終わらない勝負編

第56話 勝手に決めるな

 ナオキのすこし大きな家に到着した車。

「お疲れさまでした」

 ハジメが言った。ここで解散にしようという魂胆こんたんだ。

 しかし、そうはいかない。

「まずは降りるか」

「ええ。そうね」

「降りましょう!」

 ナオキの提案に、マツと死神しにがみちゃんが同意した。

 まずは、さんにんが車から降りる。

 ハジメは、疲れ切った表情で白い自動車じどうしゃから降りた。外は暑い。早く冷房の効いた部屋で涼まないと危険だ。

 全員、すでにうっすらと汗をかいていた。

「これからどうしますか? ハジメさん」

「なんで、ぼくに聞くんだ」

 当然の質問だった。死神しにがみちゃんはハジメを重視しすぎる傾向にある。

勝負しょうぶといきましょう。青井あおいユイ!」

「おっ。いいですね」

 マツが死神しにがみちゃんを指さす。ナオキが食いついた。人を指さすのは、よいこのみんなはやめましょう。

 戦いを見て熱くなったわけではない。ふたりは元々こうなのだ。

「じゃあ、今日はナオキさんの家で――」

「何言ってるんですか。今日の主役はハジメさんじゃないですか!」

「えっ」

 ハジメは、もう自分が武闘大会ぶとうたいかいで優勝したことを忘れているようだった。

「それじゃ、行きましょうか」

「そうですね」

 さんにんがハジメの家の方角へと歩いていく。

「勝手に決めるなー!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る