第2話 プラトニック

―――――――――昔の話。


「稜太。」

「ん?」

「ママに言わないでね」

「何を。事による。」

「…言わないで」

「なに。」


「死にたい。」



当時小学校5年生。翔はおっとりしてて優しくてちょっととろくて柔らかい子だった。髪もサラサラで少し茶色で左耳には補聴器。いじめるには

最適の相手。俺にとっては弟みたいなやつ。二つ下で母親は違うけど、僕の母親は死んでる。翔の母親が僕の親代わりだった。



―――僕は翔をよく包み込んでいた。


「しんどいな。」

「うん。」

「大丈夫だ。俺居るから。すぐ呼べ。」

「うん。」

「…俺はこの顔好きだけどな。…真里亜と瓜二つ。」

「僕はそれが嫌。『女みたい』って言われるから。」

「言いたい奴には言わしとけ。俺はこの顔が好き。この顔の元の人も好き。」

「稜太だけだよ。そう言ってくれるの。」

「俺はお前と真里亜が好きだから。」

「……。」

「ん?」


翔が僕を上目遣いで見るがその時は何も感じなかった。ただ、髪を耳にかけて補聴器を見るのが好きだった。


「可愛い…お前の耳。」

「可愛い?」

「可愛い。」


僕に抱かれると翔は笑顔になる。




―――――――――多分、翔が中学2年生で僕が高1の時。真里亜は知らない。



「稜太…助けて…」

「あぁ?どしたよ。」


夜中の2時に稜太から電話が鳴った。

僕は走って50m程の翔の家に向かった。

庭の鉢の中に鍵があるのでそれを使って開けた。



僕が翔の部屋に入ると翔はベットの上で壁にもたれて腕を真っ赤にしてた。


「ったく…。」

「痛いよ…」

「…そんなに深くはねーな。うっすらだけだな。」

「怖くて。」

「それでいい。深くなんてやったら真里亜にバレんだろ。」

「うん。ママに心配かけたくない。」

「俺もやだよ。あいつが泣くの見るの。」

「…稜太は真里亜が好き?」

「そりゃな。」

「…Hしたい?」

「えぇ?」

「Hしたい?ママと。」

「別に。そこまでは思ってない。そこまではって言うか…俺、なんか頭変あたまへんだから。」

「どんな風に?」


僕は翔にガーゼを当てて包帯を軽く巻きながら話してた。


「お前、長袖着ろよ。バレんなよ。」

「うん…」


僕は手当を終えると翔を抱き寄せた。


「…稜太タバコ臭い。」

「わりかったな。」

「嫌いじゃない。」

「…付き合うか?」

「やだ。」

「なんでよ。」

「翔はやだ。他の人ならいいよ。イケメンとか。」

「あぁ?」

「翔には真里亜いるでしょ」

「真里亜はお前のママだからな…俺のママでもあるけど。」

「報われないね。」

「いいよ。そこら辺の男と女みたいに簡単に終わらない。終われないし。安心の方が多い。」

「家族だからね。簡単に別れたりしない。」

「そう。……。」

「なに?」

「なんでもない。」


僕はこの時、翔の目を見てた。

キスしたくてたまらなかった。でも、今日出してないし、ただのそういう欲をこいつにぶつけたいだけかもって思って制御してた。




でも高校生になるとちょっとずつ関係が変わって行った。

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