第17話 休日ふたたび

 土曜日。すがすがしい朝。

 先週あれだけ恐れて帰っていったから、今日は静かに過ごせるだろう。ハジメは、たかをくくっていた。

 朝食のあとで歯を磨いたハジメは、門を開けるために一軒家の外へ出た。

「お仕事、お疲れさまでした」

「お、おつかれさまでした。って、なんでいるんだよ」

 そこには、死神しにがみちゃんがいた。の光が反射して、光る髪飾り。一瞬門を開けることをためらったハジメ。だが、仕方なく門を開いた。

「いいじゃないですか。仕事場に行ってないんですから。休日しか来れないじゃないですか」

「確かに」

 ハジメは納得してしまった。しかし、すぐに思い悩んでいるような表情になる。次に何を言うべきか迷っているようで、口は開かない。

「というわけで、今日は何をします?」

「というわけで、じゃない。休みは休ませてくれよ」

 気乗りがしないハジメ。げんなりした表情を隠そうとしない。そこに、さらなる来客が現れた。

「おはよう。ハジメ」

「おはようございます。って、なれなれしいな」

 マツまでやってきた。すらりとしたやせ型の女性は、やけにフレンドリーだ。

「そうですよ。師匠ししょうって呼ばないと」

「呼ぶなよ」

 ハジメから殺気さっきれそうになる。死神しにがみちゃんがうれしそうな顔になるのを見て、ハジメは気持ちをおさえた。

 殺気さっきの出しかたをまなびたい死神しにがみちゃんにとって、ピンチとチャンスは紙一重かみひとえ。いつも綱渡つなわたりをしている気分だった。

「名字で呼ばれるほうが好み? それは職場だけでよくない?」

 マツの言葉に、ハジメの顔色が変わった。

「まさか、職場に来たのか?」

「まさか。一般論いっぱんろんだわ」

 マツは、あっけらかんとしている。門の付近で話す三人。それを、遠巻きに団地の人が見ていた。

 死神しにがみちゃんは、なぜか不機嫌そうな顔をしていた。


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