第42話 武闘大会当日

 ついに、その日がやってきた。

 土曜日。武闘大会当日ぶとうたいかいとうじつ

 ハジメは、普段どおりに起きた。ふつうに朝食を食べ、支度したくしている。

 集まったのは、ハジメの家ではなかった。ナオキの家。団地にしては大きい家だ。

「ナオキさんの家、大きいですね」

 ハジメが言ったのはお世辞せじではない。本心。

「団地にしては、な」

「そうなんですか? すごいですね」

青井あおいユイ。あなたはどうして。いえ、なんでもないわ」

 中には入らず、ナオキ所有の自動車じどうしゃに乗り込むよにん。

 運転席にナオキ。助手席に死神しにがみちゃんを乗せようとして、ハジメにゆずられた。ナオキの表情が一瞬変わる。後部座席には死神しにがみちゃんとマツが乗り込んだ。

「車は割と普通ですね」

「普通って言うな」

 軽ではなく、普通自動車ふつうじどうしゃだった。色は白い。ハジメには、どれも同じように見えるので違いは分からない。

「へぇー」

「こら。シートベルトはちゃんとつけなさい」

 マツはまるで死神しにがみちゃんの保護者のように、てきぱき指導している。おとなしく従う少女。

 ナオキの自動車で会場に向かう。まずは、ゆっくりと団地から出た。

安全運転あんぜんうんてんでお願いします」

「言われなくても」

「ドライブですね。はじめてです」

「そういうことは、言わなくていいのよ」

 マツは、死神しにがみちゃんの発言にヒヤヒヤしている様子だ。


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