(六)

 梨沙の新連載を読む。繊細な絵、壮大なストーリー。芝居がかった台詞回しも世界観に絶妙に合っている。ああ、また。やりたかったこと全部やられた。

 電話が掛かってくる。他愛ない世間話の後、私は新連載について切り出した。

「読んでくれたの? どうだった?」

「面白かったよ」

 私が歯噛みしていることは露知らず、彼女は無邪気にお礼を言う。

「そういえば『魔王』なんだけど、新情報だよ。」

「何?」

「とっておきだから、届いてからのお楽しみ」

 東京から、『魔王』がメジャーデビューするという知らせとCDが届いた。皆私を置いていく。

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下馬評 芳ノごとう @1234letter

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