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航は美里のことが好きだった。
きっかけは『高浜屋』の営業が再開した時。それまで中々声をかけられなかった航が「大丈夫か?」と聞くと、美里は胸を張って「当たり前じゃん」と笑って見せた。
大丈夫なわけがなかった。父親が死んだのだ。誰だって辛い。加えて自分のことはそっちのけで母親を支えて、年頃の女の子が嗜むようなものは一切触れない。
本当は辛いはずなのに、我慢をしてそんな様子を一切見せないその姿に、航は心を惹かれた。同時に、自分が情けなく思えた。美里が大変な思いをしている中、自分はただ日々を過ごしているだけ。そんな自分が嫌で、航は美里を支えられるくらい立派な人間になろうと決めた。
たくさん勉強をして、いい大学に受かって、そこでたくさん学んで、色んな経験をして、立派になった自分で、美里に気持ちを伝える。
その一心で、ここまで過ごしてきたのだ。
航は、美里のことが好きだった。
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