第4話 愛すること

 そんな奥さんのことであったが、これは後から分かったことであったのだが、奥さんが、その時、

「偶然聞いた」

 というのは、実はウソだった。

 いや、ウソというと、語弊があるが、要するに、

「目的以外のところで、聞こえてきた」

 という話だったのだ。

 その目的というのは、一種の、

「性癖」

 であった。

 本来であれば、犯罪である。

 いくら、家族同士とはいえ、

「ありえないこと」

 と言ってもいいだろう、

 しかも、血のつながりもまったくない関係で、旦那も、血のつながりのない義母なのである、

 さらに、年齢は、義父よりも、はるかに自分たちに近い。

「友達」

 と言っても、いいくらいであった。

 そんな女性が、一つ屋根の下にいるわけだ。幸恵が、自分の性癖を行おうとしても、それは無理もないことだが、それだけに、犯罪という意味では、余計に重たいものだという意識はなかったのだろうか。

 そもそも、性癖というのは、そういうものなのかも知れない。自分では、我慢できない。抑えられないところがあるのが、異常性癖だとすれば、これは、リアルにも、道徳的にも、許されることではないと言ってもいいだろう。

 その性癖というのは、

「盗聴」

 であった。

 実は密かに、幸恵は、自分の家にいる時から、そんな性癖があった。

 彼女には兄がいるのだが、

「アニキは、隣に妹がいるのに、平気でAVを、音も下げずに聞いている」

 ということであった。

 妹とすれば、我慢できずに、自慰行為に走ったとしても、無理もないことだろう。

 だが、今から思えば、

「アニキも、私にそれを聞かせて、興奮していたのかも知れない」

 と途中から思うようになると、

「兄妹で、異常性癖だとすれば、私が悪いわけではない」

 という、勝手な自分への正当性を並び立て、

「盗聴だって、別に悪いことではない。どうせ、向こうだって聞いてもらいたいんだ」

 という、理屈を並べて、自分を正当化するようになったのだ、

「アニキは、確かに、その気が本当にあったのだろう。なぜと言って、彼女ができてから、家で、AVを見せて、彼女がその気になったら、そのまま初めてしまう」

 というような、マジで、異常性癖と言われても仕方がないところまで来ているかのようだった。

 それを感じた幸恵は、やはり、

「あんなアニキにこんな妹があり」

 ということで、

「この癖は治らない」

 と自分で思うようになった。

 しかも、結婚してからでは、

もう、若い子を見ているだけでは、しょうがない」

 と思うようになった。 

「だから、義父と義母のような、年の離れた男女のセックスに、興味を持ったのだ」

 ということである。

「それも、この家自体に流れている、異常な分に気が醸し出しているおかも知れない」

 と感じるようになった、

 実際に、自分の性癖について、

「異常なんだ」

 ということで、自己嫌悪に陥っていたが、しかし、そう思えば思うほど、

「異常性癖である自分の、何が悪いというのか?」 

 ということで、

「異常性癖と言われていることでも、病気として認識され、必死に治そうと、努力している人だっている」

 ということである。

 もしそれを、

「犯罪だから、許されることではない」

 ということになると、

「薬物依存」

 であったり、

「ギャンブル依存」

 の人たちと、どう違うというのか?

 薬物も、ギャンブルも、

「いけないことだ」

 という認識はあるものの、警察から、病院や施設へと転用されたりして、

「病気」

 ということで、治療に専念させるということになるのだが、

「性癖」

 というものであっても、盗聴などの犯罪に絡むところは、さすがに警察から病院に送られることもあるだろうが、どこまでの治療が可能なのか、分からないだろう。

 しかし、犯罪とまで行っていないが、そこに近いところまで来ているとすれば、

「ちゃんと、病気として認識し、治す算段をするくらいのことがあってもいいのではないか?」

 と言えるのであった。

 そんな性癖を、幸恵は、最初こそ、

「人に知られたりしたら、私、生きていられない」

 と思うようになっていた。

 しかし、そのうちに、

「私がそうなんだから、他にも、異常性癖なんていっぱいいるわ」

 と思うようになった。

 何といっても、異常性癖を感じる前は、

「私ほど、真面目で清楚な女性はいない」

 と思っていた。

 確かに、

「真面目で清楚だから、異常性癖ではない」

 などというのは、何の根拠もないことであるが、本当にそればかり考えていてもいいのだろうか?

 ということであった。

 その異常性癖というと、どのようなことが出てくるというのだろう?

 一つは、

「露出狂」

 と呼ばれるものが多いだろう、

 たとえば、昔であれば、裸にコートを着て、暗闇で、女性一人が歩いている時など、胸をはだけて。

「そーら、見てごらん」

 といって、目のやりどころに困って、困惑している女性を見て、興奮するというものが代表的であろう。

 これは刑法上の、

「公然わいせつ罪」

 と呼ばれるものになり、れっきとした、

「刑法上の犯罪」

 である。

 ただ、同じ、異常性癖による犯罪として、さらに

「卑劣」

 と思われるもので、

「痴漢」

 というものがある、

 これに関しては、刑法上の犯罪ではなく、基本的には、

「都道県指定の迷惑条例違反」

 ということで、自治体で定める法律ということになる。

 ただ、基本的な異常性癖で捕まる場合、中には、

「出来心」

 などという、突発的な場合もあるだるうが、考えられることとしては、常習性があり、そうなると、刑法犯になる場合もあるだろう。

 もちろん、余罪を調べたりして、

「過去の犯罪が露呈したら」

 ということになるだろう。

 だから、警察も、余罪を調べることをするのだ。

 特に、痴漢であったり、盗撮というのは、

「グループ」

 があったりする。

 一番グループで動く犯罪というと、一般的なものは、

「スリ」

 であろう。

 普通は、

「余罪アリ」

 ということで、警察もその線から捜査をする。

 基本的に、

「余罪ありということから、そのグループを一斉摘発を狙っているからだ」

 と言えるだろう。

「ザコを一人や二人捕まえたって、何にもならない」

 ということで、犯罪グループの一斉摘発を狙うのが、警察の仕事であろう。

 そういう意味でいけば、

「基本的に、集団で行う犯罪は、罪はそれほど重くはないが、常習性という意味ではたちがわるい」

 ということだ。

 下手をすれば、

「暴力団の資金源」

 になったりするからだ。

 また、痴漢などの犯罪は、

「被害者面をすることで、痴漢に仕立てあげる」「

 ということをする連中もいる。

 気弱そうで、いかにも痴漢でもしそうなサラリーマンの近くに、女性が近づき、

「臆病で触れない」

 という状態であっても、誰か一人が、男の手を掴んで、

「この人痴漢です」

 と叫べば、言い逃れなどできるわけはない。

 見ていない人でも、状況から判断して、

「推定有罪」

 ということにされてしまう。

 そうなると、警察に突き出すふりをして、男を数人で人のいないところに連れていき、女の子が泣いているふりをしながら、

「金の要求」

 をするのだ。

「俺たちが、お前を警察に突き出してもいいんだぞ」

 と言われてしまうと、いくら冤罪であっても、捕まった時点で、

「人生が終わり」

 ということになるだろうと思うと、男は、やつらのいいなりになる。

「10万円でいいや」

 などと、最初はそこまではないかも知れないが、もしそこで払ってしまうと、どんどん金を無心され、総額で、

「数千万円」

 などという金を脅し取られることになる、

 途中で警察に事情を話しても、何もしてくれないだろう。

 下手に、警察に話したことが分かると、

「密かに消されかねない」

 と思うのだ。

 これがいわゆる、

「美人局」

 というものだ。

「美人局」

 というものは、一度金を渡したら最後、一生食いつかれるこっとになるというものだ。

 しかし、美人局も相手を間違えると大変なことになる。

 例えば、金を持っていて、知名度の高い人などであれば、

「いくらでも金を出す」

 と思うのだろうが、実は逆である。

 彼らは、

「自分が優寧人なだけに、最初は金を払うが、やつらは金を持っているのだ」

 ということは、

「金があるだけに、その金で、自分を守ろうとするだろう」

 そうなると、芸能界などは、

「その金で、用心棒だって雇うことができる。もっといえば、事務所に言えば、後始末くらいしてくれるかも知れない」

 ということだ。

「自分を守るためには、何だってやる」

 ということを分かっていないと、今度は自分たちが、やくざ連中に、袋叩きに遭い、それだけ、まるで、

「ミイラ取りがミイラになった」

 ということになるのである、

 それを思うと、

「用心棒や、やくざのような人の中には、必要と思われるような、必要悪というものの存在が不可欠なのではないか?」

 と思うのだった。

 そういう意味で、美人局というのが、もし警察につかなったとすれば、

「人を欺く」

 という意味での、

「詐欺行為」

 であったり、さらには、

「人を脅す」

 のだから、

「脅迫」

 ということになるのだろう。さらには、他にも併発するのかも知れないが、とにかく、

「卑劣な犯罪」

 であることに変わりはないだろう。

 ただ、これらの犯罪は、極悪と言ってもいいが、痴漢、盗撮などは、今で言う、

「セクハラ」

 である、

「相手が何も言えないというのをいいことにして、相手に対してプレッサーを掛けたり、自分の性癖の犠牲にしようというのだから、これほど、許されない犯罪というのもないのではないか」

 といってもいいだろう、

 盗聴というのも同じことで、

「相手が分からなければ、それでいい」

 というわけではない。

 もし、相手がそのことを知ってしまうと、明らかなショックを受け、

「男性不信」

 さらには、精神的に、性行為に対して、トラウマになってしまったり、もし、彼氏は夫がいる人であれば、一生その人と、セックスができない。あるいは、

「誰ともセックスができない」

 という精神状態になったとすれば、本人だけではない。

「彼氏や、夫に対しても、取り返しがつかないことをしたのだ」

 といってもいいだろう。

 そこまでは、法律で何とかできるものではない。できるとすれば、民事にて、

「損害賠償の請求」

 というところであろうか。

 結局は、

「金による解決」

 であり、

「病院通院などの足しにはなるかも知れないが、そもそも、一生消えない傷跡を残したのかも知れない」

 ということを考えると、

「本当に、そんなことで許されてもいいのだろうか?」

 ということになる。

「日本という国は、加害者に甘い」

 と言われるが、確かにそうなのだろう。

 しかし、加害者に対してだけではなく、加害者の家族も、一生後ろめたい気持ちで暮らさなければいけなくなり、

「本当に、日本というのは、加害者に甘い」

 と言い切れるのだろうか?

 ということで、すべてを、一方から見てしまって、本当にそれだけのことだといっておいいのだろうか?

 ということになるのだった。

 それを考えると、

「盗聴」

 というものも、

「分からなければいい」

 という理屈は許されるわけではない。

 それでも、幸恵は、何とか自分の性癖をまともに受け止めながら、それでも、我慢できずに、盗聴を続けていた。

「もちろん、夜の営みのあの声を聴きたい」

 というだけの異常性癖から来たことなのであるが、果たしてそれだけだったのだろうか?

 確かに最初はそれだけだったが、急に、

「夫婦の会話」

 というものにも興味を持つようになった。

 特に、

「年の離れた男女の営み」

 も性癖を満たすに十分なものだったが、それ以上に、会話の内容が気になっていた。

 というのも、最初は、

「年が離れているので、会話が遭うわけはないので、それこそ、旦那が満足すれば、それで終わり」

 くらいに思っていた。

 いや、そんな二人だったら、それこそ、

「奥さんは、遺産目当てに入り込んだのだ」

 と考えると、

「自分たち夫婦にとっても、容易ならんことだ」

 と考えるだろう。

「あの母親が半分持っていって、うちには、その半分、それを奥さんと二人で」

 と息子も思っているだろう。

 幸恵とすれば、

「自分こそ、遺産偉いという気持ちがある」

 と考えていることで、母親に対してのライバル心は大きいのだ。

 しかも、同じくらいの年齢で、自分よりもさらに倍を貰うことになるというのは、許せないということである。

 確かに、

「自分が遺産狙いだ」

 ということを表にだしていない。

 しかし、奥さんは、年の差だけで、その気持ちがありありなのは分かりきyていることだ。

 それだけに、潔いともいえる。

 自分は、そこまで考えていないだけで、それは、

「隠そう」

 という意思が大きいから、奥さんほど、あざといことはないのだ。

 ただ、開き直った方が、得だということもあり、幸恵は、その意識も、結構考えるようになったのだった。

「異常性癖」

 というのは、盗聴という姓劇よりも、もっと恐ろしい、遺産相続に絡む意識の方ではないのだあろうか?

 そんな状態の中で、幸恵が聞いた話だと、

「奥さんが、何やら誰かと浮気をしている」

 ということで、旦那が責めているというところであった。

 奥さんは、相手の名前を言わなかったが、旦那は、その名前をかたり、

「何で、あんなやつに、抱かれるんだ」

 というではないか。

 その様子を聞いていると、

「お義父さんは、相手のことをご存じなのかしら?」

 と感じた。

 知らなければ相手のことを罵るなど、できるはずがないからである。

 それを考えると、

「あの女は、お義父さんの知っている相手を浮気相手にして、まるで、お義父さんを追い詰めているかのようだわ」

 としか、思えなくなっていった。

 本当にそうなのかどうかは分からないが、どこまでが本当なのかということを考えていると、

「とにかく、お義父さんが可愛そう」

 と、幸恵はそう感じるようになったのだった。

 義父は、幸恵の気持ちは、分かっているつもりだった。

 というのも、

 幸恵が、実は、

「両親が、中学生の頃に、事故で亡くなったことで、親戚中をたらいまわしにされた」

 という経緯を持っていて、それだけ、人に対して警戒心が強いのだが、それだけに、よく相手のことも分かっている」

 という、両面を持っていて、その両面が、

「それぞれに、いい状態だ」

 ということを考えるようになっていたのだ。

 幸恵というのは、

「我慢強い」

 という感覚と、それでいて、

「涙もろい」

 というところがある。

 普通であれば、

「それぞれに一見して、似ていないことで、関連性のないような性格が、ちょうどあっているという、不思議な性格ではないか?」

 と旦那には感じたのだ。

 息子が連れてきた女性に、

「悪い人はいない」

 とまで思っていた旦那の気持ちを、さらに強くしたのが、幸恵の存在だった。

 幸恵は、自分一人で一生懸命になって働いていたが、そこに眼をつけたのが息子だった。

 彼女は、レストランのウエイトレスであったり、ドラッグストアーの店員などをしていたという。

 さらに、その前は、水商売のようなこともしていたというが、体調を崩して辞めたのだという。

 ただ、それは、本当は言い訳で、実際には、

「嫌な客に、粘着されたことで、精神的に、病んだ部分があって、水商売から、足を洗ったのだ」

 というのだ。

 水商売の頃は、

「イケイケ」

 という雰囲気だったが、今は清楚な雰囲気で、それが、本当に板についていた。

 そのついている板を見つけたのが、息子で、その中の部分を実際に、剥がすことができるのが、旦那なのかも知れない。

 それを思うと、

「私は、ここにいることで幸せになれる」

 という思いがあったのも事実だが、

「いつの間にか、何かが狂ったかのような気がする」

 と感じたのだが、その理由は、

「あの義母のせいかも知れない」

 と、感じるようになったのだ。

 だから、その意味もあって、

「盗聴を始めた」

 のであった。

 義母に対して、疑問を抱いたのは、実際に、自分たちといる時と、義父と二人きりの時で雰囲気が違う」

 ということであった。

「雰囲気と言えばいいのか」

 それとも、

「声のトーンが違う」

 というのか、部屋から聞こえてくる声を耳を瞑って聞いていると、義父の顔は想像がつくのだが、義母に関しては、まったく想像がつかない。

 部屋から出て、家族と一緒にいたり、食事の時などは、まるで、

「借りてきた猫」

 のようであった。

 その様子を感じていると、その時の顔は目を瞑って想像すれば、浮かんでくるのだが、義父と二人基地の時に聞く、その声は、

「まったく、顔の想像が浮かんでこない」

 ということであった。

「そんな、借りてきた猫」

 であったり、

「部屋の中では、存在感が、一気に倍増するかのような雰囲気の違いは、まったく別人のように思えて仕方がない」

 のだった。

 ただ、そんな夫婦が、

「あれで、よくうまくいくな」

 と感じていると、思っていたが、

「ははぁ、なるほど」

 と思える部分があった。

 しかし、それは、実は幸恵にとって、我慢のできることかどうか、最初は分からなかった。

 というのも、

「二人の夫婦生活」

 にあったのだ。

 二人の生活は、最初だけを見ていると、まるで、

「義母に洗脳され、いいなりにされているかのように感じられた。

 しかし、ベッドの中に入ると、二人の立場は完全に逆転する。

 何と、あの義父が、義母に対して、罵声を浴びせているのである。

 しかも、

「メス豚」

「この淫売」

 などとなじっているのだ。

 普通なら、

「何をいう」

 と逆らうであろう義母が、この時は、

「悦びの声」

 を上げるのだった。

 しかも、よく聞くと、

「ムチでしばいている」

 というような音まで聞こえる。

「ああ、いや」

 と、甘いネコナデ声を上げている母親は、普段の様子でも、先ほどまでともまったく違う。

「二重人格」

 などという、甘っちょろいものではなく、本当に多重人格のようだ。

 そんな様子に対して、義父はたまらないと思う性癖を持っているのだろう。

 それを思うと、

「女というのは、実に恐ろしい」

 と感じるのだが、同じような血が自分にも流れるというのは、分かっていた気がした。

 その時、幸恵は、

「私はまさか、義父を愛していたのではないだろうか?」

 と感じたのであった。


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