第14話進軍【甲虫近衛師団】

あのハルオの電子迷宮バーチャルラビリンスが突破されたと言う情報は浦安中で大議論を巻き起こした

歴戦の彼女等からしても、あの難攻不落の迷宮ラビリンスが突破されたのは余りに衝撃的であったのだ

だがしかし、そこに新たなパワーバランスを崩す戦力一石が投じられた

その名を甲虫近衛師団、またの名を黒鋼機甲師団スティールブラックである

黒光りする鋼鉄のような外骨格と圧倒的怪力を持って多くの敵を葬って来た無敵の一団である

「遂に我等の出番がやって来たか!」

黒光りする鋼のような外骨格に生えた鋭く尖った三本の長いツノ、がっしりとした体格は五メートルは優にある

彼女こそ黒鋼機甲師団スティールブラックの急先鋒コーカサスエロスである、ジャングルの暴れ者の異名を取るコーカサスオオカブトの特性を持つ強豪だ

夢ヶ丘生徒イレギュラーハンター優勢の戦況を変える為に各地に続々と増援を送り込む中で彼女は無毛の戦乙女ヴァルキリアの攻略中の土井津地区の増援に派遣された


「ようこそ土井津地区へ、私が防衛指揮官のモエです」

そうして後詰めを待たずして一足先にコーカサスエロスはモエの部隊と合流していた

「歓迎感謝する、私が来た以上最早敵はいない」

その表情は強者故の自信に満ちていた

「早速で悪いのですがこの地区に攻め込んで来ている夢学生徒ハンターの迎撃をお任せしてもいいですか?」

「喜んで、今こそ我々の最強の力をご覧にいれましょう」


「我こそは下着趣味アンダーウェアーのゼブラエロス、モエ様の為この命燃え尽きるまで戦おう」

その頃最前線では夢学生徒ハンターによる苛烈な攻勢が続いていた

薔薇魔宮ボーイズラビリンスの陣を抜いた事で生徒せんし達の士気も高まりそれが戦況に大きな影響をもたらしていた

小銃の装備された手甲による波状攻撃と突撃して来る生徒せんし達に手を焼いていると今度は横合いからも新手が現れる

「ヌウ、最早これまで、死場所とは下着と見つけたり」

ゼブラエロスが爆散覚悟の突撃を敢行せんとしていたところに空中から黒い影が降りて来た

「我こそは黒き宝石ブルマを愛する闘士コーカサスエロスである、我がツノを恐れぬ者はかかって来るが良い!」

威勢よく名乗ったコーカサスエロスに攻撃の返礼で返す夢学生徒ハンター達、しかし撃ち出す光弾の全てが頑強な外骨格に弾かれ傷一つつける事が出来ない

そこに部隊の指揮を預かる生徒せんしが前に出る

「私こそはこの部隊を戦乙女ヴァルキリアより預かる孤独趣味ロンリーのウルフエロス、この爪と牙に賭けて貴様を倒す」

その灰色の艶やかな毛並みと鋭い爪と牙に獲物を狙う双貌は正に日本の神獣ニホンオオカミを思わせる

次の瞬間、素早い動きでウルフエロスは自慢の爪による一撃を見舞う、しかしコーカサスエロスの外骨格はそれですらも傷つけられず返すツノの一撃がウルフエロスを襲う、しかし彼女も伊達に部隊長を務めているわけではない、ツノの一撃を噛みつきで何とか防ぐ

ウルフエロスの鋼鉄すらも貫通する牙を以てしてもそのツノは折れず曲がらずダメージを負った感じすらない

(なんと云う硬さ、甲虫の外骨格とは斯くも硬いのか)

自慢の爪と牙が通じず窮地に立たされるウルフエロス、だが彼女の眼は勝利を見据えて鋭く輝いていた

(どれだけ硬い骨格に覆われていようとも自由に動く関節部分は攻撃も通じるはず)

意を決して敵の懐に飛び込むウルフエロス、その姿は正に獲物を狙う捕食者オオカミである

急所を狙うように関節をその鋭い爪が絶ち斬る、切断こそ出来なかったが確かな手応えを感じる

「気づいたか・・・しかし!」

先程切り裂いた傷がみるみる内に再生して行く、しかし自身の攻撃が通じる箇所がある、それは相手が決して無敵等ではないという証拠である

(次に狙うのは喉元か頭部だな)

ならば恐れることはない、それは打倒しうるということだ

次の攻撃の為に飛びかかる準備をしていると本校より撤退命令が通達される

「少し手間取り過ぎたか、この勝負は預ける」

油断なく撤退する部隊を観察しながら、コーカサスエロスも早くも自信と戦える強者の出現に喜んでいた

(フフ、やはり戦いとはこうでなくては)

これは激闘の序章に過ぎない、その思いを両者は強く実感していた

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