第9話 ドアを開いて

すぐに新しい部屋を借りた。

新しい生活を始めた。


――――――。

「稜くん」

「ん?」

「翔達と会ってないの?」

「うん」

「連絡は?」

「来てない。大人になって俺が家借りてからは昔ほどは無いから。」

「寂しくない?」

「じゃあ、通い妻して。」


2人でベットに横になってダラダラしながら話してた。


そんな時にスマホが鳴った。


「噂をすればだ。家出たのわかったかな。」


―――――――――。

「はい。」

「暫くだね。構ってあげられなくてごめんね。」

「別に。気にしてない。」

「稜太さ、引っ越した?」

「うん」

「近く?」

「どうだろ。」

「真里亜には言った?」

「保護観付きか?俺は」

「あんまり酷かったら措置入院とかもありえるんだからね。」

「突っ込む気か。」

「せざるおえない場合もある。厳しいこと言うとね。」

「大丈夫。今、愛穂が居てくれてるから。ほぼ毎日横にいる。」

「付き合い始めたの?」

「そういう訳じゃない。」

「…真里亜の事聞かないの?」

「聞いた所で。」

「稜太に会いたがってる。でもわけがあるはずだからって我慢してる。僕だってそう。」

「じゃあなんで連絡よこさなかった?なんで真里亜は連絡よこさない?LINEとかなら話せるよな。」



「…僕たちと関わりたくないのは稜太でしょ?」

「……。」

「ほら、言い返せない。」


――――――僕は部屋を出て玄関で話を続けた。


「…かけ。」

「なに。」

「お前の笑った顔が好き。」

「うん」

「お前の意地悪な言い方が好き」

「うん」

「お前の柔らかくて優しいところが好き」

「うん…」


僕が『好き』を並べるほどに翔の声が涙ぐんでくのがわかった。


「でもさ、お前は抱きしめて欲しいでしょ?」

「そりゃね。稜にはそうしてほしいよ?」

「俺ね、お前が高3位の時からかな。夜中に公園で話してた頃。ほんとはあの頃からお前に抱きしめて欲しかった…。でもキャラじゃねーし、ほかにとられたくないしで言えなかった。」


「…本当に馬鹿だね稜太は。」

「言えるわけねーだろ。気持ち悪い。」



「今は?おうちあるの?」

「あるよ」

「行っていい?」

「来なくていい」

「なんで?」

「……お前、愛穂もらってやれ。」

「……どうして?」

「あいつはお前としたがってる。ずっとお前の事だけ見てる。そういう相手の方がお前は幸せだろ」

「愛穂の気持ちは知ってる。でも僕は無理なんだ…。僕は…ずっとずっと、稜太一人。稜太しか要らない。」



「…かけ。今からうちこい。住所送るから。」

「行く」



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