第3話双魚宮、薔薇の迷宮

戦争が始まって以降どのように戦うか生徒達は話し合っていた、しかしそれは敵も同じである

厳かに背中に大砲を背負ったメガネを掛けた生徒が進み出る、歩くたびにお腹の脂肪が弛んでいる

彼はこの浦安支部の最前線の指揮を弟に任されているアリクイの特性をその身に宿す生徒ハルオである

「この前のり子君が夢学生ハンターに撃退されたでゴザル、我等もこのまま黙っておるわけにはイカヌ、我はと云う者はオラヌカ?」

出撃を賭けたジェンガー勝負に勝利して意気揚々と出撃した浦安みつりんのゲリラコマンダーが多くの夢学生ハンターを葬り去り無毛の戦乙女ヴァルキュリアと互角に戦ったという報告は既に浦安全土に轟いている

ここで彼女に続いて戦果を上げるべくハルオは多くの生徒達に呼びかける

彼の弟の率いる部隊は昆虫の特性を身に宿す生徒を好んで集めたことで夢学からは【昆虫師団】と呼ばれている

弟のコテツの徹底的な修行と鍛練によって夢学生徒からは昆虫生徒恐るべしとまで囁かれている程だ、但しこれは昆虫生徒全体ではなくあくまでコテツの弟子や部下に限るが・・・

「ハルオ様、夢学生徒ハンター達が攻め込んで参りました」

報告を告げるのはアリ型の生徒である、予想より早く前線を突破した部隊が攻め寄せて来たのだ

「静まるでゴザル、フウム此処まで入り込むとは恐れを知らぬヤツ、我輩が殲滅してくれよう」


此処はハルオの造り出した電子迷宮ヴァーチャルラビリンスたる双魚宮ピスケス、先の勝利に勢いづいた生徒達がこぞって攻め寄せて来たのだ

ハルオは自身の開発した攻性プログラムを操り自身の造り出したこの電子迷宮ヴァーチャルラビリンスで幾多もの夢学生徒ハンター達を葬り去って来たのだ

通常薔薇魔宮ボーイズラビリンスの陣、至るところにプログラミングされた脅威の薔薇BL生徒ハンター達を次々と襲う

「ぐああああぁぁぁ」

その魔の薔薇に耐えきれずまた一人、そしてまた一人と生徒ハンター達が爆散して行く

「思春期の生徒はかわゆいモノに全力でアリマスからなー、この魔の迷宮はツラかろう?ムフフフ」

これこそが彼の恐るべき必勝法、可愛いモノ、美しい少女に夢中の生徒達を次々に薔薇ボーイズラブで攻め立て自身は阿鼻叫喚の迷宮を下に高みの見物を決め込む、己が手を下さずとも薔薇ボーイズラブの攻性プログラムだけで生徒ハンター達は次々と撃破されて行く

これこそが電子迷宮の罠と呼ばれる彼の必勝戦略である

こうして攻め込んで来た夢学生徒ハンター達の軍勢は双魚宮ピスケス薔薇魔宮ボーイズラビリンスの陣にて全滅した


「報告します、進撃した夢学生徒ハンター達が全滅しました」

「恐るべし薔薇魔宮ボーイズラブの陣、よもやこれ程とは・・・」

報告を受けた指揮官の生徒は戦慄していた、当然である学生、特に高校生は現実リアル幻想アニメ問わず可愛い女の子に趣味嗜好を持つ者である、それを地獄のようなオッサン同士の薔薇ボーイズラブ迷宮ラビリンスによって塗り潰される恐怖はいかほどの事か

例え百戦錬磨の強者つわものであろうともこの迷宮ラビリンスに足を踏み込んで無事で居られる者はいないだろう

部隊指揮官が頭を悩ませているその時、轟音と共に次々と本営に敵の攻撃が飛んで来た

「何事か!」

「どこからか敵の攻撃が」

次の瞬間、本営全体に薔薇ボーイズラブの花園が狂い咲いた

「こ、これは・・・ぐああぁぁぁ」

「ば、薔薇の花園があぁぁぁ」

生徒ハンター達の本営は瞬く間に薔薇ボーイズラブの花園に呑み込まれて消え失せた


「フ、くちほどにもないでオジャル」

そこには背中の大砲を敵陣に向けたハルオがいた、彼自身は薔薇ボーイズラブ趣味ぞくせいではないのだが、夢学生徒ハンター達の苦手とする趣味ぞくせいをその背部から伸びる大筒に込めて敵に対する攻撃手段としている

彼の放つ【魔技】赤魔薔薇ロイヤルデモンローズは赤い薔薇から噴出する薔薇ボーイズラブの幻影を以て相手の精神に尋常為らざるダメージを与え撃破する、精神の生命体である夢見ヶ丘生徒にとって天敵とも呼べる能力ちからである

「これでしばらくはやってはこないでゴザロウ」

壊滅した敵陣に背を向け自軍の基地へときびすを返す

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