(二)

 さて、私も漫画家を志す人間として、描きたい絵や使いたいフレーズがある。「私は至って凡人だ。ピカソの絵が落書きに見えるくらいには」だなんていう文言はかなり気に入っていたし、いつか絶対使おうと心に決めていた。酔っていたと言っても過言ではない。

 そんな折に、同じフレーズが深夜ラジオから流れてきた時は愕然とした。聞こえた歌詞では「僕」となっていたけれど、それ以外は同じだった。誰にも言っていないので、真似されたわけではない。だが、どこにも漏らさないアイディアは、最初に発表した奴のものとして認められかねないのだ。絶対私の方が先に思いついてた!

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