夢見ヶ丘の寮の一室にまるで和室のような部屋がある、本来趣味嗜好の精神エネルギーが力となり活力の源となる生徒（せんし）達の部屋は自らの趣味（ぞくせい）に関係したグッズや品物で埋め尽くされている事が多いのが通例である

しかしその部屋は調度品が非常に少なく質素な印象を受ける

その装いは部屋と言うより道場と呼ぶのが相応しい感じすらあり数少ない調度品の中に達筆な字で【性転換】と書かれた掛軸がある

この部屋の主こそ性転換（トラスセクシャル）の性癖（ぞくせい）を持つ生徒（せんし）リンダことアラクノエロスである

性転換（トラスセクシャル）の蜘蛛姫（アラクネ）の異名を取る彼女は畳が敷き詰められた質素な部屋で部下達の指導をしていた

性癖（ぞくせい）強化の修行はまずは形から、男の娘（ガールズボーイ）や性転換（トラスセクシャル）の性癖（ぞくせい）を持つならば生徒（せんし）にも化粧は必要であると説く彼女の修行は多くの生徒（せんし）達の支持を得、今やこの部屋はそういった趣味嗜好（ぞくせい）を持つ生徒（せんし）達の修練場となっていた

彼女は何よりも戦争は生徒（せんし）の教育が大事と思い積極的に部下の育成に力を注いでいた

かつてサキュバスエロスが悩んでいたように、強者のみを集中して育て上げ末端を蔑ろにした結果が、今の一強百弱という脆い組織構造に繋がってしまったからである

しかし彼女も幹部であり生徒（せんし）でもある、教育だけが仕事ではない

「報告します、土井津地区の攻略が成功しました、我等の部隊はこれを機に敵性地区の制圧を進行せよとのことです」

入って来た生徒（せんし）が大総統からの指令を伝えにやって来た、敵の中央の重要地区である土井津地区を制圧した事により流れはこちら側に大きく有利になった、このまま敵軍を一気に押し込もうというのがこの指令の意図である

本来ならば弟子達の育成に尽力したい、だがしかし彼女は幹部である、である以上はその職務を全うしなくてはならない

「相分かりました、出陣（いざ）、性転換（トラスセクシャル）」

居並ぶ弟子達に号令をかけて、蜘蛛姫（アラクネ）は左右に置かれた二振りの愛刀を手に雄々しく立ち上がった

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