第21話 人類の敵

 謎はすべて解けたわけではない。

「なんで、殺気さっき会得えとくしないといけないんだ?」

「そ、それは……」

 死神しにがみちゃんが口ごもった。珍しい。いったいどんな理由があるのか。ハジメにはよしもない。

「言えないのは、やましいことがあるからよ。ね? 教えないでよね」

 マツは生き生きしていた。

「詳しく言えないというか、言ってはいけないことになってるんです」

「なっている?」

「あ。いえ」

 またも口ごもる死神しにがみちゃん。すこしうつむいてしまった。ツインテールが力なくたれさがる。

「じれったいわね。アタシが教えてもいいのよ」

 マツは、理由を知っているらしい。それでも言わない理由とは何か。ハジメにはわからなかった。ただ、言えることはひとつだけ。

「まあいい。話せるようになったら話してくれ」


 マツが手を上げた。

「ほかのことについて相談したいのだけど」

「うん」

「えっ。そんな簡単に聞いちゃうんですか?」

 自分のときとは態度が違う。そう思った死神しにがみちゃんは、困り眉でほおふくらませている。

「もし、人類の敵が現れたら、どうする?」

 壮大な話に、ハジメの思考が一瞬止まった。そして、ふたたび動き出す。

「どうもしない。できることしかできないじゃないか」

「それもそうね。ありがと」

 正しい答えだったのかはわからない。しかし、いまはこれしかない。ハジメは、表情を変えなかった。

 そして、昼がやってくる。


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