第43話 選手です

 駐車場ちゅうしゃじょうに止まる車。

 意外に広い。そして、見える会場も大きい。屋根つきの白いドームのように見える。

 ナオキとハジメ、死神しにがみちゃんとマツが降りた。

 ナオキは、ちゃんと安全運転あんぜんうんてんをしていた。メガネの位置を直す。

「本当に、いいんだな?」

「はい」

 ハジメは、いつもと変わらない調子で答えた。普段着で。

「なら何も言わない。行ってこい」

 ナオキのあとに、ふたりも言葉をかける。

頑張がんばってください!」

「無理はしないでよ」

 心からの言葉だった。死神しにがみちゃんは、小さな身体からだの前でこぶしを握りしめている。マツは、片手を腰に当てていた。ハジメは、にやりと笑って背を向けた。

 みんなと別れ、会場へと向かうハジメ。足取りは軽い。羽が生えたかのようだ。浮かれていることを自覚したようで、平常心に戻った。足音が静かになる。

選手せんしゅです」

「えっ」

 受付うけつけの人に驚かれた。地味な服の上に筋肉量もさほどないので、当然の結果である。名前とIDを告げ、控室ひかえしつに向かう。

 会場が大きいため、通路も長い。しばらく歩いた。その間、ハジメは誰かにぶつかりそうになってかわした。足音が静かなために、相手に気づかれなかったからだ。

 控室ひかえしつも大きい。開けられるドア。

 個室ではなかった。ほかの参加者と一緒に待つことになった。

 そして、鼻で笑われる結果になる。

「お前も参加者か? ふっ」


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