第25話 腕組み

 ハジメの部屋は、相変わらず物がすくない。

 死神しにがみちゃんとマツは、ベッドに座らなかった。TVの近くに行って、並んでいるゲームソフトをながめていた。

「これにしましょう」

 死神しにがみちゃんが示したソフトは、対戦ができない一人用のものだ。すぐにハジメが口を開く。

「それ、一人用だからなあ。こっちにしないか?」

 選ぶ必要はなかった。おいしい料理を食べて気分が高揚こうようしているのかもしれない。ハジメはいつになくノリノリである。

「いいわね。それにするわ」

「ちょっと、おマツ。わたしのセリフ、取らないでよ」

「はいはい」

「“はい”は一回ですよ!」

 ハジメの選んだソフトは、対戦アクションゲーム。ダメージを与えて相手を画面外に吹っ飛ばすというものだ。

「ルールはどうする?」

 なんと、このソフトは細かくルールを決めることができる。コンピュータープレイヤーを入れての四人対戦も可能。

 結局、残機がみっつあり、すべてなくなったほうが負けとなるルールに決まった。

 一対一だ。

「いきますよ!」

「望むところだわ!」

 試合開始しあいかいし

「意外に難しいですね」

「アタシだって初めてなんだから、条件は同じよ」

 一進一退いっしんいったいの攻防がつづく。ハジメは椅子に座って腕組みをしていた。

 吹っ飛ばされる死神しにがみちゃん。ひとつミスになった。

「やった!」

「スキあり!」

 すぐに、死神しにがみちゃんの反撃。復帰してきてすぐに攻撃を当て、マツを吹っ飛ばした。

 そのあとも、飛ばし飛ばされおおさわぎ。

「ここです!」

「甘いわ!」

「なかなか上達してきたじゃないか」

 久しぶりにハジメがしゃべった。ふたりの成長に感動しているようだ。

「しまった!」

のがしませんよ!」

 最後は、マツが大きく吹っ飛ばされた。撃墜げきついエフェクトが出る。死神しにがみちゃんの勝利だ。


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