思っている。」
「……知らなくてもいい事ならばわたくしは知らないままですわ。」
何を隠しているんですの?
知らないままなんて事……出来るはずないじゃありませんか。
「それじゃ私はこれで。
今日は楽しんでいってね。」
「ありがとうございます。
雰囲気に慣れるつもりで楽しみますわ。」
そして彼はいなくなった……。
お名前聞いていませんが知らなくても問題ありませんわね。
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