第17話敗将達の挽歌

各地で既に戦線に綻びが出始めていた、夢見ヶ丘生徒イレギュラーハンター達の猛攻は予想を遥かに超えた苛烈なもので戦線を立て直すのは容易ではない

「各地で部隊が次々と敗戦しておるデスナ?」

「この戦争、恐らくわたくし達は敗北するでしょうね」

感慨無い声で多腕の女性エリナが応じる、敗戦濃厚どころか戦争の敗北を確信しているにもかかわらずどちらも悲壮感の欠片さえない

「例え敗れても我々が生きている限りやり直せる、それに元々この戦争は次への布石、わたくし達の本気の死に場所本当の戦場は此処ではありません」

「では拙者達はこの浦安みつりんより退却するでオジャル、夢見ヶ丘生徒イレギュラーハンターの底力もあらかた確認したでオジャルので」

「では殿しんがりはわたくしが」


浦安みつりんの各戦場で敵性生徒イレギュラー達が退却を開始しているようです」

アラクノエロスの元に敵の敗走と撤退中の敵部隊を叩けという指令が舞い込んで来た

「戦争も大詰めね、ならば、私に続きなさい!」

二振りの愛刀、男断つ性転の刃クサナギ誇るべき男の娘の刀アメノムラクモを手に追撃の指示を飛ばす、しかし・・・

「えぇ、良いですね?」

多腕の女性エリナが、追撃せんとしていた蜘蛛姫アラクネの前に立ち塞がっていた


二人の生徒は激しく戦っていた、性転換トラスセクシャル蜘蛛姫アラクネは二振りの愛刀と背部の巨大な八本の鍵爪アラクノクローで絶えず嵐のような連撃を放つが、その全てが尽く回避されている

「流石、良い攻撃ですね?」

(双刀の連撃と背中の鍵爪アラクノクローを織り交ぜた連続攻撃をこうもかわすかぁ)

「何かタネがありそうだけど・・・」

双刀の達人であり、幹部クラスの生徒せんしの中でも屈指の実力者である彼女の連撃はまるで達人二人を相手するようなものとまで形容されている

その上で八本もある背部の鍵爪アラクノクローまで加わればその攻撃方法は変幻自在であり、如何なる強者であっても無傷での回避は非常に難しい、しかしその攻撃の全てを傷一つなくかわすその姿をいぶかしんでいるとエリナは微笑みを浮かべて種明かしをする

「わたくしは瞬間記憶能力ノンストップインプットがあるんですよ、一度見た攻撃は全て記憶して分析し二度と通じませんわ」

これこそがアラクノエロスのあらゆる攻撃を捌き凌ぐ彼女の絶対防御と完璧回避のカラクリである

瞬間記憶能力ノンストップインプットとはほんの一瞬でも【見た】ならばそのたった一瞬で完全に記憶してしまうという特殊な能力である

例えば本をペラペラ捲っているだけで、ほんの一瞬眼に入るだけでその本人が読んでいるつもりがなくとも本の内容を完璧に全て暗記出来てしまう、そういった能力である

それは即ち、彼女が一瞬でも視認すれば、その動きを完璧に記憶して捉える事が可能であるという事なのだ

「一度見た攻撃も技も、その全てを完璧に覚えて、解析し回避する、そして二度と通じない、それがわたくしの戦法です」

「だとしても避けたり出来るのはまた別でしょうが」

正にその通りで一瞬でその攻撃を記憶出来たとてそれを捌くにはそれ相応の身体能力と体捌きが出来る並外れた戦闘技術が必要である

「覚えるだけで実践出来れば誰も苦労なんてしないのよ」

それは即ち彼女が天才なのか、それとも圧倒的な努力家か、はたまたその両方か!

夢学生徒イレギュラーハンターはとても強いですので、努力と備えはどれだけしても足りないのですよ?」

それが彼女の答え、獲物イレギュラー狩人ハンターに立ち向かうには瞬間記憶己の異能を以て努力し果てない鍛練をして尚足りない、侮る事なく鍛練し準備した求道者の姿がそこに有った

「せめて敗将達の挽歌を聞いて頂きましょう!」

敗者から勝者への、圧倒的抵抗である、敗しても尚挑む者の意地が今夢学生徒ハンターに牙を剥く

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