特筆すべきは、この文章の美しさです。
とあるとんでもない事情があり、その結果として、ヒーローがヒロインの能力を見込んで提案した形式上の婚約、言うならば(仮)といったところでしょうか。
お互いに、複雑な事情を抱えた年若い二人が少しずつ距離を縮めていく様子を、時にニヤニヤしながら、時にハラハラしながら読み進めること間違いありません。
そして、しつこいですが、美しい。描写が美しいんです。和装がたくさん登場する物語は、難しいと思うんです。和装が好きな人は、細かいから。
でも、この物語は、私の和装チェックを軽々と乗り越えました。そこもとても推せるポイントです。
そして、ヒーロー(名前は本編で確認してね)
容姿端麗。言いたい放題。高校生。属性が多すぎるにもかかわらず、強力な魔祓いの力まで持っています。
これだけのハイスペックなのに、不思議と等身大に感じられるのは、作者様の筆のお力だと思います。
一言で言うなら、恋とファンタジー、1粒で2回おいしいのです。
呪われた歌声を持つ少女・ことり。冷たい扱いを受けていた彼女は魔の贄とされるが、そこに現れた少年・馨に助けられる。互いに事情を持つ二人は、ある目的のために形だけの婚約をすることになる。
ひとつひとつのエピソードやキャラの心情がとても丁寧に綴られています。特にことりの内面の変化、馨との距離が縮まっていく様子は、読み手の心にも光を灯してくれます。
和風ファンタジー、恋愛、人間ドラマ、そして、個性輝くキャラクターたち。どこか残酷さも感じる世界観の中で、それらを目一杯に楽しめる作品です。
個人的には、着物の描写が丁寧なのも好きです!
火のいろんなイメージが感じられるのも良いなぁと思いました。生命力の弾ける力強さ、そっと寄りそうあたたかさ、闇を照らす心強さ、触れたものを焼いてしまう怖さ。他にも様々な性質を連想できたように思います。
「39話分無料公開」で読みました。続きも何らかの方法で読ませていただこうと思います。(書籍版も9/13発売だそうです)
神祀りは四家ありますし、そこから更にたくさん枝分かれしています。今連載中のエピソードが完結しても、この先どんどん物語が広がっていくんだろうなとワクワクします。
【9/22追記】
書籍版にて読了しました。書き下ろしSSも良かったです……!