第18話 水と油

修行しゅぎょうをつけてください。師匠ししょう!」

「断る」

「そんなこと言わないで、頼みますよー」

 死神しにがみちゃんは必死だ。ハジメの家の門のあたりで、三人が立ち話をしている。

「ダメよ。ハジメ。死神しにがみの言うことは聞かないで!」

 マツも、なぜか必死だ。

 二人の少女は、さながら一人の男を取り合ってケンカしているように見えた。

 ハジメは、静かに過ごしたい。

近所迷惑きんじょめいわくになるから、大声は出さないでくれよ」

「はい」

「わかったわ」

 返事が早い二人。とはいえ、言葉の意味を理解しているのかどうかは疑問が残る。ハジメは、二人のことを信用していなかった。


「とりあえず、落ち着いてくれ」

 鼻息の荒い死神しにがみちゃんと、マツ。どうにもなだめる方法が思いつかない。ハジメにとって、この状況はじつによくない。

 まるで、水と油のように二人は反発していた。

「どちらが正しいか、勝負です!」

「望むところよ」

 死神しにがみちゃんとマツが、一触即発いっしょくそくはつ雰囲気ふんいきかもしている。

 それは、男の望むところではなかった。

 しかし、金がない。どこかへ出かける選択肢せんたくしは、選ぶことができない。

「待て。こんなところで勝負するな。家に入ろう」

「わかりました!」

「仕方ないわね」

 二人に了承され、三人はハジメの家に入った。


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