第4話

メッセージのやり取りに夢中で、仕事に集中できない市子。


やっとマッチした相手と週末会う約束をした。

達成感を感じた。


宮前先輩を見つめため息をつく。




生理が来ていないか心配になり、帰りに会社のトイレに寄る市子。



後から女性社員が入って来た。

「宮前先輩かぁ。羨ましい。結婚したら仕事辞めるの?」

「まさかー。仕事は続けるよー」

後輩の沙希と亜希子の声だ。


無表情で二人の会話を聞いていた。

頭の中は真っ白だった。



二人が出て行くまで、便座に座り爪を噛んで待った。


「よし!帰ろう!」

市子は笑顔で立ち上がった。


そして振り向き、後ろの棚に積んであるトイレットペーパーを自分のエコバッグに詰めて帰った。




白いワンピースと白い日傘で待ち合わせ場所に立つ市子。

少し早めに着いてしまった。


行き交うのはカップルばかりで、うつ向いて待つ。


「市子さんですか?」

顔を上げると誠実そうな男性。写真より好印象だ。


「はじめまして。佐々木です」

「お食事に行きましょう!市子さん!」

「はい……」


市子は久しぶりに男性と並んで歩いた。



着いたのは高級寿司屋だった……


「市子さん好きなネタ頼んでくださいね。何食べたいですか?」

「えっと……うーん……じゃあ、イカでお願いします」


「大トロとか食べていいんですよ?」

「私マグロ食べられないんです」

「そうでしたか。じゃあ、イカを」


いい人だけど居心地が悪い。

だいたい食事なんて意味ないのよ。


私はホテルに行きたいのに…


少しイライラする市子。


「イカが好きなんですね?」

「別に好きではありません」


「じゃあ、なんでイカを?」

「白いから……色が好きなんです」


「えっ! 市子さんは面白いですね!」

食事をなるべく早く済ませたい市子。


「私もうお腹いっぱいです緊張していて……」


「そうですよね。初対面だし。じゃあ急いで食べますね。少し待っててもらえますか?」


「はい……」


佐々木はマグロばかり食べている。


「マグロは嫌いなんですよね。昔からですか?」

「いえ、幼い頃は食べてました。父がお酒のアテでよくマグロを食べていて……私も欲しい!ってねだったりして……」


「じゃあ、どうして?」

「大人になるにつれて……血生臭い事に気づいてしまって……」


「そうなんですか……」


早くホテルへ移動したい……




お店を出た二人。


「今日はありがとうございました。市子さんとの食事、楽しかったです。次は市子さんの好きな物食べに行きましょう。何がいいですか?」


「えっ?もう帰るんですか?食事だけですか?」


佐々木は驚いた顔をしていた。



「ホテル……行かないんですか?」



妙な雰囲気になった。


「初対面ですし、僕は市子さんを大事にしたいです」



「はぁー」ため息をつく市子。


「さよなら。ご馳走様でした」


市子は佐々木に背を向け、駅まで走った。




家に帰り着くとツナ缶でお米をかき込んだ。

「お前がマグロだってっ知った時はショックだったよ」


市子は空になったツナ缶を見つめて言った……


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残嘘 青蛇でれら @huuchian

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