第49話 あふれる殺気

 第四試合だいよんしあい

 ようやくハジメの出番。宝田たからだハジメ対田辺たいたなべホウサク。

 その前に、グローブとプロテクターがつけられる。

「つけないとダメなんですか?」

 ハジメはとんでもないことを言い出した。

 ホウサクは、戦々恐々としている。圧倒的な自信があり、素手で惨劇を引き起こそうとしているのではないかと思っていた。震える。

 係の人は慌てていた。

「ダメですよ。つけてください」

「グローブだけっていうのは?」

「ダメです!」

 仕方がないので、グローブとプロテクターをつけるハジメ。というよりは、係の人につけてもらっている。

 ホウサクは、ほっとしたような表情ではない。まだ震えていた。


「始まりますよ!」

「落ち着きなさい。青井あおいユイ」

「そうです。のんびりと応援しましょう」

「そんなことできませんよ! 師匠ししょう! がんばって!」

 客席からの声は、ハジメに届いた。


「では、始めましょうか」

「お、おう」

 ホウサクはビビっていた。底知れぬ、ハジメという怪物に。

 そのとき、聞こえてくる声が。

師匠ししょう! がんばって!」

 ハジメから殺気さっきがあふれた。表情も変わっている。

「お前はーっ!」

 ホウサクは、客席に向けられた殺気さきを自分へのものと勘違いしていた。

 頭の中で駆け巡る走馬灯。大柄な男は、膝から崩れ落ちる。

 戦意喪失したホウサク。降参こうさんを選択した。

 その瞬間、ハジメから発せられた殺気さっきが消えた。

「え?」


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