第5話 埋まらない

半分以上ヤケだった。

アプリで知り合ったちょっと癖のある女とホテルへ行った。


―――――――――明かりを消した部屋の中、薄明かりのベット上で二人。


「しないの?」女が聞く。

「したい?」

「それ目的じゃないの?」

「やられたい?」

「痛いのは嫌。」


僕はその女を抱き寄せた。


「……。」

「可愛いな。」

「口だけ?」

「本当にそう思う。」

「…見て。」

「ピアスいっぱい。」

「…固くなってきてる。」

「補聴器が可愛くて。」


「本当にそうなんだ。」

「そう。」

「……入れたい?」

「いい。別にそんなつもりない。」


女は僕にキスした。


「……寂しそう。」

「なにが。」

「わかんないけど、寂しそう。」

「……何がわかる。」

「…抑圧?してる?」

「今はしてない。」

「普段」

「……。」


「じゃあお前は俺を満たしてくれる?」

「……。」


女はまた僕にキスした。

僕が舌を入れようと追うと逃げた。

僕が離れるとまたキスしてきた。

もう一度試みるとまた逃げられた。


「……」

女が微笑む。

「なんなんだよ。」

「何したいか言って。」

「……。」

「言わないとしない」

「…舌欲しい。」


女は僕の唇に舌を這わせた。


「…違う。」

「なに?」

「…イラつく。」

「素直じゃないね。私の下でこんなにしてるのに。」


『…どれだけ俺を思ってるかやってみて。』


「へー。素直になりたい時はそうするんだ。」


「…あぁっ…」

「弱いんだね。」




―――――――――僕は快楽の中で翔を求めていた。こいつじゃ足りない。あいつのあのねちこさが欲しい。



僕は事の途中で『ごめん。冷めた』とだけ言ってホテルを出た。




――――――ホテルを出たあと翔に『会いたい』とだけLINEを入れた。。

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