第八話

あれから何事もない平穏な土曜日が過ぎ、今日は日曜日だ。

…しかし、Majorが意外と今日起床した時にはもうけろっとしていた事には少し驚いた。

昨日あんな状況になって少しばかり気まずかったりしたりはしないのだろうか…。

そんな事を考えながらぼんやりとMajorを見つめていると、Majorがこちらに気付いた。


「…?どうしたんですか?先生」


無意識にMajorを見つめていたようで、私はそう話しかけられると、はっ、と我に帰った。

Majorはきょとん、としながら純粋な表情で少し私を心配するように私の返事を待っていた。

…とは言われても、特に慌てて誤魔化す気にもなれなくて、


「…いや、何でもない」


何か怪しい行動を見せる事もなく、私は冷静にそう返した。

…それに、何だか今日は嫌な予感がするのだ。

私は一昨日の夜、勢いで明日から明後日には今日の続きを…とか何とか考えていたが、

…今日は、何となくそんな気になれなかった。

…。

何か感じ取った訳でもないが、…嫌な予感がする。

…そうだ、私は明日も朝早くに起きて学校へ行かなければならない。

夜あんな事をしていては、遅刻をして帰って気まずくなる。

よし、今日はやめておこう。

そうやって少し無理のある言い訳で自分を言い聞かせ、

自分で納得し、心の中で何度も頷いた。


「先生、僕も色々知りたいですし、学校の事について色々話して下さいよ」


晩飯を食っている途中に、Majorは私に話しかけた。


「…いいのか?…お前が嫉妬するような話しかないかもしれないが…、」

「それに関しては大丈夫ですよ、もうそんなに気にしてませんから」


Majorはニコニコしながらそう言った。

…まぁ、本人がそう言うのなら大丈夫か。

嫌なのに肯定する事はまずないだろう。

—————————————————————————

僕はご飯を食べる手を一旦止めて、先生の話を聞いた。


「慎重になっている様子だったが、皆思ったよりフレンドリーでな、すぐに私を受け入れてくれたんだ。

始業式の日の新しい教科書を配る時に、何も話さないままだと皆の緊張感も高まってしまうだろうと思って、軍隊に務めていた時の話をしてみたんだ

そうしたら、皆は興味津々に聞いてくれて、そこから皆との仲が深まっていったのかもしれないな」


先生もそれに関しては印象的だったのか、一週間前の月曜日の話なのに鮮明に覚えているようだった。

でも、先生が学校で教師をしてて苦がないようで本当に良かった。

学校の先生って、悩みを持ちがちだと聞いたからちょっと心配してたけど、家に帰って来てから特に疲れを見せるような様子はないし、本当に教師と言う仕事楽しんでいるようだ。


「今では結構向こうから話しかけに自分から来てくれる生徒も多くて、教科担任だけしてるクラスでも楽しそうに授業を受けてくれてな

生徒達だけじゃなくて、他の教員達とも結構仲を深められていて、特に隣のクラス担任の教員とは結構仲が良かったりもする

…まぁ、勝手に向こうが寄ってきただけなのだが、それなりに良い関係を作れているつもりだ。

そうだ、私の軍の一つ目のナースのVarlinにも会ったんだ

とても驚いたが、彼女はもう結婚しているらしくて、今を苦なく生きている様子だった

…そう言えば彼女が担当している教科を訊くのを忘れていたな、今度改めて訊いてみるとしよう

それでだな————」


表情は特にいつもと変わらないけど、とても楽しそうに話しているのはとても伝わってくる。

可愛いなぁ…、先生もこんな可愛い事考える事があるなんて。

先生が本格的に仕事に行き始めてから正直心配も募っていたけれど、問題なく楽しめているようで本当に良かった。

先生が熱心に話をしてくれていると言うのに、僕は一人でにそんなような事を考えてしまっていた。


「————で来週の木金は実力テストがあってな、明日からの一週間は少し忙しくなりそうなんだ」


自分の妄想からやっと抜け出してきて、先生のその断片的な会話の内容が耳に入ってきた。


「…それって、もしかして帰って来るの遅くなったりするんですか?」

「…まぁ、そうだな…、良くは分かっていないがそうなる時も増えるかもしれない

…そうだ、テストの答え合わせをしなければならないから、英語のテストがあった日は遅くなるかもしれない

その時はまた連絡する」


少し寂しい気持ちになって少しの間黙り込んでしまったが、

先生に心配させまいと、また笑顔を作った。


「分かりました、その時はちゃんと言って下さいね」

「あぁ、勿論だ」


先生はそう言うと、ご飯の残りをまた食べ始めた。

…。

確かにもう僕は、先生が学校で多少人気者になったり、仲のいい生徒達や先生達が増えてもそんなに気にしないけど、

…早く帰ってきてくれないのは、やっぱり寂しい。

…、いや、僕も先生に教師になっていいって言ったんだし、仕方ないよね。

うん、それぐらい我慢しなくちゃ。

…うん。




風呂に入って、私はMajorの事をあれこれ考えていた。

…前から少し思っていたが、

やはり最近、Majorの様子がおかしい気がするような、しないような。

色々と、感情がころころ変わりすぎていないか…?そうでもないだろうか…。

…だが、Majorならきっと要望がある時はしっかり言ってくれる筈、だ。

…分かっていても、やはり心配になってしまう。

…と言うか、思えば土日ももう終わりだ。

…しまったな、

もっと、構ってやれば良かった。

表ではニコニコしていて、本当は寂しがっていたりはしない、だろうか…。

気付けば、身体を洗っていた手も動きを止めていた。

…、せめて、後で寝る前に少しでも構ってやろう。ここからまた一週間は夜まで帰らない。

…その分、元気でいてくれるようにしなければ。




風呂を上ると、Majorは寝る時用のシャツに着替え、カーペットの上に座り込んで、のんびりとテレビを見ていた。

…そんなMajorに、背後からそっと腕を回す。

テレビに夢中になっていて気付いていなかったのか、Majorは少し驚くような素振りを見せた。


「…どうしたんですか?」


Majorは首だけ私の方に回し、驚いたままの、可愛らしい顔を私に見せてみせた。


「…せっかくの土日だったが、あまり構ってやれなくてすまなかった」

「…あぁ、いいんですよ

それに、一昨日の夜は構ってくれたじゃないですか」

「…確かにそうだが…、」


私はMajorに腕を回したまま、口を継ぐんだ。

…本当に、大丈夫なのだろうか。

私は思わず、Majorに回した腕に力を込めた。


「実は、とても寂しかったりしないか?」

「…大丈夫ですよ」


Majorは、前に回された私の腕に触れ、一言だけそう返事をした。それが少し気弱な気がして、私は更に心配になる。


「…ちゃんと言ってくれ」

「…、」


Majorは、とうとう黙り込んでしまった。

…やはりこんな気持ちになるなら、

初めから自分もMajorも、満足する程愛を伝え合っていれば良かった。

私は今更後悔し、悲しい気持ちになってしまう。

すると、突然Majorが私の腕の中で身体の向きをこっちに向け、口と口を重ねてきた。


「…僕は大丈夫ですよ、先生」


Majorは私から離れると、また可愛らしい笑みで私にそう言った。

それを見ると少しだけ気が楽になった気がして、同時に安心した。

Majorと私はしばらくの間見つめ合っていたが、

Majorが先に、また私に口と口を重ねてきた。

私はMajorのキスを快く受け入れ、また背に腕を回した。

…そして、勢い余ってそのままゆっくりとMajorを後ろへ倒していった。

そして、私は今更気が付いた気がした。

…一番に愛を求めているのは、

私の方なのではないか、と。

Majorは無理してでも笑顔を作ってくれているのかもしれないが、それでもMajorは我慢してくれているのだ。

私に気を使って、自分の気持ちが大した事がない時は、身を引いてくれているのだ。

…それなのに、私は結局我慢出来ず、我慢する事を覚えられないままMajorに身を委ねている、だなんて、

…情けない、自分が情けなくて、恥じた。

そう思えば思う程、私はMajorと離れたくなくなり、

離れられなくなった。

—————————————————————————

「おやすみなさい」

「あぁ、おやすみ」


軽く言葉を交わすと、私達は布団の中に入った。

…私はまたMajorの方に顔を向けた。

…、Majorは仰向けになって、目を瞑っていた。

…私も、何となく仰向けになり、今から眠れそうになく、瞑れそうにもない目を開けたまま、天井を見つめた。

…、

「本当に愛を求めているのは、私の方」か…。

…本当に、そうなのかもしれない。

一番寂しさを感じているのは、私なのかもしれない。

また自分の情けなさを再確認し、つい軽くため息が出てしまう。

…しかし、今日はもう明日に備えて眠らなければ。

私も、Majorと同じように目を瞑った。

…目を瞑ったからと言って、すぐに眠られる訳ではないのだが。

…、

目を瞑っても尚、私の頭は自分の事とMajorの事で埋まっていた。

…眠りに落ちるまで、きっとこのままなのだろうか。

また考えれば考える程自分に自信が————

…?

私は身体に何か重みを感じ、ゆっくりと目を開けた。

…、

私の胸の上へMajorが跨り、乗っかっていた。

…Majorは何とも言えない表情をしている。


「…どうしたんだ…?」


寝かけている脳のせいで、小さく、息のような声しか出なかった。

…そうだ、明日は朝が早い。

もしMajorがそのつもりならば、しっかりと伝えなければ…。


「…Major、私は明日も朝が早くてだな、

…その、早く眠りにつかなければならないんだ」


Majorはそれを聞くと、私の顔を見つめたまま、優しい笑みを浮かべた。


「ふふ、分かってますよ

…少しだけ、ですよ」


すると、Majorは私に身を委ねるような体勢になり、私の顔にそっと近付いた。

お互いに黙って見つめ合っていると、Majorがゆっくりと口と口を重ねてきた。

…少しだけ、か…。そんな事を言われても、きっと私は、

また、お前と言う存在から抜け出せなくなるのだろう。

そう思いながらも、私はMajorの背に腕を回す。

…お互いにゆっくり口を動かして舌を当てがい、僅かな音を立てた。

…Major、聞きたい。

もしかして、お前は、

…私が今、こう言う気持ちでいる事を分かってやっているのか…?

最近、またお前が分からなくなってきているような気がする。

…いや、自分が、分からなくなっているんだ。

Major、私はどうしたらいいんだ。

どうすれば……

やがてMajorはゆっくりと顔を離し、舌と舌で繋がった唾液が糸を引く。

Majorは私の顔を確認するように見た後、少しだけ驚いた表情を見せた。


「…先生、どうしたんですか

そんな複雑な顔して…」


私はそれを聞いて、初めて自分が若干眉間に力を入れている事に気が付いた。

…が、特に表情を変える事はなかった。


「…、」

「…先生、」


Majorは私の名前を読んだ後、優しく私の背に腕を回した。

私は更に複雑な気持ちになった。

私は、また今、Majorに縋ってしまったのだ。

…違う、違うんだ、Major。

私は、自身の背に腕を回しているMajorの肩を掴み、自分からそっと離れさせた。


「…先生…?」


Majorは心配そうな表情で私に話しかけてくる。

…が、私は、Majorを直視する事が出来なくて斜め横に顔を逸らした。


「…、先生」


Majorが私の頬に両手で触れ、私を正面に向かせる。

私は目の前の、Majorの瞳を見つめた。

次の瞬間、突然と私は強烈な睡魔に襲われ、ゆっくりと目を閉じた。

—————————————————————————

先生は意識を失って、僕に倒れてきた。

…何だか、先生の顔が辛そうに見えたから、

僕が楽にさせてあげた、と言ったところだ。

それに、明日はまた朝早くから学校に行かなければならない。

自分で言っていたのに、自分で長引かせてしまっていたから…。

きっとこのままだと、僕も先生も後悔してしまうだろうと判断し、眠らせるコピー能力をかけた。

僕は先生をそっとベッドに寝かせ、胸まで布団を被せた。

僕もその隣に寝そべり、布団の中に潜り込んだ。

そして、先生の方に身体を向け、また先生の綺麗な寝顔を見つめる。

…やっぱり、今日は一昨日の続きをしなくて良かったんだと思う。

先生は、僕とは正反対にかなり疲れている。

…きっと、先生の方が僕よりも無理をしている。

前から少し気付いていたけど、今日改めて気付いた。

…一昨日の僕を、少しだけ恥じた。

…先生、無理だけはしないで下さい。

辛い時や、苦しい時は、素直に僕を頼って下さい。別に馬鹿にしたりなんかしません。

…僕、先生が心配なんです。

僕の心配ばかりじゃなくて、

自分の心配もして下さいよ。


「…おやすみなさい

また明日も、頑張って下さいね」


僕は先生の頬に近付き、そっとキスをした。

…そして、そっと先生の頬に手を当てる。

とても温かくて、安心する。

…、

僕より先生が堕ちてもらっちゃ困るんだ。

…僕にだって先生を守る権利はある。

そんな事を考えていると、五年前の僕もそんな事を考えていたと言う事を思い出した。

…、

僕の目標は、まだ達成されていないんだ。

まだこれからの事だし、今後もずっとだ。

頑張らなきゃ、

先生も、毎日僕の為に頑張ってくれてるから。


「…、おやすみなさい」


僕は、先生の綺麗な寝顔にまたそう言い、自分も目を閉じた。

—————————————————————————

私は、ぱちっ、と目を開けた。

…待て、今何時だ。

すぐ横に置いてある目覚まし時計を手に取って食い見る。

…、なんだ。まだこんな時間か。

とは言っても、丁度いいぐらいの時間になるが。

私は布団を取って、ベッドから起き上がった。

…そう言えば、Majorが見当たらないな。もう起きていたのだろうか…?



私はシャツから仕事用のスーツに着替えた後、リビングへ向かった。

…机には朝食が————


「わぁっ!!」

「っっ、」


突然、Majorが私の死角から目の前へ大声を上げて飛び出してきた。

私は少しびくっ、として、目を丸くしながらMajorを見つめた。


「…あれぇ?そんなに驚かなかったですか?」


いや、これでも結構驚いた方なのだが…。


「でも、これで目覚めましたよね!

ささ、早くご飯食べて下さい!」


朝からやけに元気なものだ。Majorは食器を取りにキッチンへ小走りで向かっていった。

私はそんなMajorを微笑ましい気で少しの間見つめ、Majorが作った料理が置いてある自分の席に座った。

Majorが横から食器を手元に置いてくれると、私は軽くお礼を言おうとしてMajorの方を向くと、

私が何か言う前に、

Majorは突然私の頬へキスを落とした。

私はつい驚いたのを表情に出してしまう。


「お礼なんていいんですよー、いつもの事じゃないですか」


満足気にニコニコしながらMajorは私にそう言った。

…朝からこんな事されたら、お前から離れたくなくなる————

…いや、これをきっかけに、今日も頑張るとしよう。




「行ってくる」

「はーい、行ってらっしゃい」


Majorが玄関で靴を履いている私に小走りでリビングから駆け寄って来る。

そしていつもと同じように、軽くキスを交わした。

私は家から出て行こうとしたが、


「先生、今日も頑張って下さいね

今日も美味しい晩ご飯作って、待ってますから」


出て行く直前に、Majorに話しかけられ、前のように足を止め、振り返った。


「…あぁ、ありがとう」


私はMajorに軽く笑いかけ、Majorの笑顔を見た後に家を出た。

…駅まで歩いて行きながら、私は考える。

正直私は、昨日までは寂しく感じていたが、また月曜日からの一週間が始まれば学校も楽しくて、気持ちも満たせるだろうと、

Majorに、とても申し訳ない事を無意識に考えてしまっていた。

が、昨日の夜も今日も踏まえて改めて分かった。

家以外の場所がどんなに楽しくて、気持ちを満たしてくれるような人達が沢山いたとしても、

やはり私には、

Majorしかいない、と言う事を。

—————————————————————————

生徒達が楽しく喋りながら給食を食べているのを、私も給食を食べながら、頬杖をついて眺めていた。

そう言えば今更だが、このクラスは男女問わず仲がいいのだな。

私のイメージでは、結構男女で分かれてしまうと思っていたのだが…、隔たりなく関われているようで安心した。

このまま何もない日々が過ぎていってくれるといいのだが。

ふと机に向き直ると、今日届いた自分の机の上に置いてある新聞に、

少し気になる事が書かれた見出しが目に入った。

新聞を手に取り、その記事を読んでみる。


“医者が海に引き摺り込まれる事件が多発”


…一体どういう事なんだ?私は顔をしかめた。

その記事の本文を読んでいってみる。

…どうやら、見出しにも書いてあるが、医者が海岸沿いなど、海の近くを歩いていたりすると、

突然海から伸びてくる手に手や足を掴まれ、そのまま海の中へ引き摺り込まれてしまう事件が多発しているらしい。

それも、全てほぼ同じ場所であった事らしい。

…、場所はすぐそこだ。うちからもそんなに遠くない。

時々医者ではない人間やモンスターもこの事件に巻き込まれる事があるらしいが、皆無事生存して戻ってくるらしい。

…犯人に悪気はない、のか…?

…しかし恐ろしいものだ、一体誰が何の為にこんな事を…?


「先生ー、どしたんすか?」


給食を食べ終わり、食器を返しにくるついでに一人の男子が私に話しかけてきた。

私が見ている新聞を横から覗いてくると、「あー」と言いながら、理解した、とでも言うように頷いた。


「知っているのか?」

「えっと、俺の友達の友達のお父さんが医者らしいんですけど、その人も海に引き摺り込まれたらしいんですよ」


普通に怖いような内容をへらへらしながら淡々と話す彼に少し驚いてしまう。

…そんなに恐怖を感じていないのか…?


「でも、何があったのか聞いても、

海に引き摺り込まれたけど帰ってくる事が出来た、って言う事しか言わなくて、その間に何があったのかは教えてくれなかったらしいんです

まぁそのお父さんの反応からして、何が怖い事があったって言う訳ではないと思うって、友達が言ってましたね

とにかくまだ良く分かってない事なんですけど、危害を加えられた人はまだ一人も出てないらしいです」


そんなニュース、私は初めて聞いた。いつから話題になっているのだろうか…。

…、

私もMajorも、医学に関する職業には関係していない。

…まぁ、自分達には関係のない、事なのだろうか…?

それにしても、本当に理解し難いニュースだな…。

早く解決する事を願いたい。

—————————————————————————

昼食を食べながら、僕はスマホでニュースの記事を読んでいた。

次読む記事をスクロールして選んでいると、

少し、気になるニュースが流れてきた。


“医者が海に引き摺り込まれる事件が多発”


…え、普通に怖い…。

それをタップして、詳しく読んでみる。

…、でも、皆生きて帰って来れてるみたい。一体どういう事件なんだろう…。

すると画面上側に、先生からのメールが届いたと通知が出た。

あれ、先生が帰りのメールを送る以外にSNSを使うなんて珍しいな…。

上に出た通知をタップし、今度は先生からのメールを読み始める。


『最近、一部の人間やモンスターが海に引き摺り込まれる事件が多発しているらしい。

事件に巻き込まれた人達は皆医学に関連している人達だけだから私達は関係のない事かもしれないが、

本当にそうなのかどうかは分からないから、海にはあまり近付くんじゃないぞ。』


先生も、どうやら今このニュースを知ったらしい。

僕は、そう書かれたメールに返信を書き始める。


『僕も今丁度そのニュース見てました😕

怖いニュースですよね、僕もあまり海には近付かないようにします!👍

先生も寄り道で海沿いとか歩かないで下さいね!🥺🥺』


そう書き、返信ボタンを押した。

まぁ、確かに僕も先生も、医学には全く関係していない筈。

だから、もしかしたら僕達が海沿いを歩いていたりしてもその事件に巻き込まれる事はないかもしれない。

…でも、こんなニュース、聞くだけでも鳥肌が立ってしまう。

先生の言った通り、海沿いには近付かないようにしよう。

そんなような事を色々と考えながら、僕は次読むニュースを選び始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る