第6話 ビデオゲーム

 ハジメの部屋。

 散らかってはいない。逆に、物がすくない。あまり生活感が感じられなかった。

 歯磨きを済ませた二人は、TVの前に並んでいた。当然、死神しにがみちゃんの歯ブラシは自分で持ってきていなかったので、ハジメが新たに開封したものを使った。

「ほら。どれにする?」

「わあ。いろんなビデオゲームがありますね」

「ん? ああ。そうだな」

 テレビゲームと呼ばないことに、すこし驚いたハジメ。日本では、ほとんどの人が同じ呼びかたをする。自称死神じしょうしにがみちゃんは外国で暮らしていたのかもしれない。常識が通じないのはそのせいか。と、思ったようだ。

「じゃあ、これにしましょう」

「お。協力プレイか。いいんじゃないか?」

 ハジメと死神しにがみちゃんは、ビデオゲームを始めた。共闘だ。

 操作はコントローラーでおこなう。十字ボタンとアナログスティックが左側に、各種ボタンが右側についている。そのほかにも、主に視点操作用のアナログスティックが右側にあり、人差し指をのばした位置には別のボタンがある。素人しろうとには扱いにくい。

 座る場所は、イスひとつしかない。ベッド以外には。ハジメがイスに座ったことで、死神しにがみちゃんはベッドに座らざるをえない。

「む、むずかしい」

「まあ、最初はこんなもんだ」

 ハジメは冷静だった。フォローをしつつ、敵を倒していく。


 ボスを倒したハジメ。

「こんなものかな」

「ひどい」

 死神しにがみちゃんは怒っているようだ。これまでに見せたことのない表情。眉間みけんにはシワがよっていた。

「えっ?」

「わたしは! ガッカリですよ!」

「あ。悪い。自分で倒したかったよな。じゃぁもう一回――」

「そうじゃなくて!」

 ボスを自分で倒したかった。そう思ったハジメ。だが、違うらしい。一瞬でいろいろなことを考えつつも、すぐに口から声が出た。

「ん?」

「さっきから全然、殺気さっきが出てないじゃないですか!」

「だから、ぼくは殺気さっきなんて出してない」

 ハジメは、自分が殺気さっきを出している自覚がなかった。

 死神しにがみちゃんの表情が変わった。眉を下げ、ほおがみるみるふくらんでいく。

師匠ししょうのイケズ」


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