第6話 ゆきちゃんと辺境の森

ゆきちゃんはユキグモ。

真っ白なふさふさボディに真っ赤なおめめ(攻撃色)。

大きさは僕の半分くらい。みーちゃんといい勝負。


獲物を仕留めるのに失敗したらしく大怪我で動けなくなっている所を僕が見つけた。

僕がユキグモ好きで世話できるということで、捕獲されてラボ入りした。

攻撃的でよくかじる。僕は効かないから平気だけど、周りはドン引きしている。

ユキグモは目の色が変わるはずだけど、ゆきちゃんの場合、攻撃色以外になったのを見たことない。まあ、似合ってるから問題ない。


雪の降る範囲が北上しちゃってこの辺にユキグモはいないというのが通説だったんだけど、ゆきちゃんの発見で、体に風景を投影して環境擬態している個体が生息しているらしいことがわかった。ユキグモの生態研究が進んで、うちのボスは北の辺境ラボに大分顔が効くようになったらしい。


さて。辺境ラボ経由でゆきちゃんが着きましたよ。

「てめっふざけんな!ネッターの分際でどこに連れて行く気だ!開けろ!ぶっ殺してやる!」

うんうん。元気がいいなぁ。良かった良かった。

「ゆきちゃあん。会いたかった〜。今日も元気だね〜。今開けるね〜」

「へ。 え? ネッターがしゃべった〜!!」

「大丈夫だよ〜。いつもの僕ですよ〜。移動お疲れ様〜。窮屈だったよね〜」

「うそ!マジで喋ってる!どうなってんの!怖い!」


檻を開けて硬直しているゆきちゃんを抱っこして出す。

「そこの猫さんがすごい翻訳機使ったんだよ〜。ここにいれば僕の言葉わかるからね〜。あー今日もふかふか。ちょっと毛艶がないねー。ご飯食べた?今作るからちょっと待っててねー。あー今日もかわいいねえ。おめめ綺麗だねえ」

「てめえいつもの変態ネッターかよ!喋ってもやっぱり変態なんじゃねぇか!何で押し倒して齧っても効かねえんだよ!」

「それはねー僕ら体内に魔力ないから魔力毒は効かないんだよねー」

「そういうことじゃねえよ敵対行動なのわかるだろ放せ吸うな怖がれよ」

「君が来てくれて嬉しいよー。今日も素敵だねー。癒される…」

「ダメだ言葉通じても通じねえ変態だタスケテ!猫?そこの猫っぽいの!助けろ!助けろください!」


「猫…。猫でいいのか?ありがとう。助かった。俺はユキグモ。ユクシラノフェリベルタス。ネッターに捕まって巣に閉じ込められたんだ。」

わお!ゆきちゃんじゃん。なんてミラクル!

「えっと、私ミーシャ。ネッターって?」

「そいつらのこと俺らはそう呼んでる。あちこちに巣を作って、巣同士を繋げて生活してるんだ。1匹攫うと違う巣からも襲われるから気をつけろ。」

「んー多分私は近縁種扱いっぽいから大丈夫だと思う。心配ありがとう。」

「それよりお前そんな短い名前名乗って大丈夫か?」

「どういうこと?」

「名前って言霊だろ。俺らは名前長いほど強いから、短いと襲われるぞ。俺もユキって呼ぶの俺より強いやつだけだし。そういやネッターのやつ何で俺の名前知ってんだ?」

「それはね!偶然だよ!運命を感じるね!愛だよ!」

「うわあ!沸いて出た!しっしっ!」

くすん。でもめげない。だって男の子だもん。


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