第17話 失点のリカバリーは大変

結局あっくんはゆきちゃんの庇護下に落ち着いた。

ゆきちゃんは攻撃力ヨシ、保護力ヨシ、面倒見ヨシのスパダリです。

スパダリにモフモフ枕機能まで付いてるんだよ、うらやましいぃ!


何より…種族が違って恋愛に発展しないのが安心!

というのがみーちゃんの見立て。


あっくんは密猟されたり売られたり閉じ込められたりと

辛い日々を送っていたので、心の傷が癒えるまでの休養は必要だ。

恋愛のゴタゴタなんて打算を持ち込まないゆきちゃんは

理想の保護者に違いない。それと…


「やっぱり人型はまだ怖いよね。」


あっくんからすると、僕は自分を捕まえて閉じ込めた奴らと見た目が同じ。

頑張れば個体識別できるけど、頑張らないと識別できない。

その点、みーちゃんは尻尾があるし、ゆきちゃんなんて足が多い。


「うう…。うらやましいぃ!」

「まあまあ、そのうち慣れるから気長に待ってやれよ」

「うんうん、待つのは大事だよ。急ぐと獲物だって仕留め損なうし。」

「分かっちゃいるけど寂しいな。」


仕方ない、地道に餌付けするかぁ。

「じゃじゃーん。騎士団から押収された砂漠ミミズを分けてもらいましたー。」

「…」

あれ?


「すっげえ警戒音出たぞ。お前、多分絵面が地下商人と同じ顔になってると思う。」

うわ、そりゃそうだ。すみませんでした。僕が浅はかでした。


「もう、そういうのがデリカシーないって嫌われるらしいよ。」

「さすがゆっくんよく分かってきたね、えらーい。」

「ふっふーん。俺、スパダリだから!アレクサ、気にしないで狩り行こう!」

「私も一緒に行くね」

「うん、猫もよろしく!」


え、あれ?

「ちょ、ちょぉっと!アレクサって!あっくんに名前付けたの!?」

「俺の眷属にしたから。トカゲ呼びじゃ可哀想だろ?」

「なんか、庇護下にいる子は愛称を付ける習慣らしいよ。」

「独り立ちできるまで俺が面倒見る!」


うわぁ…。ツバサヘビ神、超可哀想…。


「仕方ないなぁ。これ僕が使う予定だったけど、あっくんが持ってていいよ。」

「何?」

「携帯翻訳機のテスト機。この塔の音域合わせ技術を参考にして、元職場で翻訳機の改良を進めていてね。大体目処が立ったから、あとは色々な音源データを集めて自動解析で学習させる段階。異種族でもざっくりは伝わるんじゃないかな。」


「へえぇー。試してみる。ありがとう。」

「すごいね、面白そう。」

「だから僕もついて行くよ。」


「じゃ、またみんなでピクニック行こっか。」

「ツバサヘビは一応神話生物だから、あまりいじめないであげて。」

「うん、男の子としては、好きな子が別の子と遊んでるのって寂しいからさ。俺もそこまで鬼じゃないし。見せびらかさないようにするよ。」


「私の中では変態ストーカーだから、逆上させて叩きのめしてもいいんだけどね。」

「あっくんそこまで嫌ってないと思うし、見逃してあげて」

「うーん、改心しそうなら考えとく…。」

本当かな、脳筋にゃんこさん。



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