第15話髪無き無毛の大地

浦安みつりん攻略のクサビが打たれ夢学が勢いずく中、無毛の戦乙女ヴァルキリアはモエのいる土井津地区にて攻撃を続けていた

そんな中自身の副官の一体が噂に聞く強部隊【黒鋼機甲師団スティールブラック】の生徒せんしと交戦したというのだ、これは浦安みつりんが追い詰められている事を示唆していた

「うーん敵の増援が一体ってことはないと思うからこれからかな?」

彼女の考えはその通りで、他の生徒せんしも増援にやって来ていた


陸の王者カブトムシ前え!」

現れたるはビートルエロス、天を衝く巨大な一本角と威風堂々とした威厳ある佇まいが彼女が強者であることを暗に示している

コーカサスエロスに続いてこの地に追加戦力として送り込まれた実力者である

「ゼブラエロスはウルフエロスを抑えていてくれ、私とコーカサスエロスで無毛の戦乙女ヴァルキリアを倒す」

「かしこまりました、しかしかの戦乙女、侮りませぬよう」

「わかっておる、万全を期してヤツを倒す」

必勝の策を以て戦乙女ヴァルキリアを地に落とさんとビートルエロスが戦いを挑む、果たしてその結末は・・・


戦況は夢学優勢で進んでいた、元々戦力では反乱軍イレギュラーの方がやや優勢だったが、相次ぐ夢学生徒ハンター達の攻撃で予想以上に戦力を削られていた、その為いつの間にか戦力比は逆転していた

(なんとしてでも此処であの戦乙女ヴァルキリアを止めなくては)

ゼブラエロスは敵の副官ウルフエロスを足止めする為、命懸けの戦いに身を投じていた

その頃ビートルエロスとコーカサスエロスは二手に別れて戦乙女ヴァルキリアの部隊を挟撃していた

突撃して来た部隊をコーカサスエロスの部隊が真っ向から動きを封じ、横合いからゼブラエロスの機動部隊が突撃して敵の副官の部隊を引き剥がし伏兵としてビートルエロスの部隊とモエの部隊でも最強クラスのカメレオンエロスの率いる独立部隊が戦乙女の本隊を挟撃する、正に完璧に作戦が決まった、そのはずだった

(おかしい、どれだけ敵を倒してもまったく敵が減る気配がない)

左右から挟撃して後は磨り潰すだけ、そのはずだったにもかかわらず一向に敵の数が減る様子がない、まるで倒した筈の敵が蘇っているような錯覚さえ覚える

「ようこそ髪無き無毛の地ラグナロクへ」

挟撃されていると云うのに当の本人は余裕さえ感じさせる声で戦乙女ヴァルキリアが嗤う

何故策を完成させた筈の自分達がここまで追い詰められているのか?

何故挟撃された筈の張本人がこうも余裕の表情を見せているのか?

解せない、挟み撃ちを成功させた筈の生徒せんし達が徐々に押されはじめる、未だに敵は圧倒的優勢に立っている

「な、何故だ?こちらの数の方が多かったはず、その上に退路を絶っての挟み撃ち、圧倒的に有利な立場だったはずだ!」

だが周りを見れば自分達だけではなく、敵の退路を絶って後方から襲った部隊も徐々に押され苦戦している

「この髪無き無毛の大地ラグナロクの中では私の軍勢を減らすことなんて出来ないのさ」

無毛の戦乙女ヴァルキリアは得意げに語る

「これぞ髪を失い戦う者達エインヘリアル、敗れた同胞は髪を失い無毛となっても戦い続ける」

これこそ感じていた違和感の正体、気のせいではなかった、錯覚ではなかったのだ

「まさか、本当に敗れた者達が復活していたのか・・・」

「それだけじゃないよ、この髪無き無毛の大地ラグナロクの中には決して死なない不死の戦士、無毛の乙女騎士団ワルキューレがいるからね」

このままでは勝ち目はない、一旦引いて立て直さなくては、この恐るべき能力ちからを同胞達に知らせなくては

そう思い撤退の指令を出そうとした時、眩い閃光が辺り一帯を覆う、その時、策に嵌まったのは自分達だと悟った

これこそ彼女の奥義、髪を無に帰す永久脱毛ギンヌンガガプ、北欧神話にある無の大裂け目が口を開いたようにその場に存在する全ての敵を跡形もなく呑み込み消滅させた

程なくしてゼブラエロスもウルフエロスに討たれ、戦力を大幅に失ったモエの部隊は後退するしかなかった

こうして浦安土井津地区は無毛の戦乙女ヴァルキリアの手によって陥落した

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る